オリストリスの産状 


泥質ホルンフェルス中のオリストリス(変成チャート)(金丸の採石場にて)


 日本列島のかなりの部分を占める、秩父古生層とかつて呼ばれた地層があります。近年この地層はジュラ紀頃の泥の地層(現在は粘板岩〜ホルンフェルス)が本体であり、そのなかに、石灰岩の巨大な岩塊や、玄武岩質岩石、チャートの地層のかたまりが、レンズ状にはさまっていることがわかってきました。地層として連続せず、レンズ状にはさまれたこれらの岩石をオリストリスと呼びます。

ふつう、オリストリスは露頭では見えずに、地質図を書くと地層として連続しない石灰岩や緑色岩(玄武岩の溶岩など)、チャートの分布が出てきてしまって、それを泥岩や砂岩の中に挟み込まれた堆積性の岩塊として認識することが多いのですが、ここでは露頭で産状を一目瞭然に見ることができます。

*オリストリス:泥がちの地層中に、堆積性のブロックとして取り込まれた岩石のこと。大きさは様々で、ものによっては延長数kmのサイズに達することもある。沈み込み帯の前縁部のように、堆積した地層が傾斜の関係で不安定で、海底地滑りで崩れて再堆積する(オリストストローム)ような条件でつくられたものと考えられている。

 昔、こういう一連の地層は、そういうブロック化した石灰岩のなかのフズリナ化石くらいしか時代の決まる化石がわからなかったもので、それで”秩父古生層”という言葉ができたように、みんな古生代のペルム紀頃の地層だと思われていたのです。ところが70年代後半から、チャートや主体である泥の地層から放散虫というプランクトンの微化石が発見されるようになって、それがもっと新しいジュラ紀頃のものであることがわかったのです。時代が合わないからおかしいな、と思って良く見ると、石灰岩は実は異地性のブロックで、一度どこかでできたものが、破片になって泥にはさまっているのがわかったのですね。それで時代が合わないことの辻褄があったわけです。


斜面に露出するオリストリスの変成チャートの露頭。

周囲の泥質岩より堅い岩石なので風化・浸食から取り残され、突出している。地層のかたちをなさずに断片的な、切れ切れの岩体が泥砂質岩にはさまっていることが重要。つまり、ここで堆積した岩石ではなく、再移動したものであることが読みとれる。(採石場側方)


地層と化石のページへ戻る

タイトルページへ戻る