深成岩が冷え固まるにはどれくらいの時間がかかるか

 2003.2.5/2003.2.21追加


Q:萩谷さんのHPにも書かれていますが、深成岩は「ゆっくり冷えて」できるとしばしば説明されますよね。この「ゆっくり」とはどのくらいの時間なのでしょう?オーダーが分かれば結構ですので、教えて下さい。

A:どこでできるどんな深成岩か、にもよるのですが・・・。

 石材になるような、半径数km以上の岩体であれば、閉止温度の異なる鉱物の放射年代を比較して、例えば丹沢の石英閃緑岩で数百万年のオーダーで冷え固まっていることがわかります。

 島弧の下部地殻のはんれい岩の場合、火山の一生と下部地殻でのマグマだまりの固結が歩調を合わせるとするならば、10−20万年というところでしょう。

 ですから、数十万年から数百万年のオーダーだと思って構わないと思います。例外はもちろんいろいろあるでしょうけど。

Q:なるほど、数十万年から数百万年ですか。(中略)「急に冷えると斑状組織、ゆっくり冷えると等粒状組織」と書いてあると、子供達は急には一瞬、ゆっくりは1日くらいと考えてしまうという話が出たのです。

A:どれくらいで冷えるか、というのは非常に答え方が難しい問題だと思います。地下で固まる場合、地温勾配がありますから、周囲と同じ温度になったというのが冷え固まったという状態とすると、それでも深さ10kmあれば300度くらい、深さ30kmの下部地殻であれば500-600度あるのが普通です。
 そうすると、現在地表に露出して、手に持って調べることのできる深成岩を想定する場合、岩体が上昇あるいは隆起によって上盤が浸食され、地表に現れるまでの時間も含むことになりかねません。
 今回は、そういうことも考慮に入れて、黒雲母と角閃石のK-Ar年代差で、300万年とか500万年、黒雲母の閉止温度が300度くらいですので、地温勾配からみてだいたい周囲と同じ温度、ということを考えて述べました。

 ですから、数十万年から数百万年というのは、大きめに見積もっての年代と思ってください。そう間違ってはいないと思いますけれど。

Q:この、300度や600度の状態でも、マグマの状態ではなく、等粒状組織の石として存在していると考えて良いのでしょうか?

A:はい。岩石の状態です。組成(水などの含有量)にもよりますが、650度から700度程度でほぼ固結すると思っていいと思います。

 例えば下部地殻で600度あっても、固体として地震波のS波がきちんと通るわけですし。(強度的には弱く、やわらかくなっているでしょうけれど)

 ですから、時間スケールの話は、温度と時間のグラフを描いた時に、外挿してこんなもんだろう、と推定した話です。実際上、他に時間目盛りを入れるものがないのです。


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