高1地学 授業の要旨 01

2000.11.18実施


 話の要点は、ピンホールで太陽の像をつくり、ピンホールと像までの距 離を測り、太陽の像の幅を測って、三角形の相似の関係から、太陽までの 距離を与えると太陽の直径が求められる、というもの。  ほとんど準備が要らず、いかにいいかげんな測定でも、そこそこの値が 出ることがわかりました。反省点も多かったのですが。

 まず、前回の授業で太陽の大きさを測る方法を考案してきなさい、と言 ったので、誰か考えていないかと思い、尋ねるが反応なし。
 そこで、まず太陽放射が地球の大気、海洋の動きを作る原動力であり、 陸上の生態系も光合成による有機物生産や、酸素の放出に依存していると いう話をして、その大元である太陽を調べよう、と。

 原理をわかってもらうために、黒板に「光は直進する」と1行板書。念 のため、光の性質について、中学校までに生徒たちが学んだ内容を確認。
 それから、建物や樹木の影が地面に映ると、なぜ輪郭がぼやけるのか、 と、黒板に図に描いて、生徒に質問するが、なかなか答えられない。
 レンズで光を集めるときに、実はなかなか1点に光が集まらない話もす る。これは、生徒たちも経験があるようだった。

  • 空気(大気)の屈折
  • 太陽の大気でぼかされる
  • 太陽が膨張・収縮している
  • 重力レンズ

     むむむ。突飛な答え大歓迎なので、なかなかグレートなアイデアを出し てくれる。全部、そう思った理由を聞いてみる。「太陽が大きさを持って いるから」と答えた生徒がいたので、問い返したら、惜しいところで混乱 してしまった。5分ほどで、太陽の右と左から来る光の角度が違うから、 と答える生徒がいて、問い返してもわかっているようなので一安心。

     そこで、出席簿を建物の輪郭に見立て、僕の頭を太陽に見立てて、角度 によって太陽の一部が隠され、暗くなることがぼやける原因であることを 納得してもらう。要するに、日の出ですな。その図を板書。

     以上を前置きにして、ピンホールと像までの距離、像の幅で作った三角 形が、地球−太陽間の距離と太陽直径の三角形と相似であることを、黒板 に略図を作って確認。相似比を、像までの距離L、像の幅dとして、

     d/L=(太陽の直径)/太陽−地球間の距離

     であることを確認。ここで、残念ながら太陽−地球間の距離は図表から 1天文単位の数値を与えてしまう。

     では、dとLを実際に測定しましょう、といって、B5の紙2枚と、方 眼紙1枚を渡して、運動場に出る。

     最初は僕が実演。紙にボールペンで2ミリほどの穴をあけ、太陽に向け た影に、穴を通った太陽の像が写っているのを確認。生徒たち、ほほうと 感心(いままで信用していなかったな…)次に、生徒2人に協力してもら って、dとLを実測。ここで失敗は巻尺を確保しておかなかったこと。 45cmの定規でちょうど3回分ということで、L=135(cm)。太陽の像は、僕 の手が静止しないので測定に苦労していたが、方眼紙を使ってd=1.2(cm)。

     以下、生徒が3人ずつ組になって、dとLの値を求めるべく、測定。ピ ンホールは固定して、投影面を動かした方がいいですね。生徒が苦労して いて、大いに反省。

     教室に帰って、生徒の求めた結果を板書。最初の例で太陽直径を求めて、 実際の値を図表で確認して、値のずれは数%であることを確認。生徒には、 グラフをつくってデータをプロットし、より正しい値に近づくか確認して、 考察をつけてレポートにすべし、と言うところで時間。

     そういうわけで、生徒の感想はまだ集めていませんが、「太陽までの距 離も自分たちで測ろうぜ」という声がありました。頼もしい。僕はケプラ ーの法則が使えるのではないかと説明しましたが、せっかくですから自分 で測定方法を考えてもらいましょう。  誤差を減らし、精密な値を得るにはどうしたらいいか、ということも、 今後工夫してもらう予定です。

     僕の感想。いいかげんでもけっこういい値が出るものだな、ということ と、やはり巻尺など、最低限の準備は必要で、その点を反省。ただ、非常 に原始的な手法でデータが得られるという点で、刺激にはなったと思う。

     以前この【理科の部屋】で、中村 敏弘さんに、光の性質のことでずい ぶんやりとりをしてもらいましたが、今回、生徒たちが光の性質について、 影の輪郭がぼやけることの説明に端的に現れているように、学校で学んだ はずのことが、日常の現象に当てはめて解釈できていないことを再確認し て、意外な気持ちになりました。

     測定データは、とりあえず集計したもので以下のようなところです。最 小二乗法で直線を引くと、かなりいい値が出るのは、偶然とはいえ面白い。

     L(mm) d(mm)
     1350  12
     880   8
     875   10
     460   5
     190   1.5
     110   0.7

     ・測定結果


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