古生代:生物の陸上への進出


a)陸上植物の発展

 光合成生物が水と二酸化炭素から有機物を合成し、酸素を放出することで、地球大気中の酸素は徐々に増加していった。陸上は太陽からの紫外線が直接降りそそぐために、生命にとってはきびしい環境であった。しかし、大気中の酸素が現在の1/10程度まで増加すると、大気中の酸素からオゾン層が形成され、そのオゾンと酸素によって、生命に有害な210nm〜290nmの波長の紫外線が吸収されるようになる。約5億年前の古生代カンブリア紀までに、オゾン層による紫外線のしゃ断が実現し、生物は陸上に本格的に進出する足がかりをえた。
 陸上への植物の進出は、胞子による証拠からは約5億年前にさかのぼる。4億2000万年前には、維管束をもつ植物の化石が見いだされ、およそ4億年前には最初のシダ植物の森林が形成された。陸上生活への適応のために、当時のシダ植物は維管束により水を上部へ輸送し、また高い身体を支える丈夫な組織をもっていた。胞子による生殖には水が必要であるため、初期のシダ植物は水辺の湿地帯で繁殖していたと推定される。
 植物の上陸と森林形成は、土壌をつくり消費者、分解者を養うことで、陸上の生態系と物質循環の効率的なシステムを生みだした。また、植物の遺体が水の中で分解されずに堆積し、地層中に保存されることで、化石燃料である石炭が形成された。約3億年前(石炭紀後期)には大規模なシダ植物の森林が広がり、世界の主要な炭田が形成されるとともに、大気中の酸素濃度も現在の2倍近くに達したと推定されている。

注)胞子植物の上陸以前に、地衣類やラン細菌、緑藻などが陸上で生活していたことを示唆する証拠が見つかっている。

b)脊椎動物の発展

 およそ5億5000万年前に、リン酸カルシウムなどでできた固い殻をもつ動物が出現した。殻を持つことは、生物に不可欠なカルシウムやリンの貯蔵に役立つと同時に、防御や攻撃に役立つ身体のつくりを進化させる役割を果たした。節足動物の三葉虫をはじめとする、殻を持つ動物の出現は、化石として残る情報の量を飛躍的に増大させ、化石生物の種数もこの時代から急激に増加した。そのため、これ以降の時代について、地質時代を化石生物によって細かく区分することができる。
 身体の外側に固い組織である外骨格をもつ生物が発展する一方、身体の中心に棒状のせきさくを持つ動物がいた。そのような動物の中から、5億3000万年前にはせきつい動物である原始的な魚類が出現した。
 魚類は種類を増やしながら各地に広がっていき、約4億年前には、淡水環境にも進出した。この頃までにシダ植物の森林が形成され、酸素濃度が上昇し、生活の場がそろったことで、せきつい動物の上陸が可能となった。淡水環境に適応し、呼吸のための肺をもち、ヒレに骨格を持つ魚類の中から、陸上生活に適応した最初の両生類が進化したと考えられている。最古の両生類の化石は、約3億7000万年前の地層から発見されている。

 陸上に進出した両生類は、シダ植物の森林の中で発展し種類を増やした。約3億年前の石炭紀後期には、広がっていたシダ植物の森林の中で、両生類の中から初期の爬虫類が進化した。続くペルム紀には、より乾燥した条件に適応した体制を持つ爬虫類が種数を増やし、大型両生類の一部とともに陸上で繁栄した。ペルム紀末には、海の生物を中心に大量絶滅が起きたが、陸上の両生類、及び、爬虫類は、続く中生代三畳紀まで繁栄を継続した。

 2001.1.22 H.Hagiya


地球史

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