海洋による初期大気中のCO2の除去


*初期大気中の二酸化炭素

 海洋形成前の大気圧は400気圧程度と見積もられます。海水が全部蒸発すると、 その水蒸気で約300気圧分になります。これに二酸化炭素の量を加えるわけですが、 地殻中の炭素や石灰岩の合計で40気圧分、理論計算で60-100気圧分といわれています。 理論と地殻のデータが合わないのは、プレートの沈み込みでマントルに 持ち込まれた分が大きい可能性があります。

*石灰岩の化学的沈殿

 単純化して、非常に簡単に説明すると、高温の水や、二酸化炭素を含んだ水は、酸性です。 それで、岩石と反応して、陽イオンを溶出させる。つまり、地表の岩石を風化させ、 また海底熱水系で岩石を変質させて、陽イオン(カルシウムイオンやマグネシウムイオンなど) を運び出してくる。ところが、海洋は低温であったり、pHが高かったりと、条件が異なり、 大量の二酸化炭素が溶け込んでいるので、過飽和になり、炭酸塩の沈澱が起こる。

 炭酸塩岩はある割合で、プレートの移動によって付加体などで地殻に固定され、 あるいはマントルに持ち込まれ、大半が系から除去される。そのため効率的に 大気から二酸化炭素が除去される。そういうメカニズムです。

 厳密には、もうちょっと複雑ですが、エッセンスはそういうことだと思います。

 別の言い方をすれば、沈殿物としての炭酸塩岩(石灰岩、ドロマイトなど)は、 最終的には地表風化や、火山ガスを通じて、大気・海洋系に戻ってくるのですが、 その戻ってくる割合が小さいと言うか、平均滞在時間が長いので、その分だけ 大気中のCO2分圧が下がるのでしょう。

 それで、炭酸塩岩の形成には海洋が必要であり、海洋があれば、上記の除去 プロセスが自動的に機能する、ということになるのだと思います。


1999.3.24 H.Hagiya

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