オフィオライト


 例えば,海をはさんだ2つの大陸近くが接合するとします。一番わかりやす いのは,あいだにプレートの収束境界=沈み込みがあって,2つの大陸が衝突 するような場合を考えます。

 そうすると,2つの大陸の間にあった海洋地殻が、大陸の衝突の際に一部が 沈み込まずにのしあげて(衝上して)しまう場合がときどきあります。

 こうして露出した海洋地殻の岩石を,まとめてオフィオライトと呼びます。 つまり、オフィオライトというのは岩石名ではなく, 数十km,数百km単位の海洋地殻起源の岩石の露出全体をさす言葉です。

 海洋地殻の構造については、実際に海底に穴を掘って調べることが行われていますが、 このように陸上に露出した、過去の海洋地殻を調べることでも、 その内部構造が詳しくわかるというメリットがあります。

 歴史的には、プレートテクトニクスが確立した1970年頃に、 このようなオフィオライトの存在が認識され、注目を集めました。 特にキプロス島のトルードス・オフィオライトや、 オマーンのセマイル・オフィオライト?が有名です。

 模式的なプレートテクトニクスの枠組みでは、海洋地殻は大西洋や太平洋に見られるような中央海嶺で、 プレートの上部をつくるものとして生産されます。

 トルードス・オフィオライトも、最初はそのような中央海嶺でつくられた海洋地殻を起源とするものと 思われていました。しかし、その頃東京大学から州立ニューヨーク大学に移った都城秋穂が、 岩石の化学組成から、中央海嶺ではなく島弧周辺の縁海の場でつくられたものではないか、 と指摘し、大論争が起こりました。

 現在では、オフィオライトと呼ばれるものには様々な起源があるものと考えられています。 中央海嶺起源のものもあれば、縁海・背弧海盆起源のものもある、それ以外のものもある、 という認識です。

 オフィオライトは、沈みそこねて大陸地殻にはさまったり、のしあげて、 マントルに戻りそこねてしまった不運な海洋地殻であるといえます。そのような事故は海洋地殻全体からすると ごく一部ですが、事故だけに相手を選ばないところがあって、 様々な海洋地殻がオフィオライトになりうる可能性を持っていると言うことなのでしょう。



石からわかること

indexに戻る