アエンデ隕石


 …太陽系と地球の起源を探る

 アエンデ隕石の拡大写真。

 白いゴミのような部分は、CAI(Ca-Al rich Inclusion)と呼ばれる、カルシウムとアルミニウムの多い物質。 太陽系が超新星爆発のガスなどが集まってできはじめた、最初の高温の段階でガスから凝縮したちり。 これが、45.66億年前に固まった、太陽系で最も古い物質であることがわかった。

 地の黒い部分には、水や、アミノ酸などの有機物が含まれている。コンドリュールと呼ばれる、丸っこい鉱物の粒もある。 これは真空中に飛び散ったマグマの水滴のようなものと考えられている。

 アエンデ隕石は、CAIの他、太陽系外物質の発見や、アミノ酸の検出により生命の起源の問題にまで謎を投げかけた、1969年落下の有名な隕石。
 写真の横幅約2cm。

 Allende隕石は、1969年2月8日、現地時間の午前1時に、メキシコのAllende近郊に落下した隕石です。落下の際には周囲が明るくなるほどの大火球が目撃され、 爆発音で村人が目を覚ましたといいます。全部で2トン以上の隕石がバラバラになって落下し、その範囲は150平方キロメートル以上に及びました。

 隕石には様々な種類がありますが、そのほとんどは小惑星の破片です。その小惑星の中に、太陽系のできはじめの頃から変わらないままの、 化石のような小惑星があり、小惑星同士の衝突によってそこから飛びだした破片が、アエンデ隕石となって地球に落ちてきたものと考えられます。

アエンデ隕石の特徴

1)太陽系で一番古い物質(CAI)を含んでいる …45.66億年前

 このころ、地球は影もかたちもなく、太陽がやっと輝きだした頃で、将来地球になるべき物質は、 我々の人間の材料も含めて、太陽のまわりを回るガスとちりの円盤をつくっていた。

2)地球の材料である …化学組成がそっくり

 この隕石を大量に集めて融かすと、もうひとつ地球ができる。微惑星の衝突で地球ができたとき、地球に集まり損ねた微惑星からきたものと思われる。

3)太陽系以前の、超新星爆発の痕跡が残っている

 1000分の5ミリほどの非常に細かい粒として、超新星爆発の際に吹き飛んだチリが混じっていることがわかった。

4)生命の星・地球の秘密が隠されている

 重量で5%程度の水が含まれているほか、アミノ酸などの有機物も検出されている。

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 アエンデ隕石は、隕石の中でも炭素質コンドライトといわれるグループに属する、石質隕石です。

 隕石には大きく分けて3つの種類があります。金属鉄を主としてニッケルや硫化鉄などを含む鉄隕石(=隕鉄、原始惑星の核を構成)と、 かんらん石や輝石といった鉱物を主成分とする石質隕石(原始惑星のマントル〜地殻を構成)、およびその中間の石鉄隕石です。
 石質隕石の中で、コンドリュールという丸い粒を持つものをコンドライトといいます。
 このアエンデ隕石は石質隕石に属し、コンドライトに分類されます。さらに、コンドライトの中でも炭素や水といった生命に関わる物質を豊富に含む、 炭素質コンドライトです。

 隕石の中に数ミリ以下の丸い鉱物の球(コンドリュール)を含む、コンドライトの特徴は、 原始惑星上での衝突などで加熱され、融けて飛び散った液滴が冷えて固まり、 CAIなどと一緒にされて、微惑星表面付近で固まったことを示していると考えられます。

 この隕石を観察すると、表面には大気圏突入時の摩擦熱でできた、溶融皮殻と呼ばれる黒いなめらかな面が残っています。 内部を見ると、暗い色の球粒(コンドリュール)や白く不定形のCAI、それらの間を埋める灰色の地の部分など、 不均質な構造がわかります。原始太陽系星雲から凝縮したさまざまな物質が、そのまま保存されていると考えられています。

 原始太陽系星雲はいったん集積の過程で加熱され、高温のためガスになり、その後だんだん温度が低下して、 さまざまな鉱物や鉄が塵として析出したと考えられています。その際に、 最初に析出したであろう高温成分に相当するのが、CAIと呼ばれる白色不定形の塵のような部分です。 アエンデ隕石を特徴づけるのはこのCAIであり、45.66億年前の太陽系の中でできた最も古い物質です。

 アエンデ隕石の化学組成は、望遠鏡で調べた太陽大気の化学組成と共通であることが知られています。 地球をはじめ、惑星の岩石は、惑星ができた後に大きく化学組成が変化しまったのに対し、 太陽系のもともとの化学組成を保持しているという点で貴重です。

 また、太陽系ができる前の、超新星爆発の痕跡がこの隕石から検出されています。 隕石を酸で溶かしたところ、炭化珪素(SiC)の粒子が残り、それが超新星爆発の時にできたものであることが明らかになりました。 これは、日本人の女性研究者(天利幸子)の業績です。


地球史

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