Q&A

 NHK「科学デジタル質問箱」で、子供たちの質問の一部に答えた原稿の、初期バージョンです。学校放送オンラインのサイトでは、半分以下に圧縮した文章に書き直していますし、いくつか没にしているのですが、せっかく書いた文章がもったいないので、その前の原稿をここに載せます。

 読みやすく、親切になっているほうの文章は、上記サイトでご覧ください。

 2002.3.8 最終更新 萩谷 宏(C)2001-2002


(2002.3.8)「地球のふしぎ」

Q:マグマはどうして赤く見えるのか

A:どんな物体も、その温度におうじた光を発しています。例えば1000度以上 の温度の高い物体は白くかがやき、それより温度が低くなると、黄色から 赤、そして暗い赤になって、さいごには光が目に見えなくなります。マグ マは1200〜800度の温度がありますが、表面からどんどん冷えて、最初白く 光っていた部分も冷えて赤っぽく光る部分が多くなります。

Q:エベレストなどの高い山はどうやってできるか

A:エベレスト(ヒマラヤ山脈)のような高い山は、大陸と大陸がぶつかって いるところにできやすいのです。大陸どうしがぶつかるところでは、地殻 が2枚重ねになるので、高い山ができます。また、2つの大陸のあいだに あった地層がはさまれて、はみ出してきます。エベレストはそうしてはみ 出した昔の海の地層でできています。

Q:静止衛星って止まっているのに落ちてこないの?

A:静止衛星も地球のまわりを回っています。赤道上空約36000kmのところにあ る衛星は、地球の自転と同じ、ちょうど1日に1回地球のまわりを回りま す。そのため、地上から見るといつも同じところに衛星があるようにみえ ます。それで静止衛星と呼ばれているのです。

Q:なんで1年に365日もあるの?

A:地球が自分で回転する自転と、太陽のまわりを回る公転の速度の差で、1 年に365日という日数が決まっています。公転の速度は、太陽系と地球がで きてからほとんど変わっていないと考えられますが、自転は潮の満ち干に よる海水と海底のまさつなどで、だんだん遅くなっています。昔は1日が とても短かったのです。

Q:あと50〜60年後に温暖化が抑えきれないくらい急上昇するって本当?

A:気温や気候の予測は大変むずかしく、大気中の二酸化炭素の増え方から、 そのように計算された研究もありますが、実際にどうなるかはわかりませ ん。逆に、北極周辺で氷が溶けたり、雨が多くなったりすることがきっか けとなり、寒冷化するという可能性も言われています。

Q:スペースシャトルが宇宙に行っても空気の層は破れないの?

A:空気にも重さがあって、地球の重力でひきつけられています。空気の重さ は気圧としてはかることができます。高いところにいくと空気が薄くなる のは、そこより上にある空気の重さが少なくなるからです。ロケットを打 ち上げるときに空気の層(大気)に穴があいても、すぐに自分の重みで空 気が穴を埋めてしまいます。

Q:雲の浮いている理由

A:雲は上昇気流のあるところにうまれます。上昇気流があると、雲をつくる 小さな氷の粒や水滴は、なかなか落ちてきません。また、氷や水の粒が小 さいと、空気抵抗のために落下のスピードがおそいので、落ちてきている ように見えないのも理由のひとつです。

Q:なぜ、南極や北極の氷はとけないのか?

A:南極大陸の氷は、端の方では氷山として海に流れ出てとけたり、表面から 少しずつ蒸発します。雪として毎年新しい氷もたまっていくので、南極の 氷は全体として非常にゆっくりと流れています。一方、北極のある北極海 では、夏にはかなりの氷がとけます。年間を通してみると、氷のとける量 とできる量がほぼつりあっているのです。

Q:地球が回っているのにどうして立っていられるの?

A:地球といっしょに、わたしたちも同じ速度で動いているからです。もし、 地球が回るのを止めたり、あるいは急に回す速度を速めたりすれば、わた したちは立っていられないでしょう。けれども、地球はとても大きいので、 回転を急に変えるのはほとんど不可能なことですから、心配する必要はあ りません。

Q:ダイヤは地球ができるときの働きでできたって本当?

A:宝石の原石として掘り出しているダイヤモンドは、その多くが1.5億年前か ら30億年くらい前に、地下深くでできたものです。地球ができたのは46億 年前で、それよりはずっと新しいものです。しかし、地球ができるよりも 前、太陽系ができた頃の古い年代の隕石の中から、とても小さなダイヤモ ンドが見つかっています。


(2002.1.23)

Q:どうして地球は丸いの?

A:自分の重力で、地球がつぶれているからです。中心に向かって、どの方向からも平等につぶれていくと、丸いかたちになります。

Q:なぜ、陸より海の方が面積が広いの?

A:地球の海の水が、すごくたくさんあるから、というのがひとつの答えです。だから、地球の表面の7割が水をかぶってしまうのです。もうひとつは、陸地になるところは、ほかよりも軽い、花崗岩という岩石が地下にあって、その範囲がたまたま地球の表面の3割くらいしかないから、ということでもあります。


(2001.5.31-6.15)

Q:どうして地球は回っているの(公転)?

A:太陽のまわりを回ることで、地球には遠心力がはたらきます。その遠心力と、太陽と地球のあいだではたらく重力がつりあっているので、地球は太陽に落ちこむことなく、また宇宙の果てに飛んでいくこともなく、同じように回りつづけているのです。宇宙空間には、まさつによって地球の運動をじゃまするものがありません。ですから、地球は46億年前から、ずっと太陽のまわりを、ほぼ同じように回りつづけているのです。

Q:地球の海の広さはどれくらいあるの?

A:地球の表面の70%が海水でおおわれています。地球の表面積は、およそ5億平方キロメートルあります。その70%ですから、およそ3億5000万平方キロメートルになります。これは、日本列島の面積のおよそ1000倍にあたります。 地球の海の広さは一定ではなく、氷河ができたり、海の平均の深さが変化することで、増えたり減ったりします。いまからおよそ2万年前の氷期には、いまより面積が狭くなっていました。

Q:地球には、なぜ土があるのか?

A:土は、細かい砂や泥の粒子と、植物の分解された破片など、生物がつくったさまざまな有機物と、そこに住むバクテリアや菌類、昆虫などさまざまな生物からなります。このような土は、生命が陸上に豊富に存在する、地球にしかありません。月や火星の表面は、土ではなく、砂や岩石の破片などからできています。地球の場合も、植物が陸上で生活するようになる5億年前より昔には、土はありませんでした。地球の土は、陸上に進出した植物がつくったのです。

Q:砂鉄はどうしてできるの?

A:砂のつぶの多くは、岩石がくだかれてできます。ほとんどの岩石には、磁鉄鉱という鉱物が、わずか(1%以下)にふくまれています。その磁鉄鉱という鉱物が、砂鉄の主な成分です。磁鉄鉱は硬くて丈夫な鉱物で、岩石がくだかれても、そのまま残ります。そして砂の中に含まれ、河原や海岸に運ばれていきます。磁鉄鉱は密度の大きい(重い)鉱物なので、流れや引き波に取り残されたりして、黒い砂鉄の集まりをつくります。

Q:どうして日本では鉱物があまりとれないの?

A:明治時代から昭和30年代くらいまでは、日本の各地で鉱山が開発されて、たくさんの種類の資源がとりだされ、それとともにたくさんの種類の鉱物が出ていました。日本は世界の鉱物の標本箱といわれたこともあります。しかし、日本の鉱山は規模が小さく、資源を取り出すのにお金がかかります。外国の大規模な鉱山から安い鉱石が輸入されるようになり、円高も手伝って、日本ではほとんどの鉱山が採掘をやめてしまいました。それで、鉱物もあまりとれなくなってしまいました。

Q:お天気雨はどうして降るのですか?

A:雨は雲でつくられます。雲をつくる小さな水や氷の粒が成長して、大きくなったものが上昇気流で支えられなくなり、地上に落ちてきて雨となります。雨ができる高さはさまざまですが、地上に落ちてくるまでに、数十秒から数百秒の時間がかかると考えられます。このとき、地上付近で風が吹いていると、雨も風にながされてます。たとえば、風で毎秒10m横に流されるとすると、100秒間で1000mも落下する場所が横にずれます。このため、真上に雨雲がないのに、雨が降るという現象が起きます。これがお天気雨です。

Q:地球が滅亡するってホント?

A:地球は滅亡します。しかし、それはずいぶん先のことで、我々はそのことを心配する必要はありません。地球上の生命を支えているのは太陽の光です。太陽は46億年にわたって安定して、光り続けてきました。これから先も、およそ50億年のあいだは、安定して光り続けると考えられています。ただし、時間が経つにつれて、太陽の光は強くなり、地球表面の温度も上昇すると考えられます。何十億年もたつと、海が干上がってしまい、地球は生き物が住みにくい星になってしまいます。さらに、そのあとでは太陽は膨張をはじめ、数百倍の大きさにふくれあがり、地球を飲み込んでしまいます。けれども、それは何十億年も先の話です。

Q:宝石はなぜかがやいているのか

A:宝石になる鉱物は、透明で不純物が少なく、きれいで希少価値があり、丈夫なものに限られます。宝石が輝くのは、宝石の中に入った光が、内部で反射され、カットした面から出てくるからです。このとき、宝石の中に入った光は、プリズムの効果がはたらいて、赤から青のさまざまな色の光に分けられて出てきます。方向によって出てくる光の色が違うので、私たちには宝石から色とりどりの光が出ているように見えます。これが宝石のかがやきの秘密です。


(「海のふしぎ」から)

Q:海にどんどん塩がたまって、塩だけの海にならないの?

A:海には塩分が運び込まれるいっぽう、海が干上がって、塩分が岩塩(がんえん)の層をつくったりして、海から取り去られる塩分もあります。それがつり合っているので、海の塩分はほぼ一定に保たれています。

Q:どうして陸より海の方が面積が広いの?

A:地球の表面が真っ平らだとすると、地球全体は深さ2700mの海におおわれることになります。陸地は、地殻という岩石の層が30-60kmと、海の地域の地殻(5-10km)よりも厚く、そのために土地が高く海面から顔を出しています。地球の陸地は特殊な場所なのです。

Q:どうして魚は海にすんでいるの?

A:およそ5億年前、魚の仲間は海でうまれました。その中で真水にすむ魚があらわれ、さらにヒレを足に変えて、陸上で生活するものがあらわれました。人間も魚の子孫(しそん)といえます。現在の海で繁栄(はんえい)している魚の多くは、かつて、真水にすんでいて、上陸しなかった方の魚の子孫です。

Q:日本で石油がとれないのはなぜ?

A:石油の多くは、厚い地層が広い範囲でたまる、堆積盆地(たいせきぼんち)という場所で、プランクトンの死がいなどからできると考えられています。日本にも石油は日本海側で産出しますが、大陸のように大規模な堆積盆地ができなかったため、少ししかとれません。


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