NHKジュニアスペシャル 第17回「しなやかなポンプ 〜心臓・血管」
VTR台本 PD:杉山 優
┌────────────────────────────────┐ │VTR1 心臓の構造とメカニズム │ └──────────┬──┬──────────────────┘ 波打ち際 空撮 │0355│Q 40億年の生命の歴史。 │ │ その中で、心臓はどのように │ │ 進化してきたのでしょうか。 │ │ 波打ち際 │0402│Q 他の生き物の心臓を手がかりに │ │ その道筋を探ってみましょう。 │ │ ホヤ │0408│Q これはホヤです。 │ │ 海底の岩にはりついて生きる ホヤ │ │ 脊索動物(せきさくどうぶつ)の │ │ 仲間です ホヤ │ │ ホヤは脊椎動物の直系の │ │ 祖先と言われています │ │ ホヤの心臓 │0428│Q ホヤの心臓は原始的で │ │ 単純な構造をしています ホヤの心臓 │ │ 1本の管のような心臓ですが │ │ その一部がくびれて │ │ 周期的に体液の流れを │ │ 生み出しています │ │ 鶏の管 │0443│Q ホヤよりも複雑な構造をした │ │ ニワトリの心臓を見てみましょう │ │ 拍動 │0450│Q 卵の中で育っているときの様子です │ │ 丸まる │0457│Q ニワトリの心臓も │ │ はじめはホヤのように1本の管です 鶏の心臓 │0502│ │ │ やがて管が折れ曲がり │ │ 次第に複雑な構造になっていきます │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ ヒトの心臓CG │0515│Q ヒトの心臓も同じです。 │ │ ホヤのように1本の管から始まります │ │ それが折れ曲がり │ │ 部屋ができてきます │ │ 壁ができる │0529│Q やがて部屋の中に壁ができ、 │ │ 部屋が分かれていきます │ │ │0539│Q そして心臓の中は4つの部屋に │ │ 分かれます │ │ │0548│Q ヒトの心臓には産まれる寸前まで │ │ 部屋を仕切る壁に細長い穴があります │ │ 胎児CG │0557│Q これは、まだ肺で呼吸していない │ │ 胎児の血液が、肺を通らずに │ │ 全身に運ばれていくためです │ │ この血液の流れが、 │ │ 出産とともに大きく変わります │ │ 血流 │0613│Q 肺呼吸を始めた赤ちゃんの血液は │ │ 心臓から肺に流れます 肺循環 │0617│ そして │ │ 肺から心臓に戻ってきた血液の圧力で │ │ 細長く開いていた穴が閉じます │ │ 心臓内部の循環 │0626│ │ │ 新生児 │0631│Q 生き物の進化の歴史を │ │ 繰り返すようにして │ │ 形作られてくる心臓。 │ │ 誕生の瞬間にも大きな変化を遂げ │ │ これから一生の間、休むことなく │ │ 動き続けるのです │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 上半身CG │ │ │ │ 心臓CG │0653│Q 今度は心臓の中を │ │ 血液の流れに沿って見てみましょう。 │ │ 心臓内部CG │0659│Q 全身から戻ってきた血液は │ │ 大静脈を通って │ │ 心臓の最初の部屋に帰ってきます │ │ そして部屋と部屋を仕切っている │ │ 弁を通って2番目の部屋に送られます │ │ 右心房 │0715│Q これは心臓の内部、最初の部屋です │ │ この部屋は右心房(うしんぼう)と │ │ 呼ばれています │ │ 三尖弁 │0726│Q 部屋と部屋の仕切りは、 │ │ 三尖弁(さんせんべん)と呼ばれる │ │ 弁です │ │ 白い糸のようなものは │ │ 弁を支えている すじ 腱索 │ │ (けんさく)です │ │ そして豆粒のように見えるのは │ │ 弁を動かす筋肉です │ │ この弁は血液が逆流するのを │ │ 防いでいます │ │ 右心室 │0748│Q 三尖弁を通ると2番目の部屋 │ │ 右心室(うしんしつ)です │ │ 部屋と部屋の間はこのように │ │ 血液の逆流を防ぐ弁で │ │ 仕切られています │ │ CG合成(肺動脈) │0800│Q 血液はここから肺動脈弁 │ │ (はいどうみゃくべん)を通って │ │ 肺に流れていきます │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 肺CG │0809│Q 肺に入った血液は、 │ │ 細かく張り巡らされた │ │ 毛細血管の中を通ります │ │ その時、毛細血管の薄い膜越しに │ │ 空気と触れ合い、 │ │ 血液中に酸素を取り込みます │ │ そして二酸化炭素を放出します │ │ 心臓CG │0836│Q 肺で酸素と二酸化炭素を │ │ 交換した血液は、肺静脈を通って │ │ 心臓の第3の部屋、左心房 │ │ (さしんぼう)に戻ります │ │ そして第4の部屋、左心室 │ │ (さしんしつ)へ送り込まれます │ │ 僧坊弁 │0852│Q ここで逆流を防いでいる弁は │ │ 僧坊弁(そうぼうべん)と │ │ 呼ばれています │ │ 三尖弁と同じように │ │ 弁を動かす筋肉と白い糸のような │ │ 腱索がハッキリと見えます │ │ 左心室 │0911│Q そして第4の部屋、左心室 │ │ (さしんしつ)です。 │ │ 血液はここから大動脈弁を通って │ │ 全身に運ばれていきます │ │ 僧坊弁と大動脈弁 │0920│Q 右に見えているのが CG合成 │ │ 血液が入ってくる僧坊弁 │ │ 左側が全身につながる大動脈の入り口 │ │ 大動脈弁です │ │ 大動脈弁 │0933│Q ここから全身に送り出される │ │ 血液の量は、大人の場合 │ │ 1回の収縮でおよそ80ミリリットル │ │ 1分間では │ │ 5〜6リットルにもなります │ │ │ │Q では心臓の規則的な収縮は │ │ どのようにして起こるのでしょうか 心筋細胞CG │0950│Q 心臓の収縮する部分は │ │ 心筋細胞という細胞でできています │ │ 心筋細胞が収縮する │ │ きっかけになるのは │ │ カルシウムイオンです │ │ カルシウムイオンは │ │ 電気を帯びたカルシウムの粒です │ │ イオンチャネル │1006│Q 心筋細胞の表面には │ │ イオンを通す穴 │ │ イオンチャネルがあります │ │ イオンチャネルに │ │ カルシウムイオンが入ると │ │ 筋小胞体(きんしょうほうたい) │ │ という袋に蓄えられていた │ │ カルシウムイオンが │ │ 一斉に放出されます │ │ これがきっかけになって │ │ 心筋細胞が収縮します │ │ しかし心筋細胞が、 │ │ それぞれバラバラに収縮したのでは │ │ 効率よく血液を送り出すことは │ │ できません │ │ 収縮のメカニズムCG │1042│Q 心臓はまず上半分の心房が収縮し │ │ 次に下半分の心室が収縮します │ │ │1054│Q この収縮のリズムを │ │ 作り出しているのは洞房結節 │ │ (とうぼうけっせつ)から出る │ │ 電気信号です │ │ 信号は心房に広がったあと │ │ 途中で時間差が作られて │ │ 心室に伝わります │ │ │1111│Q 赤い部分が左心室 │ │ 白い部分が右心室です │ │ │1122│Q 電気信号を受け取ると │ │ 細胞は興奮します │1128│Q 輪切りの断面をみると │ │ 興奮は心室のまわりを │ │ 内側から外側に向かって広がり │ │ 外側から先に醒めていきます │ │ 心筋細胞は、内側の細胞ほど │ │ 長く興奮しているのです。 │ │ 同じ心筋細胞でも │ │ このように興奮の長さが │ │ 微妙に違うことによって │ │ 1回の収縮の中で │ │ その強さを柔軟に変化させています │ │ │1207│Q 微妙にタイミングをずらしながら │ │ 信号を送ることによって │ │ 心臓はスムーズな収縮の繰り返しを │ │ 行っているのです │ │ │ │ 1219 ┌────────────────────────────────┐ │ │ └──────────┬──┬──────────────────┘ ハルさんUP │2131│Q この男性、ジェフリー・ハルさんは ハルさん〜画 │ │ 心臓の移植手術を受けました │ │ 自分の心臓を取り出し │ │ 他の人から心臓を │ │ 提供してもらったのです │ │ 2S │2144│Q ハルさんと奥さんのふたりに │ │ 心拍数などを測る │ │ 心電計をつけてもらいました │ │ 心電計 │2156│Q ハルさんの心拍数はいつも │ │ 95〜6で変わりません │ │ 心電計 │2207│Q 奥さんの心拍数は60台です │ │ 2S │2215│Q 急に立ち上がると │ │ 上半身の血液が不足します │ │ それを補うために │ │ 心臓は心拍数を増やします │ │ 心電計 │2225│Q 奥さんの心拍数は │ │ 瞬間的に96まで増えました │ │ しかしハルさんは95のまま。 │ │ これはハルさんの心臓に │ │ 神経がつながっていないためです │ │ CG │2241│Q 神経がつながっていないと │ │ なぜすぐに │ │ 心拍数が増えないのでしょうか │ │ │2249│Q 交感神経という神経から │ │ 刺激が来ると、神経の末端から │ │ ノルアドレナリンという物質が出て │ │ 心拍を速めます │ │ 心筋細胞 │2306│Q 心筋細胞にノルアドレナリンを │ │ 加えてみます マルチ画面 │2313│Q 右上の画面がノルアドレナリンを │ │ 加えたあとです │ │ 収縮のリズムが2倍に │ │ 速くなっています │ │ 自転車をこぐハルさん │2332│Q 一方、副腎という内臓が分泌する │ │ アドレナリンというホルモンも │ │ 心拍を速める働きをします │ │ ホルモンは血管を通って │ │ ゆっくりと情報を伝えます │ │ │2341│Q ハルさんが自転車をこぎはじめて │ │ およそ1分半。 │ │ 心拍がゆっくりと上がりました │ │ アドレナリンが血液によって │ │ 心臓に運ばれるまで │ │ 1分半かかったのです │ │ CG │2400│Q 心臓にはもう一つの神経、 │ │ 副交感神経もつながっています │ │ 副交感神経からは │ │ 心臓をリラックスさせる物質 │ │ アセチルコリンが分泌されます │ │ この2種類の神経とホルモンが │ │ バランスを取り合いながら │ │ 身体の状態によって │ │ 一瞬一瞬の心拍数を決めているのです │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 毛細血管 │2424│Q こうして、身体中に張り巡らされた │ │ 血管の中では、心臓の動きによって │ │ 血液の流れる量や早さが │ │ 必要に応じて変化しています │ │ 細動脈の交感神経 │2441│Q この血液の流れは、 │ │ 心臓だけでなく、血管でも │ │ コントロールされています │ │ 交感神経は細い動脈にも │ │ 張り巡らされていて │ │ 血管の太さも調節しています │ │ 神経とホルモンの働きによって │ │ 心臓は必要なところへ │ │ 必要なだけの血液を │ │ │ │ 2510 │ │