氷期−間氷期サイクルの原因


第四紀の氷期−間氷期サイクルの原因

 氷期と間氷期がそれぞれどのようにして始まるのか、また終わるのか、 その繰り返しは完全に解明されたわけではありません。以下、僕の理解し ている範囲で説明します。

 氷期と間氷期を分けるのは、高緯度地域が寒冷化し、雪や氷で覆われる かどうかが重要だと考えられます。高緯度が寒冷化すると雪や氷で覆われ た地域が太陽光を反射して熱を吸収せず、より寒冷化が進んでいく。一方、 高緯度地域が温暖化し雪氷地域が減少し地表が露出すると、太陽熱の吸収 率が上がり、温暖化が進行する。
 原因と結果が絡み合っているので、話がややこしくなるのですが。

 寒冷化、温暖化につながるきっかけは、地球の自転軸の傾きの変化(4万 年程度の周期)、自転軸の首振り(歳差運動、2万年前後)、地球の公転軌 道の楕円の形の変化(離心率、10万年〜)といった変動が組合わさってい るものと想定されています。これらの影響による地球の緯度ごとの日射量 の変化が重要であるという考えが1930年にミランコビッチにより提唱され、 およそ10万年周期の氷期−間氷期サイクルを説明するものとして、ミラン コビッチサイクルと呼ばれています。

 近年は、特に北半球高緯度の気候変動に関して、深層水循環がコントロ ールする表層海流の熱輸送の重要性が注目されています。現在、グリーン ランド沖の北大西洋と南極のウェッデル海から深層水循環が始まっていま すが、これが間氷期の安定で温暖な状態を維持するのに重要な役割を果た していることが知られています。北大西洋での表層から深層への海水の沈 み込みが、温暖なメキシコ湾流−北大西洋海流を高緯度まで引っ張り、そ の結果北大西洋高緯度地域が温暖になり、雪や氷で覆われることなく、太 陽光を吸収できる状態を維持しているというわけです。
 なんらかの理由でこの深層水循環が停止すると、少なくとも北半球大西 洋の高緯度地域は寒冷化し、グリーンランドやスカンジナビア、北米の氷 床が発達し寒冷化するきっかけになると考えられています。停止の原因に は、温暖化による大量の淡水の流入などがありますが、まあ、まだよくわ からないことが多いです。
 低緯度地域や南極で、深層水循環の停止による寒冷化が起きているかど うかも、まだ対応がよくわかっていません。

 非常に簡単にいうと、第四紀の氷床が存在する状態では、比較的温暖で 安定な時期(間氷期)と、寒冷で気候が非常に不安定な時期(氷期)があ り、その2つのモードが繰り返して現れている。その切り替えのきっかけ は、まだよくわかっていない。だが、少なくとも氷期の気候の不安定さや、 間氷期から氷期に切り替わるきっかけには、海流の働き、それをコントロ ールする深層水循環の強弱が大きくかかわっているようだ、ということの ようです。

 岩波講座の地球惑星科学(たぶん、2巻か3巻)あたりの参考書や、 海洋のしくみについての一般書が参考になるかと思います。

 2004.11.5 H.Hagiya 【理科の部屋】発言から一部改変。


地球史

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