NHKジュニアスペシャル 第15回「地球と共に歩んで」
VTR台本 PD:杉山 優
NHKジュニアスペシャル「大空への挑戦者」ナレーション原稿 すぎやま │ 映 像 │ 内 容 ┌─────────────┴─────────────────────────┐ │VTR1 │ └─────────────┬─────────────────────────┘ 環境復元図 0430│Q まず初めに地球の歴史の中で、 │ 一体どんな生命が空を飛ぶ能力を │ 身につけたのか見てみましょう。 │ 3億5千万年前の地球には、 │ すでにシダ植物の森がありました。 │ プロトファスマ 0443│Q この森に最初にあらわれたのは │ 動物は昆虫だと考えられています │ ステノディクティア 0448│Q そして最初に空を飛んだのも昆虫です │ メガネウラ 0452│Q 今では考えられない巨大なトンボも │ 空を飛んでいました │ 羽を広げると70センチ以上もあるメガネウラです │ イクチオステガ 0500│Q そして、私達人間の祖先、脊椎動物も川から陸へと │ 生活の場を広げ始めました。 │ イクチオステガが陸上の生活に適応したのです │ 爬虫類の誕生 0514│Q その後、植物によって酸素が充分に作られ、 │ エサとなる植物や昆虫が豊富な森には │ 様々な脊椎動物が現れます。 │ 両生類や、それから進化した │ 爬虫類などのグループです │ バロサウルス 0529│Q そして1億5千万年前、 │ 陸には巨大な恐竜が大繁栄していました。 │ 翼竜 0540│Q 一方空には、翼竜が飛び回っていました │ 翼竜は恐竜と同じように │ 爬虫類の仲間から進化した生き物です │ 恐竜の仲間、空を飛ぶ肉食の爬虫類です │ プテロダクティルス化石 0600│Q 1億5千万年前にいた翼竜の仲間、 │ プテロダクティルスの化石です。 │ 人間と同じように、背骨をもった翼竜は、 │ 一体どんな体をしていて、 │ どんな飛び方をしていたのでしょうか │ 博士 研究室へ 0615│Q 翼竜の研究をしている科学者の多くは │ 翼竜の飛び方が、今の鳥の飛び方とは │ 全く違っていたと考えています │ │ │ 博士インタビュー 0626│ すべての翼竜に共通しているのはこの腕の骨です。 │ ここに3本の指があります。 │ そしてその外側に長くのびている骨、 │ これは実は4本目の指なのです。 │ そしてこの長い薬指と大腿部の間に皮膚を伸ばして │ 膜を張り大きな一枚の翼をつくっていたのです │ 翼竜復元図 0657│Q 翼竜の翼は一枚の大きな膜でできていました。 │ その膜は長くのびた1本の指で支えられています │ 翼竜の骨格 0711│Q 翼竜が空を飛ぶためには │ 体を軽くしなくてはなりませんでした。 │ そのために、翼竜の骨には大きな特徴があります。 │ 骨の厚さはわずか1ミリ、中は空洞になっていて、 空洞の骨 │ 細かく張り巡らされた支えがあります。 │ この支えによって、軽くて丈夫な骨を │ つくっていたのです。 │ 翼竜CG 0730│Q 翼竜の飛び方はグライダーの飛び方と │ とてもよく似ています。 │ 海岸に吹く安定した風や、上昇気流に乗って │ 滑るように空を飛んでいたのです。 │ 珊瑚礁や干潟の上を飛び回り、 │ エサになる魚を見つけると │ 海面すれすれに舞い降りて、 │ 長いくちばしで魚を捕まえていたと考えられています │ 大きさの比較 │Q 2億年以上も前に登場した翼竜。 │ はじめの頃は翼を開いても30センチくらいの │ 大きさでしたが、 │ 6500万年前、白亜紀の終わり頃には、 │ プテラノドンやケツアルコアトルスなど プテラノドン イラスト │ 7メートルから12メートルもある │ 巨大な翼竜が登場しました。 │ ──────────────┴────────────────────────── ┌───────────────────────────────────────┐ │VTR2 │ └─────────────┬─────────────────────────┘ アルトミュール渓谷AS 1222│Q 鳥の祖先を知る手がかりは、 │ ドイツのアルトミュール渓谷で見つかりました。 │ ここは、1億5千万年前には │ 珊瑚礁の島々が浮かんでいたところですが、 │ 今は一面に石灰岩の大地が広がっています。 │ ゾルンフォーヘン採石場 1240│Q リトグラフという石版印刷に使う │ 石灰岩の産地として有名な │ ゾルンフォーヘンです。 │ 地層から石を割る男 1256│Q 薄い板のように剥がれてゆく石。 │ 石の表面を彫ってインクを塗り、印刷に使います。 │ 石を割るUP 1305│Q ゾルンフォーヘンの地層からは、 │ 1億5千万年前の生き物の 石を割る男 │ 化石が数多く発見されています。 石切GS │ 今から100年以上前に、 石切足元 │ ここから羽の化石が見つかりました。 │ 採石場ロング │ │ 始祖鳥羽毛化石 1323│Q これがその化石です。 │ 長さはおよそ6センチ、 │ 見た目には今の鳥の羽と全く変わりません。 │ 始祖鳥ロンドン化石 1339│Q さらに同じ場所から、 │ 頭の部分が欠けた、 │ 不思議な動物の化石も見つかりました。 化石の尾 │ この化石には鳥のような羽がありますが、 │ 鳥にはない、長い尻尾もあります。 │ 化石の足 1355│Q そして足の骨には、トカゲなどのような │ 爬虫類の特徴があります │ 始祖鳥ベルリン標本 1403│Q 更にもう一つ、羽だけではなく、 │ 翼の形がはっきりと残っている化石も見つかりました 化石の翼 │ この動物は、体長およそ70センチ。 │ 鳥の祖先という意味の │ 「始祖鳥(しそちょう)」と名付けられました │ 始祖鳥の復元模型 回転 1420│Q 化石をもとに復元した始祖鳥(しそちょう)です │ 今の鳥にはない長い尻尾があります │ 顔UP〜鉤爪 1433│Q 口には、鳥には無い、 │ たくさんの歯が生えています。 │ そして足だけでなく、翼にも3本の鋭い爪があります │ 模型FF 1450│Q この不思議な生き物は、 │ 一体何からどのように進化したのでしょうか 鞄から化石を出す男 1458│Q そのヒントはドイツの博物館にありました 始祖鳥化石 │ 博物館にある始祖鳥の化石は、 │ 発見されてから20年ものあいだ │ コンプソグナツスという恐竜と間違われていました │ コンプソグナツス復元図 1515│Q コンプソグナツスは体長70センチくらいの │ 肉食恐竜です。 │ オストロム研究 1528│Q 始祖鳥とコンプソグナツスの骨格が オストロム越し化石 │ 徹底的に調べられました。 │ コンプソグナツス復元図 1539│Q その結果、始祖鳥とコンプソグナツスの骨格が コンプソグナツス骨格 │ とてもよく似ていることがわかりました。 始祖鳥と並ぶ │ 頭や背骨、骨盤などに同じような特徴が │ 見つかったのです。 │ コンプソグナツスCG走り1555│Q 研究した科学者は始祖鳥がコンプソグナツスから │ 進化したと考えています。 │ コンプソグナツスは小さいながら、 │ とても高い運動能力を持っていました。 コンプソグナツス〜始祖鳥 │ その運動能力を生かし、活発に動き回るためには 始祖鳥走り │ 常に体温を高く一定に保っていなくてはなりません。 │ 体の熱を逃がさず、保温するために、 │ 恐竜のウロコが羽に進化したのが │ 始祖鳥だと言うのです。 │ 始祖鳥とコンプソグナツス1627│Q 実は、ウロコと鳥の羽は、見た目は全く違いますが │ ケラチンという同じタンパク質でできています。 ウロコ〜羽への進化 │ 身を守るために柔らかい皮膚が硬いウロコに進化し │ さらにそのウロコが複雑な形をした羽へと進化したと │ 考えられるのです。 ──────────────┴────────────────────────── ┌───────────────────────────────────────┐ │VTR3 │ └─────────────┬─────────────────────────┘ 始祖鳥模型 2012│Q 始祖鳥は空を飛べたのでしょうか。 │ 始祖鳥は、恐竜と同じ、重い骨を持っていたので、 │ あまりうまく飛べなかったと │ 考えられていました。 │ しかし羽を調べてみると、 │ 始祖鳥は上手に空を飛んだのではないかと │ 考えられるようになりました。 │ 始祖鳥の羽化石 2032│Q ゾルンフォーヘンで最初に発見された │ 始祖鳥の羽の化石です。 │ 羽の付け根から先端にのびる軸は、 │ 中心ではなく片側に寄っています │ ハイイロガン飛行 2047│Q 今の鳥を見てみましょう。 │ 翼を羽ばたかせて軽々と飛んでいます。 │ その翼は数多くの羽によって作られています。 │ キジバト翼 2101│Q 翼の先端にある風切り羽という、 │ 10枚ほどの長い羽。 │ 1本の羽 2110│Q その1本を取り出してみると │ 軸は中心ではなく片側に寄っていて、 │ 始祖鳥の羽と全く同じ形をしています。 │ 翼 2121│Q さらに羽の表面をよく観察してみましょう。 │ 羽のスーパーズーム 2130│Q 軸からは木の枝のように細い羽毛が │ きれいに並んでいます。 │ その細かい枝から,さらに細かい枝が伸び、 │ それぞれの枝が交互に絡み合っています。 │ この精密な構造を持つことで、鳥は空を飛ぶことが │ できるのです │ 始祖鳥化石羽UP 2149│Q 始祖鳥の羽も、同じ構造を持っていました │ 化石には羽の軸だけではなく、 │ 交互に絡み合った細かい枝も │ はっきりと残っていました。 │ このような羽は、 │ 空を飛ぶ鳥すべてに見られる特徴です。 │ 駝鳥 2206│Q 一方、「ダチョウ」など、空を飛ばない鳥の羽は │ どのような形をしているのでしょうか。 │ 駝鳥の羽 2216│Q 先程の飛ぶ鳥の羽とは全く形が違います │ 軸は真ん中を通り、 │ 全体がフワフワとして絡み合った様子がありません。 │ 始祖鳥化石羽UP 2229│Q 軸が片側に寄って、細かく絡み合った羽。 │ │ 始祖鳥CG 2235│Q 始祖鳥は1億5千万年も前に、空を飛ぶための翼を │ もっていたという事です。 │ 2245│Q 鳥の祖先とも言われる始祖鳥。 │ この始祖鳥よりも、更に進化した鳥は │ どんな生き物なのでしょうか。 │ 中国 街中 2255│Q その化石は │ 最近になって化石の発掘が盛んになった │ 中国で見つかりました。 │ 山中ドライブショット 2306│Q 東北地方、遥寧省(ようねいしょう) │ という所の山の中から │ 今の鳥と、とてもよく似た化石が見つかりました。 │ 始祖鳥の時代からおよそ1500万年後の │ 白亜紀初期の生き物の化石です 男歩き │ かつてここはドイツのゾルホーフェンと同じように │ 亜熱帯の気候に包まれていました。 足元〜顔 │ 大きな湖があり、 │ そばにはソテツやシダの森がありました。 手元の化石 │ その森に、始祖鳥よりも進化した鳥がいたのです。 │ シノルニス化石 2338│Q 中国の鳥という意味の「シノルニス」 │ と名付けられたこの鳥は始祖鳥よりも小さく、 │ 10センチくらいの大きさでした。 │ シノルニス復元図 2350│Q シノルニスは森の中に住み、 │ 昆虫やトカゲなどを食べていたと考えられています │ シノルニス骨格 2400│Q 化石から復元したシノルニスの骨格には、 │ シノルニスが、 │ 始祖鳥よりも現代の鳥に近いことを示す、 │ 幾つかの違いがありました。 │ 始祖鳥骨格と比較 2408│Q 始祖鳥よりも歯が小さくて、数も少なくなり │ 翼にある3本の鉤爪も短くなっています。 │ 始祖鳥にある長い尻尾もほとんどなくなっています。 │ そして、胸の骨が発達していました │ この骨があると、翼を動かすための力強い筋肉を │ つけることができます。 │ │ 化石〜空洞の骨 2437│Q 更にシノルニスの骨は、翼竜の骨と同じように │ 中が空洞になっていました。 │ 軽くても丈夫な骨を持ったシノルニスは │ 始祖鳥よりも空を飛ぶことに、 │ 適応していたと考えられるのです。 │ │ │ │ │ シノルニスCG 2455│Q シノルニスは │ 今の鳥とほとんど同じような体の仕組みを │ 完成させていました。 │ 鳥は、白亜紀の終わりから │ 種類と数を増やし世界各地に広がり始めたのです。 │ 現生の鳥たち 2513│Q 空を自由に飛び回る鳥たち。 │ 空という環境に見事に適した鳥は │ 多くの進化の謎にみちた生き物なのです ──────────────┴──────────────────────────