大陸地殻の消費率と平均年齢


 大陸地殻の体積がおよそ50億立方キロメートルとして、tectonic erosionで大陸地殻を全部削り取るのに、1km3/year以下という消費率では、 地球史以上の時間がかかるということになります。
 つまり、大陸地殻の平均年代が約15-20億年という推定に対し、この値はそこそこオーダーが合っていることがわかります。

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 ここで述べているのは、例えば沈み込みによって持ち去られる大陸地殻物質が 10km3/yearを越えるような場合、大陸地殻全体の体積を約5億年で運び去ってしまう、 ということになります。その分、新しい大陸地殻を生産しないといけません。 地球史全体では、平均10回くらい大陸地殻が更新されたことになります。
 そうすると、大陸地殻の平均年齢は15-20億年ということにはならず、 もっと新しい年代になるだろうと考えられます。

 ですから、1km3/yearからそれ以下という消費率は、大陸地殻の平均年齢をあまり引き下げないという意味で、 「そこそこオーダーが合っている」ということになるわけです。

 ここでは、どのくらいの時間で大陸ひとつ分の大陸地殻物質を消費できるか、 最速の条件を試算しています。1000万年や1億年のオーダーというのは、 全地球で起きている侵食や沈み込みによって起きる大陸地殻物質の消費を、 ひとつの小さな大陸で集中的に起こさせた場合を仮定していますから、 実際にはもっと長い時間スケールが必要です。
 現実の地球に適用する場合には、消費率ももっと低い値で考えるべきでしょう。

 つまり、ひとたび作られた大陸地殻は、分裂や集合合体を繰り返すことで、 複雑な内部構造を持つようになったり、再融解して上方に貫入したり、 侵食されて大陸地殻物質が側方に移動し付加体を形成するなど、 周辺部でつくりかえられることはあっても、 マントルに持ち込まれて消滅してしまう量はそれほど多くない、 ということなのだと思います。

 大陸地殻の平均年代(年齢)と、大陸地殻の消費率の関係は、大陸地殻の生産率など、 いくつかの仮定を置けばグラフ化できます。
 どのような場で大陸地殻が消費されるか、つまり古い地殻が侵食されやすいか、 新しい地殻が削られやすいか、という問題が多少効いてきますが、 とりあえずランダムに削られると仮定すればいいと思います。


 以下は計算の一例です。

 初期値として、40億年前に現在と同じ量の大陸地殻が存在したとして、それを新しい地殻が置き換えていったとします。 マントル内へのリサイクル率と、新たな大陸地殻の生産率が常に等しく、大陸地殻の量は地球史を通じて一定であったと仮定します。 (現実的ではありませんが、とりあえずのモデル計算ですので。)

 そうすると、大陸地殻全体の平均年代と、大陸地殻消費率(更新率)との関係が表されます。

 片対数プロット

 実際には、大陸地殻の量の初期値は不確定であり、地球史を通じた生産率・消費率は一定ではなく、量も変化すると考えられるので、 かなり難しい問題になります。
 大陸地殻の全体量が地球史を通じて増加傾向にあるのであれば、消費率はこの仮定よりもかなり低い値になります。


 2000.7.29 萩谷 宏

石からわかること

地球史

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