NHKジュニアスペシャル 第4回「奇岩にひそむ大気の謎」
VTR台本 PD:鈴木正史
VTR1 前回までのダイジェスト ○地球CG 14 :Q 新しく見つかった第2の地球を人間が住みや : すい星にするため、ボクたちは、地球のことに : ついて調べてきました。これまでに判ったこと : を少しまとめてみましょう。 : ○太陽系の誕生 5 :Q 46億年前。生まれたばかりの太陽系の中で、 : 宇宙を漂っていたたくさんの微惑星がぶつかり ○微惑星 5 : はじめます。その中から、一つの星がグングン : と大きくなりはじめました。地球誕生です。 ○微惑星の衝突 4 : : ○原始地球 9 :Q 微惑星を吸い寄せながら大きくなる地球は、 ○微惑星落下、マグマ噴出 3 : 衝突によって溶けた微惑星のために、熱く煮え ○マグマオーシャン 9 : たぎったマグマの海に覆われていました。 : ○雷雲 6 :Q やがて、空気中にたまった大量の水蒸気が雨 ○豪雨 6 : となって降り始めました。ものすごい大雨は、 ○洪水、地表を舐める 8 : 地球に大洪水を引き起し、巨大な海をつくりあ : げていったのです。 : ○太陽系・惑星配列 10 :Q 熱くもなく、寒くもなく、ちょうどいい太陽 : からの距離。それが、地球にだけ豊かな海をも ○海・キラメキ 5 : たらしたのです。 : ○火山噴火 10 :Q 豊かな海を持った地球ですが、その内部には : 生まれた当時のすごい熱がため込まれていまし : た。火山の噴火などによって、地球はその熱を ○引き裂かれた大地 11 : 外へ逃がそうとします。そのエネルギーは巨大 : な大陸を引き裂くほどです。絶えず動きつづけ : る大地。地球は、生きている星だったのです。 : ○ストロマトライト 19 :Q そして、私たちが生きていく上で必要な酸素 : が生まれました。二酸化炭素と窒素ばかりだっ : た地球に酸素を生み出したのは、海の中に住む ○大気圏 6 : 小さな生物たちでした。生物たちは何億年もの : 時間をかけて、地球を豊かな酸素をもった星へ ○地球回転CG 9 : 変えていったのです。 : VTR2 地球温暖化の仕組み : ○地球の大気圏 14 :Q 私たちの地球を取り巻く大気は酸素や窒素、 : そして二酸化炭素によって作られています。こ : の内の二酸化炭素がすこしづつ、でも確実に増 : えてきているんです。 : ○マウナ・ロア観測所 18 :Q 太平洋の真ん中、ハワイにあるマウナ・ロア : 観測所。ここでは、大気中の二酸化炭素の微妙 : な変化を長年に渡って、観測してきました。 ○観測所・内部 5 : : ○プリンター・大気濃度算出 28 :Q 観測を始めた1958年には0・03%だっ : た二酸化炭素の濃度は、1995年には0.0 : 36%に達し、21世紀半ばには0.05%に達 : すると考えられているのです。 : :Q 大気の中では、ほんの少しの量ですが、これ : がちょっと増えたり減ったりするだけで、地球 : 全体の気温が変化するほど、大切な役割を持っ : ています。 : ○アニメ 49 :Q 太陽の光は、地球の大気を素通りして、地面 : をあたためます。そして、夜になると、その熱 : は宇宙へと逃げていきます。 : :Q ところが、大気中にたまった二酸化炭素は、 : 宇宙へと熱を逃がさないようにする働きをもっ : ています。これを「温室効果」といいます。 : :Q 温室効果が適当に働いているおかげで、地球 : は程よいあったかさでいられるのです。ですか : ら、二酸化炭素が増えてしまうと、それだけ気 : 温が上昇し、地球の温暖化を進めてしまうこと : になってしまうのです。 : ○ニューヨーク水没 25 :Q もし、このまま二酸化炭素が増えつづけると : 21世紀の半ばには気温が2〜3度上昇すると言 : われています。その結果、近い将来に北極や南 : 極の氷が溶けて、世界中の海沿いにある街は海 : に沈んでしまうかもしれないんです。 : :Q 大気中の二酸化炭素のわずかな変化だけで、 : 地球の穏やかな環境はたちまち危機を迎えるこ : とになってしまうのです。 : VTR3 大地に消えた二酸化炭素 : ○原始大気・マグマオーシャン11 :Q 地球が生まれたばかりの頃、大気には今の20 : 万倍もの二酸化炭素が含まれていたと言われて : います。 : ○地球の大気圏 9 :Q しかし、今の大気に、そんなに大量の二酸化 : 炭素はありません。一体、何処へ消えてしまっ : たのでしょうか。 : ○桂林ドリー 22 :Q 中国の桂林には、不思議な山々が広がってい : ます。桂林を流れる河の両岸、百キロに渡って : 奇妙な景色がまるで絵巻物のように次から次へ : と続いています。 : ○桂林・山肌UP 18 :Q 遠目には美しく見える桂林の山々も、近づい : てみると、灰色のゴツゴツした岩で出来ている : ことがわかります。 : ○桂林・山肌CU 15 :Q この岩は、石灰岩です。石灰岩はコンクリー : トやセメントの原料になるものです。桂林の辺 : りは世界でも有名な石灰岩地帯だったのです。 : : :Q この石灰岩の中に、大気の謎を解く意外な手 : がかりが隠されていました。 : ○砕石UP 10 :Q ちょっとした実験をしてみましょう。 : ○ビニールに砕いた石を入れる14 :Q 石灰岩に塩酸をかけてみることにします。実 : 験をスムーズに行うために、石を細かく砕いて : おきます。 : ○塩酸を注ぐ〜反応 16 :Q 塩酸を注ぐと、たちまち石灰岩が激しく泡立 : ちはじめました。 : : ○反応UP〜膨らんだビニール16 :Q 激しい反応は2〜3分続きました。そして、 : ビニール袋が大きく膨らみました。気体が発生 : したのです。 : ○ロウソク入れる 9 :Q 火の付いたローソクをそっと近づけると、炎 ○ロウソクに気体を浴びせる 14 : が消えてしまいました。発生した気体は、実は : 二酸化炭素だったんです。 : :Q 握りこぶし大の石灰岩を完全に溶かすと、何 ○ロウソクに二酸化炭素かける 7 : と40リットルもの二酸化炭素が発生します。 : ○ロウソク消える 7 :Q 石灰岩という石は、二酸化炭素が姿を変えた : ものだったのです。 : ○桂林パン 12 :Q 大石灰岩地帯、桂林。このそそりたった山々 : の中には大量の二酸化炭素が閉じ込められてい : たのです。 : ○中国全体地図 24 :Q この桂林の他にも、中国には広い範囲に渡っ : て、石灰岩がたまっています。 : :Q 白く塗った部分が、石灰岩地帯。中国全土の : およそが石灰岩で覆われています。その広さ : は、日本の面積の5倍にもなります。 : ○石林1 11 :Q 石灰岩が集まる中国の南西部には、桂林の他 : にも石灰岩が作りだす、不思議な景色が広がっ : ています。 : ○石林2 18 :Q 石の林、石林。その名の通り、高さ2〜30 : メートルの石灰岩の柱が、ニョキニョキと立ち : 並んでいます。 : ○石林3 38 :Q 石灰岩は中国だけでなく、地球上のあちこち : に広がっています。 : : :Q もし、地球上にある全ての石灰岩を、二酸化 : 炭素に戻したとしたら、その量は今の20万倍近 : くになります。それは地球が生まれた頃の二酸 : 化炭素の量とほぼ同じです。 : : :Q 大昔の大気に含まれていた、大量の二酸化炭 : 素は、石灰岩に姿を変えていたのでした。 : Vインサート 桂林の出来方について : ○アニメーション 63 :Q 今からおよそ4億年前。桂林の辺りは、熱帯 : の海でした。その海底に石灰岩が分厚くためこ : まれていました。 : :Q やがて海底はゆっくりと持ち上がり、石灰岩 : が地上へと現れることになります。 : :Q 雨水が割れ目に沿ってしみ込み、石灰岩を溶 : かし始めます。 : :Q 当時の桂林は南の島のような気候でした。大 : 地に降り注ぐ大量の雨は、石灰岩を猛烈な勢い : で溶かしていきます。 : :Q 水という自然のノミは、何千万年という時間 : をかけてゆっくりと、しかし確実に石灰岩をけ : ずっていきました。 : :Q 桂林の山々は、こうして今から200万年前 : に出来上がったのです。 : VTR4 珊瑚礁に大気の謎を追え! : ○グレートバリアリーフAS 12 :Q オーストラリアにある世界最大の珊瑚礁、グ : レートバリアリーフ。二酸化炭素を石に変えて : いたのは、意外にも珊瑚礁に住む小さな生物た ○魚群 8 : ちでした。 : ○巨大ハタ 9 :Q 珊瑚礁では、いろんな種類の生物たちが互い : に協力し合い、競争し合いながら、くらしてい : ます。 : ○ウツボ 8 :Q グレートバリアリーフにいる生物は、魚だけ ○大型ナマコ 14 : でも二千種類に及びます。 : ○サンゴ表面 18 :Q こうした海の生き物たちの住処となっている : 珊瑚礁。私たちが普通、「サンゴ」と呼んでい : るのは、実際には小さなサンゴ虫が集まってで : きたものなのです。 : ○海中の巨大サンゴ 23 :Q これは、数百万匹のサンゴ虫によって作られ : ています。海には、大気の60倍もの二酸化炭素 : が溶け込んでいます。サンゴは海水に溶けてい : る二酸化炭素やカルシウムを材料にして、石灰 : 質の骨格を作っていくのです。 : ○波うつサンゴ 11 :Q サンゴの表面が、白く波うっています。サン : ゴ虫が触手を伸ばしているのです。 : ○サンゴ表面UP 14 :Q サンゴはいわば、石灰質のカラを持った小さ : なイソギンチャクのようなものです。 : ○サンゴ・捕食 9 :Q 小さな生物、サンゴ。この強い生命の力が、 : 二酸化炭素を石に変えてきたのです。 : ○サンゴ産卵 21 :Q サンゴの産卵です。 : : : ○産卵1 11 :Q まるで、宇宙のリズムに合わせるかのように : サンゴの産卵は、満月の後の一週間に集中して : います。 ○産卵2 13 : : ○産卵3 21 :Q 二酸化炭素を石に変える第一歩は、こうして : 始まります。 : ○動き回るサンゴ幼生 7 :Q 大きさは一ミリから二ミリ。この一匹一匹が ○グルグルサンゴ幼生 13 : あの大きなサンゴの塊に成長する可能性を秘め : ているのです。 : ○微速度撮影 67 :Q 特殊なカメラで捉えたサンゴの成長の様子で : : す。最初の数時間は目立った変化はあまりあり : : ません。 : : : :Q やがて、白い小さな粒が点々と現れ始めまし : : た。 : : : :Q 時間がたつにつれて、粒子の集まりが白い筋 : : となって放射状に伸び始めます。白い粒子は、 : : 炭酸カルシウム、つまり石灰岩の材料となるも : : のです。 : : : :Q この小さな生物が、海水に溶けている二酸化 : : 炭素とカルシウムを使って、自分の骨格をつく : : りはじめたのです。 : : : :Q 48時間後、サンゴの最初の骨格が出来上がり : : ました。角度を変えて見ると、石灰質の骨格が : : 成長して、盛り上がってきた様子がよくわかり : ます。 : ○サンゴ成長のアニメ 44 :Q 最初の骨格を作り終えたサンゴは、今度は別 : の方法で増えはじめます。 : :Q まるで、芽が出るように、すぐ隣に新しいサ : ンゴ虫が出来、それがまた自分の骨格を作りは : じめます。 : :Q 次々と増えていくたびに、石灰質の家は上へ : 横へと広がり、やがて大きな塊へと成長してい : きます。 : ○炭素循環アニメ 14 :Q こうして、石灰質の山が出来ていくと、その : 分だけ、海水中の二酸化炭素が使われたことに : なります。すると、それを補うために大気の中 : にある二酸化炭素が、海へと溶け込みます。 : : ○珊瑚礁海中ドリー 35 :Q サンゴはまさに、二酸化炭素を石に変えてい : るのです。 : :Q 二酸化炭素を石に変える生物は、サンゴだけ : ではありません。珊瑚礁に住む貝の仲間やプラ : ンクトン、藻の一種なども石灰質を作りだしま : す。これらの生物が作りだした石灰質や死骸が : セメントのようにサンゴを固め、一つの大きな : 岩に変えていくのです。 : ○グレートバリアリーフAS 4 :Q 珊瑚礁。それは石灰岩の製造工場です。 : : ○音波探査シミュレーション 10 :Q 八千年かかって、成長した珊瑚礁。サンゴの : 壁の高さは50メートルあります。その下には完 ○グレートバリアリーフAS 22 : 全に岩となってしまった石灰岩が延々と続いて : います。 : もし、グレートバリアリーフから海をはぎ取 : ったとしたら、高さ2〜3百メートル、長さが : 2千キロにも及ぶ石灰岩の大山脈が現れるはず : です。それは生物が作り上げた二酸化炭素の大 : 貯蔵庫でもあるのです。 :