縞状鉄鉱生産の量的見積もりとその地球史的な意義
Estimation on the production rate of banded ironstone. -Role of subducted banded ironstone in early history of the Earth.
萩谷 宏（巣鴨高）
Hiroshi HAGIYA (Sugamo high school)
The production rate of free O2, estimated by the thickness of banded ironstone of Archean to early Proterozoic greenstone belt, is 〜1010kg/year. Banded ironstone deposited on the oceanic plate had been subducted to mantle for 2x109year, and if organic carbon kept to surface, free O2 had been consumed by mantle. The "missing O2" problem can be explained by considering this process, and it suggests that there were widespread photosynthetic activity in the very early stage of earth's history.
地球史前半の海洋における特徴的な堆積物である縞状鉄鉱層は、酸素の少ない大気・海洋の状態の指標であると同時に、酸素放出型光合成生物の出現時期や酸素生産の量的見積もり、地球大気の組成的変遷を考える上で重要な存在である。
縞状鉄鉱の生産量は、これまでは大気・海洋と地殻だけの閉鎖系のモデルで議論され、地表に残された縞状鉄鉱床の時代と規模から、その量や変遷が推定されてきた。しかし、地球史初期から海洋底堆積物を載せたプレートの沈み込みが継続していたことは確実であり、閉鎖系のモデルは現実的ではない。2Gaまでの多数のグリーンストン帯で縞状鉄鉱層がみられるので、これらが沈み込むプロセスにより、鉄イオンと結びついた大量の酸素が継続して表層から除去され続けていた可能性がある。
現在の地球表層に存在する有機炭素の総量に対し、大気中の酸素と酸素の消費者である縞状鉄鉱や硫黄の量が足りず、1019kgに達する”失われた酸素”の問題が指摘されている。各地のグリーンストン帯の地質柱状図から推定した、プレートの沈み込みに伴ってマントルに持ち込まれる縞状鉄鉱の量から、酸素の除去量を計算すると1010kg/year程度と見積もられ、説明可能である。
化石記録から3.5Gaに酸素放出型の光合成生物が現れたと考えられる一方、大気・海洋が2.2Gaまで酸素の多い条件にならなかったという古土壌のデータは、生産された分子状酸素の除去システムとして、縞状鉄鉱のマントルへの沈み込みが継続したことで説明できる。それが超大陸形成などの要因で一時中断することがあれば、酸素の多い表層環境が突然出現することがありうる。
日本惑星科学会秋季講演会
A1: 縞状鉄鉱生産の量的見積もりとその地球史的な意義
B1: Estimation on the production rate of banded ironstone. -Role of subducted banded ironstone in early history of the Earth.
C1: 日本語（本文の言語）
E1: 萩谷／宏（著者）: F1: ハギヤ／ヒロシ
G1: Hagiya／Hiroshi
J1: 巣鴨高等学校
K1: スガモコウトウガッコウ
L1: Sugamo high school
D1: 地球史前半の特徴的な堆積物・縞状鉄鉱は、地球大気の進化を考える上で重要であるが、その生産量の変遷の見積もりは、地表に残された縞状鉄鉱床の規模から推定されてきた。しかし、プレートの沈み込みに伴ってマントルに持ち込まれたであろう縞状鉄鉱の量は、これよりはるかに大きい。現在の地球表層に存在する有機炭素の総量に対し、大気中の酸素と酸素の消費者である縞状鉄鉱や硫黄の量が足りず、1019kgに達する”失われた酸素”の問題が指摘されている。各地のグリーンストン帯の地質柱状図などから推定した、プレートの沈み込みに伴ってマントルに持ち込まれる縞状鉄鉱の量から、酸素の除去量を計算すると1010kg/year程度と見積もられ、説明が可能である。
T1: The production rate of free O2, estimated by the thickness of banded ironstone of Archean to early Proterozoic greenstone belt, is 〜1010kg/year. Banded ironstone deposited on the oceanic plate had been subducted to mantle for 2x109year, and if organic carbon kept to surface, free O2 had been consumed by mantle. The "missing O2" problem can be explained by considering this process, and it suggests that there were widespread photosynthetic activity in the very early stage of earth's history.
M: 地球史、大気、海洋、縞状鉄鉱、酸素、沈み込み
N: Earth history, atmosphere, Ocean, Banded ironstone, O2, Subduction