NHKジュニアスペシャル 第19回「なめらかな連係プレー 〜骨・筋肉」
VTR台本 PD:杉山 優
┌───────────────────────────────┐ │VTR1 宇宙飛行士の無重力体験 │ └────────┬──┬───────────────────┘ スカイラブ打ち上げ│0231│Q 1973年、宇宙実験室 │ │ スカイラブの打ち上げです。 │ │ │ │ スカイラブは人間を月に送った │ │ アポロ計画のあとを継いで │ │ 人間が長期間、宇宙に滞在し │ │ 様々な宇宙実験を │ │ 行うというものでした │ │ 宇宙のスカイラブ │0251│Q 地球からおよそ430キロ スカイラブ内部 │ │ ここは地球の引力から解き放たれた │ │ 無重力の世界です │ │ 実験の様子 │0322│Q 無重力状態の中で人間の身体が │ │ どのように変化するのか │ │ 宇宙飛行士たちから、 │ │ 様々な医学データが集められました │ │ 船外作業 │0339│Q 宇宙実験室、スカイラブでは │ │ 3チームのクルーが様々な実験に参加し │ │ 一番長く滞在したクルーは 雲の流れ │ │ 84日間、宇宙で生活しました │ │ 帰還船 │0358│Q 宇宙飛行士たちが │ │ 無重力の生活を終えて、 │ │ 地球に戻ってきました │ │ 着水 │0405│Q スカイラブの帰還です │ │ 宇宙飛行士船外へ │0414│Q 地球に戻ってきた宇宙飛行士、 │ │ 立ち上がるときに身体が揺れて │ │ ちょっと不安定です │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │0418│Q 一つ一つの動きがだるそうで │ │ とてもぎこちなく見えます │ │ 地球に戻ってきたとき、 │ │ 宇宙飛行士たちは │ │ 階段を下りることさえ辛いといいます エレベーター │ │ の宇宙飛行士│0430│Q わずかな高さでも │ │ エレベーターが必要です │ │ 健康で丈夫なからだの │ │ 宇宙飛行士たちも宇宙から帰還すると │ │ 動きがぎこちなくなるほど │ │ 身体に変化があらわれるのです │ │ 0447 │ │ ┌───────────────────────────────┐ │VTR2 筋肉が動くメカニズム │ └────────┬──┬───────────────────┘ 人体 │0745│Q 全身を自在に動かすことができるのは │ │ 身体を支える骨とそれを動かす筋肉が │ │ なめらかに連携しているからです。 │ │ レントゲン映像 │0755│Q 筋肉が骨を動かす、 │ │ 基本的な仕組みを見てみましょう。 │ │ 骨を動かす筋肉は │ │ 1本の骨に2本が │ │ ペアになってついています。 │ │ 1本の筋肉が縮むとき │ │ ペアになった、もう1本の筋肉は │ │ 伸びる仕組みになっています │ │ 上腕 │0810│Q 今度は筋肉が縮む仕組みを │ │ コンピュータ・グラフィックスで │ │ 見てみましょう │ │ CG │0818│Q 筋肉が骨とつながる部分は │ │ アキレス腱のような腱になっています │ │ 筋肉の断面を見ると筋肉は │ │ いくつもの繊維の束、 │ │ 筋繊維でできています │ │ │0839│Q この繊維の束、筋繊維は │ │ 更に細い筋原繊維という │ │ 繊維でできています │ │ │0850│Q 筋原繊維の内部には2種類の蛋白質が │ │ 規則正しく並んでいます │ │ │ │Q 2種類の蛋白質は │ │ お互いに間隔を開けるようにして │ │ 交互に並んでいます │ │ │ │ │ │ │ │ │0922│Q 2種類の蛋白質は │ │ 赤い色で示した方がアクチン、 │ │ 白で示した方はミオシンといいます │ │ 筋肉の収縮には │ │ このアクチンとミオシンが │ │ 重要な役割を果たしています │ │ │0938│Q この蛋白質、アクチンとミオシンが │ │ 互いに働き合うことによって │ │ 筋肉の収縮が起こります │ │ 海 │0946│Q 地球に生きる生き物は │ │ 3千万種にのぼるといわれます │ │ アクチンとミオシンは │ │ その大部分の生き物に共通する │ │ 蛋白質です │ │ コケムシ │0954│Q 顕微鏡でようやく見える │ │ この小さな生き物、 │ │ 水中で岩などに貼り付いている │ │ コケムシが、獲物を捉える運動も │ │ アクチンとミオシンの作用です │ │ フクロワムシ │1018│Q こちらはフクロワムシ。 │ │ 原始的なこれらの生き物の運動も │ │ アクチンとミオシンの働きなのです │ │ │ │Q アクチンとミオシン、 │ │ 2つの蛋白質はどうやって │ │ 筋肉を動かしているのでしょうか │ │ 上腕 │1034│Q 筋肉には神経細胞から │ │ 刺激が伝えられます CG │ │ 神経からの刺激が筋肉に │ │ 伝わってきました │1044│ 刺激は筋肉を造る束、 │ │ 筋繊維の表面を伝わっていきます │ │ │ │ │ │ 筋繊維 │1103│Q 伝わり方を拡大すると刺激は │ │ 筋原繊維をとりまく膜に │ │ 伝わっていることが分かります │ │ 膜の中にはカルシウムイオンが │ │ 蓄えられています │ │ 拡大CG │1110│Q 刺激が来るとそのカルシウムイオンが │ │ 放出されます │ │ カルシウムイオンの放出が │ │ きっかけとなって │ │ 筋肉を構成する2つの蛋白質 │ │ アクチンとミオシンが │ │ 共同で筋肉を収縮させます │ │ アクチンとミオシン│1145│Q 筋肉を動かすアクチンとミオシン。 │ │ 2種類の蛋白質は │ │ カルシウムイオンがあって │ │ はじめて筋肉を収縮させることが │ │ できるのです │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 1153 ┌───────────────────────────────┐ │VTR3 骨のメカニズム │ └────────┬──┬───────────────────┘ 重量挙げ │1816│Q 人間の身体を支える骨。 │ │ ただ体重を支えるだけでなく、 │ │ 時には体重の何倍もの重さに │ │ 耐えることができます。 │ │ │ │ 大きな力に耐える骨。 │ │ まずはその構造を見てみましょう │ │ 大腿骨 │1842│Q 太ももの骨、大腿骨を通して │ │ その強さの秘密を探ってみます │ │ CG合成 │1851│Q 大腿骨に体重が加わったときの様子を │ │ 分析してみました │ │ 赤い線が示すように │ │ 斜めの方向に力が集中しているのが │ │ わかります │ │ 力が集中している所に筋が見えます。 │ │ これは、骨を補強している支えです │ │ この支えは骨梁と呼ばれています │ │ 1本の棒のように見える骨には │ │ このような構造が秘められているのです │ │ 空洞の断面 │1909│Q 更に骨の中心部は空洞になっています │ │ 鉄材の比較 │1918│Q 同じ長さ、同じ重さの鉄の棒と │ │ 鉄のパイプで強さを比較してみます │ │ グラフ │1941│Q 棒よりも骨と同じように │ │ 内部が空洞になっている │ │ パイプの方が2倍の力に │ │ 耐えられることがわかりました │ │ 骨の断面 │1955│Q 軽くて丈夫な骨、 │ │ 今度は更に細かな構造を │ │ 顕微鏡で拡大していきます │ │ │ │ 顕微鏡写真 │2000│Q 木の年輪のような構造が見えます。 │ │ これを作っているのは │ │ リン酸カルシウムなどの │ │ 硬い物質です │ │ │ │Q 年輪の構造を更に拡大してみます │ │ 骨細胞 │2010│Q この点の一つ一つは、骨細胞です │ │ 骨細胞は血液と骨の間で │ │ カルシウムなどを移動させている │ │ 細胞です │ │ 骨細胞は一つ一つが │ │ 多くの突起をのばして │ │ 隣の細胞と連絡を取り合っています。 │ │ そして、この突起が │ │ 血液と骨の間で、カルシウムなどを │ │ 行き来させる通路になっています │ │ 一見、無生物のように見える │ │ 丈夫な骨の中には、たくさんの細胞が │ │ 生きているのです │ │ 頭蓋骨 │2040│Q しかし、この丈夫さも │ │ 地球上に働く重力がないと │ │ 維持していくことはできません │ │ 元宇宙飛行士写真 │2051│Q 84日間の宇宙生活から帰還した │ │ 宇宙飛行士の身体は │ │ 骨も筋肉も無重力の影響で │ │ とても弱くなっていました │ │ 走り │2103│Q 地球に戻ってから、 │ │ 弱くなった体を鍛えるために │ │ トレーニングを続けました。 │ │ その結果筋肉は数カ月で │ │ 元の力強さを取り戻しましたが │ │ 骨はなかなか元に戻りませんでした │ │ │ │ │ │ │ │ 骨UP │2117│Q 宇宙にいる間に骨からは │ │ 5%のカルシウムが失われました。 │ │ その結果、骨梁と年輪構造が少なくなり │ │ 骨は弱くなってしまいました │ │ │ │ 一体、骨に何が起こったのでしょうか │ │ 破骨細胞 │2143│Q 実は骨を溶かす細胞がいるのです │ │ これは骨を溶かす、破骨細胞が │ │ 骨を溶かしていく様子です │ │ 骨の中には骨細胞の他に │ │ こんな細胞もいるのです │ │ 電子顕微鏡写真 │2208│Q 電子顕微鏡で見ると │ │ 骨を溶かしているのがよくわかります │ │ │ │Q 更に骨を溶かす細胞と反対に │ │ 骨を作る細胞もいます │ │ アニメーション │2219│Q 破骨細胞が、 │ │ 骨の中のカルシウムを溶かすと、 │ │ その後に、骨を作る骨芽細胞が │ │ 新しく、年輪構造と支えである骨梁を │ │ 作り上げます │ │ │ │ 破骨細胞によって溶かされた │ │ カルシウムは、骨細胞の突起を通って │ │ 血液に運ばれます。 │ │ 反対に血液から骨細胞の突起を通って │ │ 運ばれてきたカルシウムは │ │ 骨芽細胞によって │ │ 新しい年輪構造と骨梁を │ │ 作り上げるのです │ │ このように2種類の細胞が │ │ 溶かしては作るという作業を │ │ 繰り返しながら、 │ │ 骨は、その強さを保っているのです │ │ │ │ │ │ │ │ しかし、このバランスが崩れると │ │ 先程の宇宙飛行士のように │ │ 骨のカルシウムは失われてしまいます │ │ 年輪構造 │2256│Q ではなぜ、宇宙では │ │ 2種類の細胞のバランスが │ │ 崩れてしまうのでしょうか │ │ スカイラブ内部 │2308│Q その理由の一つは │ │ 宇宙の、無重力という環境でした │ │ │ │Q 地球の重力のもとでは、 │ │ 運動をすると骨には力が加わり、 │ │ それが刺激となって、骨芽細胞が │ │ 新しい骨を作ると考えられています │ │ 刺激の役割実験 │2324│Q 骨に刺激を与えるとどうなるのか │ │ 実験してみました │ │ │ │Q 骨の両端にわずかな電流も捉える │ │ 電極をセットして、 │ │ 骨に刺激を与えてみます │ │ │ │Q 刺激を加えると、 │ │ 微かな電気が生じました │ │ その電気が信号となって │ │ 骨を作る骨芽細胞を活発に働かせると │ │ 考えられています 大腿骨 │ │ 無重力の宇宙では、運動しても │ │ 骨には、あまり刺激が伝わりません │ │ そのために │ │ 骨芽細胞が適切に働かず、 │ │ 骨は弱くになりました │ │ 骨は、地球の重力の元で │ │ 破骨細胞と骨芽細胞によって │ │ 新しく作り替えないと │ │ 元通りにはならないので │ │ 筋肉よりも回復に時間がかかるのです │ │ │ │ 2425