NHKジュニアスペシャル 第14回「奇跡のシステム・性」
VTR台本 PD:鈴木知子
NHKジュニアスペシャル『奇跡のシステム“性”』 ナレーション台本 担当:鈴木知子 ┌────────────────────────────────────────────────────┐ │スタジオ【1】 オープニング 〜生命の進化の秘密って? │ ├──────────────────┬──┬──────────────────────────────┤ │◆<プレタイトルVTR │ │・番組設定 │ │◆タイトルVTR │ │(テーマ音楽) │ │ │ │ │ │・スタジオLS │サクラ │ねえ、第二の地球の候補地ってどんな所かなあ。 │ │ │ │私、絶対に視察部隊のメンバーになりたいなあ。 │ │・ポキート1S T−W│ポキート│それには、難しいテストがありますからね。サクラちゃんみたいな│ │ │ │不真面目な人が、視察部隊に入ってやっていけるのか、心配で・・・。│ │・サクラ1S T−W│サクラ │まったくポキートったら失礼ね。 │ │ │ │大昔のバクテリアから、つい最近のヒトの誕生まで全部やっちゃっ│ │ │ │たんだもん。もう、生命の歴史はばっちりよ。 │ │・サクラ、ポキート2S │ポキート│相変わらず楽天的な性格ですねえ。 │ │ │ │まだ大切なことをやり残しているんですけど。 │ │ │サクラ │えっ? それってもしかしてポキートみたいな人工生命体のこと?│ │・博士1S TーW│博士│ははは、そうじゃないよ。実はね、今まで40億年の生命の歴史を│ │ │ │ずっとたどってきたから、今日はサクラちゃんに、生命の進化のと│ │ │ │っておきの秘密を教えてあげようと思っているんだ。 │ │・サクラ1S │サクラ │生命の進化のとっておきの秘密? │ │・博士、サクラ、ポキート3S │博士│ポキート。 │ │ │ポキート│はいはい、あれですね。 │ │・ポキート1S │ │(アタック音) │ │ →「性」という文字の掛け軸 │サクラ │ん??「性」って男と女のこと? │ │ │ │どうしてこれがとっておきの秘密なの? │ │・サクラ、ポキート2S │ポキート│それじゃあ、サクラちゃん、ここで基本的な問題です。 │ │ (ポキートは文字から体に戻る) │ │一番最初に確認したことですが、「生命」とはいったい何でしょう。│ │ │サクラ │えっ? そりゃあ、ポキートみたいなロボットと違って命があって│ │ │ │生きてるってことでしょ。 │ │ │ポキート│あのぉ、そういういやみじゃなくてぇ、もうちょっと具体的な特徴│ │ │ │があったでしょ。 │ │・サクラ1S │サクラ │あっ、そうそう、外から栄養を取り入れて、いらないものを排泄し│ │ │ │て・・・、それから運動するってことだよね。 │ │・博士、サクラ2S │博士│サクラちゃん、大事なこと忘れてるねえ。 │ │ │サクラ │えっ?? なんだっけ? │ │・博士1S │博士│生命の大きな特徴は「子孫を残す」ということ。 │ │・ポキート1S │ポキート│そうです。サクラちゃん、生命は子孫を残すからこそこんなに長い│ │ │ │こと続いてきたんじゃないですか。 │ │ │ │「性」というのは、子孫を残すために大切なしくみなんです。 │ │・博士、サクラ、ポキート3S │博士│それじゃあ、ポキート、最初のファイルを見てみよう。 │ │・球体アップ │ポキート│はいはーい、こちらです。 │ ├──────────────────┴──┴──────────────────────────────┤ │VTR《1》 子孫を残すための工夫 │ ├──────────────────┬─┬───────────────────────────────┤ │・海 │Q│生命の大きな特徴は、子孫を残すと言うこと。 │ │ │ │地球上の生命たちは、そのために様々な工夫をしてきました。 │ │ │ │ │ │・月 │Q│満月の夜。生命の神秘を思わせるドラマが海で始まります。 │ │ │ │ │ │ │Q│サンゴの産卵です。 │ │ │ │ │ │・サンゴの産卵 │Q│あるサンゴが産卵を始めると、他のサンゴも次々に産卵を始めます。│ │ │ │サンゴの産卵は、申し合わせたように、 │ │ │ │決まった時期に一斉に行われます。 │ │ │ │ │ │ │Q│太古の昔から生きてきたサンゴのような生物は、精子と卵子を出す │ │ │ │「時期と場所」を合わせることで、広い海の中で、確実に出会うこと│ │ │ │ができるようにしたのです。 │ │ │ │ │ │・魚の群 │Q│海の中を泳ぎ回る魚たち。 │ │ │ │ │ │・魚2S │Q│精子と卵子が出会うためには、オスとメスが寄り添うことが必要にな│ │ │ │りました。 │ │ │ │ │ │・精子放出 │Q│メスが卵を産むのにあわせ、オスが精子を振りかけます。 │ │ │ │ │ │・コモドドラゴン │Q│陸へ進出した動物は、水の乏しい環境で生きるため、 │ │ │ │様々な新しい仕組みを身につけました。 │ │ │ │ │ │・体内受精の様子 │Q│精子や卵子は水から外にでると、乾燥して死んでしまいます。 │ │ │ │そこで、精子を直接メスの体内に送り込む体内受精が始まりました。│ │ │ │ │ │・鳥の産卵、子育て │Q│そして、オスとメスが互いに引き合い、仲良くすることが │ │ │ │必要になったのです。 │ │ │ │ │ │・シカ、トンボ │Q│互いに引き合うために体の形が変わり、 │ │ サイ、ツル │ │また様々な求愛行動も生まれました。 │ │ オスとメスのフラッシュ │ │ │ │ │Q│子孫を残すために、地球上では、オスとメスが織りなす │ │ │ │豊かな世界が繰り広げられているのです。 │ ├──────────────────┴─┴───────────────────────────────┤ │スタジオ【2】 なぜオスとメス、男と女がいるの? │ ├──────────────────┬──┬──────────────────────────────┤ │・サクラBS │サクラ │ふーん、やっぱりオスとメスが出会って、結ばれることって何だか│ │ │ │ドラマチックだね。子孫を残すためか・・・・。 │ │・サクラ、博士2S │ │それにしてもさあ、どうしてこの世の中に男と女、オスとメスが生│ │ │ │まれたんだろう。 │ │ │博士│「性」っていうのはすごく神秘的なシステムだよね。 │ │・サクラ1S │サクラ │ほんと。「性」なんてなかったら、恋愛の悩みもなくなるのに。 │ │・ポキート1S │ポキート│えーっ、サクラちゃんに、恋愛の悩みなんてあるんですか? │ │・サクラ、ポキート2S │サクラ │失礼ね。私だって女の子なんだから、恋ぐらいするわよ。 │ │ │ポキート│ふーん、サクラちゃんの好きな人って誰?誰? │ │・サクラ1S │サクラ │ナ・イ・ショ! ポキートには教えてあげなーい。 │ │ │ │ねえ、博士、40億年の生命の歴史の中で「性」っていつ頃からあ│ │ │ │るの? │ │・博士、サクラ、ポキート3S │博士│そうだね、じゃあ、ポキート、「性」はどうやって生まれたかを整│ │ │ │理したファイル、出してくれるかなあ。 │ │ │ポキート│わかりました。(ちょっと焼き餅っぽく)それでは、恋する乙女の│ │・球体アップ │ │サクラちゃん。こちらのファイルをじっくりとご覧下さい! │ ├──────────────────┴──┴──────────────────────────────┤ │VTR《2》 性はどうやって生まれたのか │ ├──────────────────┬─┬───────────────────────────────┤ │・惑星カレンダー │Q│今から20億年前の地球です。 │ │・太古の海 │ │生命が地球に誕生して、すでに長い時間がたっていました。 │ │ │ │しかし、その海にはまだ単純な生物しかいませんでした。 │ │ │ │ │ │・真核生物(CG)の分裂 │Q│オスもメスもない単細胞生物達です。 │ │ │ │彼らは、自分の体を分裂させて、増えていました。 │ │ │ │この時できた新しい細胞は、どれも同じで違いは全くありません。 │ │ │ │ │ │・細胞の中のDNA │Q│彼らの細胞の中には、一組の遺伝子・DNAが入っています。 │ │ │ │DNAとは、沢山の遺伝情報がたっぷりとつまった命の設計図のよう│ │ │ │なもので、その生物の生まれつきの特徴を決めます。 │ │ │ │ │ │・DNAのコピー │Q│分裂して増えるときにはまず、遺伝子・DNAがコピーされます。 │ │・分裂する細胞 │ │こうして分裂を繰り返し、そっくり同じものが │ │ │ │次々に作られていきました。 │ │ │ │数を増やすためにはこれが最も効率のよい方法だったのです。 │ │ │ │ │ │・沢山の細胞 │Q│しかし分裂をするためには、もう一つの体を作るために充分な栄養が│ │ │ │必要です。もし、その栄養がなくなったらどうなるでしょう。 │ │ │ │ │ │・波 │Q│海の中で、栄養分が極度に不足した場所では、 │ │ │ │単細胞生物達が次々に死んでいきました。 │ │ │ │ │ │・死んでいく細胞 │Q│大昔の単細胞生物達は、海の環境が変化し、栄養がたりなくなった時、│ │ │ │生き延びるためにどうしたのでしょうか。 │ │ │ │そのことが、オスとメスという性の誕生に関係があるのではないかと│ │ │ │考えられています。 │ │ │ │ │ │・顕微鏡を覗く │Q│その秘密を探るために注目されているのが、クラミドモナスという生│ │・クラミドモナス │ │き物です。わずか数十分の1ミリの単細胞生物です。 │ │ │ │太古の生物と同じように、ふだんは単純に分裂して増えています。 │ │ │ │ │ │・栄養のない液にいれる │Q│このクラミドモナスが栄養不足になるとどうなるでしょう。 │ │ │ │栄養分の全く含まれていない水の中に入れてみます。 │ │ │ │ │ │・クラミドモナス集まる │Q│ばらばらに動いていたクラミドモナスが、 │ │ │ │ところどころで集まり始めました。 │ │・くっつき合う個体 │ │よく見ると、二つの細胞がふるえながら近づいています。 │ │・接合する個体GS │ │やがて互いに結びつき、ひとつになりました。 │ │ │ │クラミドモナスは栄養不足の環境になると、 │ │ │ │ふたつの細胞が合体し、ひとつの細胞として生き始めたのです。 │ │ │ │ │ │・作業する女性 │Q│今度は合体した細胞を再び、栄養のあるところに戻してみます。 │ │・培地 │ │1週間後、合体した細胞は再び分裂をはじめ、増えていました。 │ │・クラミドモナス │ │しかし、この中には分裂する前の細胞とは、 │ │ │ │大きさや色が微妙に変わっているものがありました。 │ │ │ │分裂する時に、これまでと違う何かが起こったのです。 │ │ │ │実は、ふたつの細胞の遺伝子が複雑に混ざり合って、もとの細胞とは│ │ │ │違う新しい生命が生まれたのです。 │ │ │ │ │ │・海 │Q│太古の海でも、全滅の危機に直面した単細胞生物のうち、 │ │ │ │あるものは隣の細胞と助け合い、互いに足りない栄養を │ │ │ │補い合おうとしたのではないでしょうか。 │ │ │ │ │ │・いろんな細胞の合体と分裂 │Q│ふたつの異なる細胞の合体と分裂。 │ │ │ │そしてその度に行われる遺伝子の組み替え。 │ │ │ │その繰り返しが、性の始まりだと考えられています。 │ │ │ │ │ │・エディアカラ(CG) │Q│6億年前になると、海にはクラゲなどの多細胞生物が │ │ │ │出現していました。この頃には、2種類の性の違いが │ │ │ │はっきりしてきたと考えられています。 │ │ │ │ │ │・クラゲ │Q│体長わずか1ミリの小さなクラゲです。 │ │・クラゲの卵子 │ │体の中に見える丸い粒が子孫を残すための卵子です。 │ │ │ │ │ │・メスからオスへPAN │Q│こちらのクラゲは形が違っています。 │ │・精子アップ │ │細胞は非常に小さく、べん毛を持ち、活発に活動しています。 │ │ │ │これが精子です。 │ │ │ │ │ │・オスとメス2画面 │Q│卵子を持つメス、精子を持つオスが生まれたのです。 │ │ │ │ │ │・放精 │Q│オスの体から無数の精子が放出されます。 │ │ │ │精子は数を多くし、動き回れる能力を身につけることで、 │ │・精子と卵子 │ │卵子と出会える機会を増やします。 │ │ │ │ │ │ │Q│一方、大きな卵子は動き回ることはできませんが、 │ │ │ │豊富な栄養を蓄え、精子と合体したあとの成長を助けます。 │ │ │ │ │ │・クラゲが泳ぐ │Q│二つの異なる細胞が確実に出会えるように、 │ │ │ │そして出会ったあとも、確実に生き残れるように、 │ │ │ │精子と卵子、オスとメスという別々の役割が生まれたのです。 │ ├──────────────────┴─┴───────────────────────────────┤ │スタジオ【3】 多様化をうながす性のシステム │ ├──────────────────┬──┬──────────────────────────────┤ │・サクラ1S │サクラ │なるほど、栄養不足がオスとメスの最初の出会いってわけね。 │ │・博士1S │博士│人間のオスとメスのようなはっきりしたしくみが出来るまでには、│ │ │ │結構、中間的な生物も沢山生まれたんだよ。 │ │・サクラ1S │サクラ │中間的な生物って? │ │ │博士│たとえば、今のファイルに出てきたクラゲ。 、│ │ │ │オスとメスという性のシステムだけでなく、分裂でも増えるんだよ。│ │ │サクラ │えっ!? 両方あるの? │ │◎ミズクラゲの映像合成 │博士│*クラゲの増え方について簡単に説明 │ │・サクラ1S │サクラ │ふーん、クラゲって単純そうな体なのに、結構複雑なんだね。 │ │・ポキート1S │ポキート│博士、中間的といえばカタツムリもそうですよね。 │ │ │サクラ │えっ!? カタツムリも分裂するの? │ │・博士1S │博士│いやいや、そうじゃないよ。カタツムリの赤ちゃんは、卵から生ま│ │ │ │れるんだよ。 │ │・博士、サクラ2S │ │*カタツムリの増え方について簡単に説明 │ │ │ │ │ │◎ポキート1S │Q │そうなんです。さくらちゃん。 │ │ →カタツムリの映像 │ │ │ │ *カタツムリ1S │Q │カタツムリは雌雄同体といって、 │ │ │ │体の中にオスとメスの両方のしくみを持っているんです。 │ │ │ │ │ │ *カタツムリ2S×4カット │Q │でも、一匹だけでは卵を産めません。 │ │ │ │ほかのカタツムリと交尾をして、 │ │ │ │お互いに精子の入った袋を交換します。 │ │ │ │ │ │ *カタツムリの産卵の様子 │Q │そして、それぞれが卵を産むのです。 │ │ │ │ │ │ *赤ちゃんの誕生 │Q │ほら、カタツムリの赤ちゃんの誕生です。 │ │ │ │ │ │・博士、サクラ2S │サクラ │なんだか、人間より便利な仕組みだね。 │ │ │博士│高等な生物になるほど、いろんな機能が特化しているから、融通も│ │ │ │きかなくなるんだよ。 │ │・サクラ1S │サクラ │それにしても、どうして性ってオスとメスの2種類なの? │ │ │ │3種類でも4種類でも色んな性があったらおもしろいのに。 │ │・博士、サクラ2S │博士│うーん、難しい質問だね・・・ │ │ │ │オスとメスしかいないというより、オスとメスの2種類で充分足り│ │ │ │ているってことかな。 │ │ │サクラ │何が? │ │ │博士│性の役割を果たしているってこと。 │ │ │サクラ │性の役割って? │ │ │博士│うーん・・・、そうだ、ポキート、遺伝子模型を出してくれるかな。│ │◎サクラとポキート2S・間に画面合成│ポキート│はいはい。サクラちゃん、これを見て下さい。細胞の中にあるDN│ │ (DNAの分子模型CG) │ │A・遺伝子の模型です。さっきのファイルにも出てきたものです。│ │ │サクラ │えーっと、色んな情報がつまった生命の設計図みたいなものだった│ │ │ │よね。 │ │ │ポキート│その通り! ほんとうは目に見えないくらいすごーく小さなもので│ │ │ │すけど。この中に、目の形や鼻の形、髪の色など、生命のあらゆる│ │ │ │情報が詰め込まれていて、とにかくもう、とんでもなく複雑なもの│ │ │ │なんです。 │ │・博士、サクラ、ポキート3S │サクラ │すごいねえ。こんなものが私の細胞にも入っているんだね。 │ │・博士1S │博士│性の役割というのはね、お父さんの遺伝子を持った精子とお母さん│ │ │ │の遺伝子を持った卵子があわさって、両親とは全く違う個性を持っ│ │ │ │た子供を作るということなんだよ。 │ │ │ │サクラちゃんはお父さん似? それともお母さん似? │ │・サクラアップ │サクラ │○○はお父さん似で、△△はお母さん似で・・・。 │ │ │博士│なるほど。遺伝子がうまく混じり合ってるね。 │ │・博士、サクラ2S │サクラ │でもお父さんにもお母さんにもどっちにも似ていない人もいるけど│ │ │ │どうして? │ │ │博士│それは、さらにその祖先の影響があるから・・・ │ │・博士、サクラ2S │サクラ │オスとメスの2種類で充分というのは? │ │ │博士│遺伝子は複雑だから、2種類でも、その混じり合い方のパターンは、│ │ │ │ほとんど無限になるってことだよ。 │ │ │サクラ │同じ両親から生まれても、兄弟で全然顔や性格が違っているのは、│ │ │ │遺伝子の混じり合い方の違いってことね。 │ │・博士1S │博士│その通り。ちょっとこれを見て。 │ │◎博士、サクラ2S・間に画面合成 │ │これはアマゾンの森に住んでいるアグリアスという蝶だよ。 │ │ (アグリアスの標本の映像) │サクラ │ふーん、羽の色がきれいだね。こっちはなんて言う蝶? │ │ │博士│これもアグリアスだよ。 │ │ │サクラ │えっ? 全然模様が違うじゃない。 │ │ │博士│実は、このアグリアス。同じ種類でも一匹一匹すべて羽の色と模様│ │ │ │が違っているんだよ。 │ │ │サクラ │同じやつはいないの? │ │ │博士│いないんだよ。これ、全部同じアグリアスなんだ。 │ │ │サクラ │へえ、すごいバリエーションだね。一匹ずつ個性があるってこと?│ │・博士1S │博士│そうだよ。この個性ができたのも、オスとメスの親の遺伝子が混じ│ │・サクラ1S │ │りあう性の仕組みの結果なんだよ。 │ │ │サクラ │ふーん・・・でも待って。そうやって混じり合って色んな個性の子供│ │ │ │を作ることには、いったいどんな意味があるの? │ │・ポキート1S │ポキート│それにつきましては、ちゃんとファイルをご用意しております │ │・球体アップ │ │ │ ├──────────────────┴──┴──────────────────────────────┤ │VTR《3》 性による多様化のメリットは? │ ├──────────────────┬─┬───────────────────────────────┤ │・オーストラリア │Q│オーストラリアの草原地帯。ここに生命が個性を持っていることが、│ │ │ │いかに重要かということを教えてくれる例があります。 │ │ │ │ │ │・ウサギの群 │Q│夏から秋にかけて、この大草原を埋め尽くす無数のウサギ。 │ │ │ │実はこのウサギ達はもともとオーストラリアにいたものでは │ │ │ │ありませんでした。 │ │ │ │ │ │<白黒映像> │Q│1859年、人間によって、イギリスからオーストラリアに、 │ │・ウサギのハンティングの様子 │ │わずかなアナウサギが持ち込まれました。 │ │ │ │ハンティングを楽しむためです。 │ │ │ │ │ │・ウサギの群 │Q│このアナウサギは1年で平均12頭の子供を産みます。 │ │ │ │オーストラリアには、キツネなどの天敵がいないこともあって、 │ │ │ │急激に増えていきました。 │ │ │ │ │ │・ウサギを追う人々 │Q│アナウサギの大繁殖は作物や牧草に大きな被害を与えました。様々な│ │・囲いの中のウサギ │ │撲滅作戦が行われましたが、どれもうまくいきませんでした。 │ │ │ │ │ │・科学産業省 │Q│そこで、オーストラリアの科学産業省は │ │ │ │アメリカからあるウィルスを輸入しました。 │ │・研究所、ウィルス │ │それは、アナウサギだけに感染し、 │ │ │ │やがて死をもたらすというものでした。 │ │・ウサギの死体 │ │まかれたウィルスはあっという間に広まり、 │ │ │ │次々とアナウサギは死んでいきました。 │ │ │ │ │ │・生きていたウサギ │Q│しかし、この作戦は失敗でした。 │ │ │ │確実に感染すると考えられていたこのウィルスに対して、 │ │ │ │一部のアナウサギは抵抗力を持っていたのです。 │ │ │ │ │ │・細胞の中にあるMHC │Q│体の中の細胞には、免疫の働きに重要な役割を持つ組織があります。│ │ │ │それはMHCと呼ばれ、病原体をくい止める門番の働きをしています。│ │ │ │ │ │・MHCの窪み │Q│上の部分に独特の窪みがあります。 │ │ │ │侵入してきた病原体をこの窪みでとらえます。 │ │ │ │ │ │・いろんな形のMHC │Q│このMHCには多くのタイプがあります。窪みの形の違いによって、│ │ │ │とらえることの出来る病原体の種類も違ってきます。 │ │ │ │この違いが、様々な病気に対して抵抗力のある、なしを決めるのです。│ │ │ │そして、ひとりひとりのMHCのタイプは、 │ │・DNA │ │両親からどんな遺伝子を受け継ぐかによって異なります。 │ │ │ │ │ │・MHCの多様性の説明 │Q│MHCのタイプを決めるのは、ヒトの場合、6つの遺伝子です。 │ │ │ │青いカードはお父さんから受け継いだ遺伝子。 │ │ │ │赤いカードはお母さんから受け継いだ遺伝子です。 │ │ │ │この6つの遺伝子の組み合わせで、MHCのタイプが決まります。 │ │ │ │ │ │ │Q│しかも、6つの遺伝子のそれぞれに様々な種類があることが知られて│ │ │ │います。たとえば遺伝子Aは、20種類以上、 │ │ │ │遺伝子Bは50種類以上もあります。 │ │ │ │ │ │ │Q│両親がどのような種類の遺伝子を持っているかによって、 │ │ │ │その人のMHCのタイプが決まるわけですが、それらの組み合わせの│ │ │ │数はなんと数十億とおりになるといわれています。 │ │ │ │ │ │・DNAの交叉 │Q│性によって遺伝子の組み替えが行われる度に、様々なMHCの組み合│ │ │ │わせが作り出されます。 │ │ │ │ │ │・ウサギ │Q│オーストラリアのアナウサギも、 │ │ │ │多様な種類のMHCを持っていました。 │ │ │ │そのことが、予測できないウィルスの脅威から │ │ │ │生き残ることを可能にしたと考えられています。 │ ├──────────────────┼─┼───────────────────────────────┤ │・ケニア │Q│性による個性の違いは、今、世界中の人々を脅かすエイズに対しても、│ │ │ │対抗しようとしています。 │ │ │ │ │ │・プムワニ地区 │Q│ケニアの首都ナイロビにあるプムワニ地区では、 │ │ 走る子供 │ │多くの母親がエイズで亡くなり、 │ │ │ │何百人もの子供が孤児になっています。 │ │ │ │ │ │・診療所 │Q│WHO、世界保健機関のプロジェクトは、この地域で │ │・診察、採血の様子 │ │エイズの調査と研究に取り組んでいます。 │ │ │ │ │ │ │Q│ここで、奇跡的な出来事が報告されました。 │ │ │ │同じ環境で、似たような生活をしている1700人の女性を │ │ │ │調査したところ、エイズに感染しない女性が25人見つかったのです。│ │ │ │彼女たちは10年間エイズ検査を続けても、 │ │ │ │体内からエイズウィルスが発見されません。 │ │ │ │ │ │・試験管に入った血液 │Q│25人の女性がたまたま感染しないということは、 │ │ │ │統計学上あり得ないと考えられています。 │ │・顕微鏡で調べる様子 │ │プロジェクトに参加している医師たちは、 │ │ │ │25人の女性の血液を徹底的に調べました。 │ │ │ │ │ │ │Q│すると、25人の女性達のMHCのタイプに │ │ │ │共通の部分があることがわかったのです。 │ │ │ │彼女たちがエイズに感染しないのは、 │ │ │ │明らかにMHCが関係していると考えられました。 │ │ │ │ │ │・ブラマー博士インタビュー │ │「この女性たちのMHCはエイズウィルスを認識し、排除することが│ │ │ │できる特別なタイプなのです。」 │ │ │ │ │ │・DNA交叉(CG) │Q│エイズに対抗できるMHCも遺伝子・DNAを組み替える性のシステ│ │ │ │ムがあったからこそ作りだされたのです。 │ ├──────────────────┼─┼───────────────────────────────┤ │・沖縄 │Q│性が生んだ個性は、病気に対してだけでなく、厳しい自然にも │ │ │ │対抗する力があります。 │ │ │ │ │ │・シロオビアゲハ │Q│沖縄に生息しているシロオビアゲハです。 │ │ │ │ │ │・産卵 │Q│シロオビアゲハは1匹のメスがおよそ200個の卵を産みます。 │ │ │ │ │ │・サナギの羽化 │Q│ほとんどのものはサナギになって一週間で羽化します。 │ │ │ │ │ │・青いままのサナギ │Q│ところが同じ親から生まれたのに、一週間で羽化せず、 │ │ │ │およそ一ヶ月たってようやく羽化するものが必ず現れます。 │ │ │ │この羽化する時期の差も、親から受け継いだ遺伝子による個性だと │ │ │ │考えられています。これも、生き残るための知恵なのです。 │ │ │ │ │ │・台風 │Q│沖縄には、台風が多くやってきます。 │ │ │ │もし、この時一斉に羽化していれば、全滅の危険があります。 │ │ │ │ところが固いからに守られたサナギのままであれば、 │ │ │ │助かる可能性が高いのです。 │ │ │ │ │ │・蝶、大空へ │Q│様々な個性を作る性のシステムは、台風という予期せぬ自然の脅威に│ │ │ │対してさえも、対抗しているのです。 │ ├──────────────────┴─┴───────────────────────────────┤ │スタジオ【4】 生命の進化と性との関係〜まとめ │ ├──────────────────┬──┬──────────────────────────────┤ │・サクラ1S │サクラ │個性を持っているって大事なことなんだね。 │ │・ポキート1S │ポキート│どんな環境になっても、誰かが生き残れるように可能性を増やして│ │ │ │いるってことですよ │ │・博士、サクラ2S │博士│地球環境が激しく変化すると、種のほとんどのものは死んでしまう。│ │ │ │そんな中、たまたまその環境にフィットするタイプのものが子孫を│ │ │ │残して、生命は連綿と続いてきた。 │ │・サクラ1S │サクラ │色んなタイプの子孫を生み出すことができるのは、オスとメスって│ │ │ │いう2種類の性があったからでしょ。 │ │ │ │ということは・・・性の役割と進化って関係があるってこと。 │ │・博士1S │博士│すごくあるよ。 │ │ │ │生き物が水の中から陸上で生活できるようになったのも、空を飛べ│ │ │ │るようになったのも、進化しようと思って進化したのではない。 │ │ │ │*性の役割と進化との関係を説明 │ │ │サクラ │なるほどねえ。 │ │・ポキート1S │ポキート│遺伝子が混じり合うことは、同じ種類の生き物の中に個性を作るだ│ │ │ │けじゃないんですね。たまたまある個性を持ったものが新しい環境│ │ │ │で生き残って、それが積み重なっていくことで、新しい進化もおこ│ │ │ │ってくる。そして、長い時間をかけて生命の種類も増やしてきたっ│ │ │ │ていうことですよね。博士。 │ │・博士、サクラ、ポキート3S │博士│そう、ポキートの言うとおりだね。 │ │ │サクラ │えっと、今、地球上にいる生命の種類っていくつぐらいだっけ・・・│ │ │ポキート│僕のデータによると、およそ3000万種です。 │ │◎多様な生命の映像 │サクラ │いつの間にかすっごく増えたんだねえ。 │ │ (カンガルー、アザラシ、鳥・・・) │ │ │ │ │Q │海に、陸に、そして空に・・・、 │ │ │ │今、地球上には豊かな生命の世界が広がっています。 │ │ │ │ │ │ │Q │生命が太古の海で、遺伝子を繰り返し変えていく性のシステムを │ │ │ │発明したことが、この多様な生命をもたらしたんです。 │ │ │ │ │ │・博士、サクラ2S │サクラ │なんだか、すごく大きな気持ちになってきちゃったな。 │ │ │ │オスとメスという性の仕組みを使って、色んなタイプの子孫を残し│ │ │ │てきたからこそ、生命は40億年も続いてきたんだね。 │ │ │博士│そう。「性」が生命の進化のとっておきの秘密だってことがわかっ│ │ │ │たかな。 │ │ │サクラ │うん、よくわかった。 │ │ポキート1S │ポキート│ところで、サクラちゃん。第二の地球・視察部隊の入隊テストの件│ │ │ │ですが・・・、まだまだおさらいが必要です。明日、僕がつきっきり│ │ │ │で、特訓してあげましょう。 │ │・サクラ、ポキート2S │サクラ │ごめんね、ポキート。明日はちょっとほかに約束があるの │ │ │ポキート│あっ、もしかして男の子とデートでもするんですか? │ │・サクラBS │サクラ │ふっふっふっ ナ・イ・ショ! │ │・ポキート1S │ポキート│(焼き餅っぽく) │ │ │ │あー、もうサクラちゃんたら、僕に黙っていつの間に・・・ │ │・スタジオ3S │博士│まあまあ、ポキート。怒らない怒らない・・・ │ │ │ポキート│怒ってなんていませんよ。僕はただ、第二の地球のプロジェクトの│ │ │ │ためにですねえ・・・ │ │・スタジオ俯瞰 協力T−W│一同│ははは(笑い) │ │・石版アップ エンドT−W│ │ │ │・次回予告ノルマル │ │ │ └──────────────────┴──┴──────────────────────────────┘