マグマは3相共存


 通常、われわれは火山岩からマグマの性質を議論します。玄武岩の火山だから、粘性が低くて、盾状火山を作っている・・・という具合に。

 けれども、よく考えてみると、固結した火山岩の組成のみの情報で、もとのマグマの性質を論じることはできません。

 地表付近に達したマグマは、含まれている揮発性成分が発泡して、それが狭い意味での噴火の原因になります。 マグマには、火山ガスとして放出される気体成分がもともと含まれているのです。

 溶岩の破片を調べると、多くの場合、火山ガスが抜けた穴がたくさん空いています。地下の高圧条件から、地表の低圧条件にさらされて、 さらに温度低下と共に火山ガスが追い出され、急速に発泡した証拠です。

 火山ガスの成分は、水蒸気を主として、少量の二酸化炭素や二酸化硫黄、窒素などからなります。これは、場所によって異なります。

 マグマ中には、固体物質も存在します。地下でゆっくりと冷却が進行する過程で、高温で晶出する鉱物の結晶が成長しています。 これもマグマの噴出と共に地表に運ばれます。冷え固まった火山岩の中で、斑晶とされる鉱物の結晶がそれです。

 斑晶が増加すると、マグマの性質も変わります。温度低下にともなって粘性が増加しますし、結晶化の進行が進んだところでは、 揮発性の成分も増加することがあります。

 液体としてふるまうマグマの中には、気相や固相の物質も含まれています。それらがマグマの粘性や、 さらには噴火の形式を左右するという上で、非常に大きな役割を果たしているのです。


 2000.5.27 萩谷 宏 

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