生命の誕生


1)生命の誕生

 現在の地球の多様な生命は、すべて地球上で誕生した最初の生命から進化してきたものと考えられている。いつ、どのようにして最初の生命が誕生したかはわかっていない。しかし、生命誕生以前に、単純な分子から複雑な分子を生み出す化学進化の段階があったと考えられる。
 生命の誕生と発展には、地球形成後数億年以内に海洋が形成されたことが重要であった。生命誕生の頃の地球大気には酸素がなく、二酸化炭素を主として、現在よりも高温高圧の状態であった。

a)化学進化
 太陽系初期に作られた隕石の研究から、地球の材料となった微惑星には、単純な有機物がすでに含まれていたことが知られている。地球形成後、アミノ酸をはじめとする有機物が原始大気・海洋中でさらにつくられ、海洋中で濃縮し、複雑に結びつくことで、生命の材料がそろえられたと考えられる。
 原始海洋では、アミノ酸からタンパク質をつくるような、より複雑な有機物をつくるはたらきが機能していたと考えられる。これを化学進化という。生命の誕生には、化学進化によって生み出されたさまざまな複雑な有機物が重要であった。
 現在は、生命誕生当時の海洋や大気の条件を再現する実験が数多く行われ、生命の起源についての研究が進んでいる。

b)地質の記録
 地球上に海洋が存在した証拠は、地層の中に求められる。年代の確実な最古の海の地層は、約39−38億年前のグリーンランドの地層であり、変成岩化した縞状鉄鉱や石灰岩、砂岩、礫岩、チャートなどの岩石からなる。これらの地層には生命起源の特徴をもつ炭素が含まれていて、当時すでに海中に生命が誕生し広がっていたと推定される。
 月のクレーターの研究から、およそ39億年前以前には地球への隕石の落下が激しかったことが推定されている。隕石の落下が減少することで海洋が蒸発せずに安定して存在し、そこで生命が誕生し生存できる状況がととのった。
 最古の化石は、オーストラリアと南アフリカで発見された、約35億年前の細菌及びラン細菌とされるものである。最初の生命は、酸素のない環境で、周囲の有機物を栄養として生活していたと考えられるが、やがて硫化水素や硫黄、水素やメタンなどの物質の化学エネルギーや、太陽光のエネルギーを利用して、有機物を合成する生物が現れた。
 これらの酸素のない環境で生活する細菌類の子孫は、現在でも、地球上の酸素の少ないさまざまな場所で繁栄している。

 2001.1.22 H.Hagiya


地球史

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