斜長石という鉱物は、結晶格子にCaの2価のイオンが入るようになっている のですが、しばしばこのサイトに性質(イオン半径、価数)の似た、Srが入り ます。そして、ユーロピウムの2価(酸素が少ないとできやすい)もこのサイ トに入りやすいのです。それで、Eu2+のイオンがたくさんできるような還元的 なマグマの中で斜長石が晶出すると、斜長石にEu2+がたくさん入って、一方、 残りのマグマ中のEuは他の希土類に比べて非常に少なくなります。
じつは、月のマグマオーシャンの存在は、このEu異常で証明されたとも言え るのです。月の高地の斜長岩からは、非常に強いEuの正の異常が、また月のマ ントルをつくると考えられるかんらん岩塊や、そこから由来したと考えられる 玄武岩からは、Euの負の異常が検出されたのです。もともと、希土類の存在度 は隕石(コンドライト)と同じようなパターンを持っていたとすると、ユーロ ピウムを(斜長石で)大規模に分別するようなことを考えなくてはいけない。 それが、月の創世時代のマグマ・オーシャンだろう、というわけです。
#ちなみに、セリウムは地表の酸化状態を判断するのに使われるようですが、 詳しくないので今回は割愛します。
・希土類を含む鉱物 レアメタルと炭酸塩マグマと大陸移動
→モナズ石、バストネス石、ゼノタイムなど。
モナズ石(Monazite)はCePO4と表記される場合が多いですが、実際にはセリウ
ムだけでなくLa,Pr,Nd,Smなどの軽希土(Light Rare Earth Element =LREE)を、
たくさん含んでいます。日本でもかつて福島県の石川地方などで、ゼノタイム
とともに、ペグマタイト鉱物としてよく採集できたようです。
ブラジルの希土類の産地は、カーボナタイトという特殊な火山岩の、風化土
壌の部分に濃集しているものが重要だそうです。カーボナタイトというのは、
なんと炭酸塩のマグマ(Na2CO3,CaCO3,…)が固結したもので、見かけは結晶質石
灰岩(大理石)に似ています。ブラジルのものは白亜紀頃の貫入岩(大西洋の
開裂と関係がある)です。→ちょっと昔の地球の大陸配置(2億年前)
カーボナタイトというのは、そんな、とっても面白い岩石なのですが、この
中にもともと希土類は濃集(普通の岩石の10-100倍)していて、さらに希土類
元素は水に溶けにくいので、その風化土壌中に残留して濃集しているのだそう
です。それを鉱床として掘っているらしい。半径数kmの貫入岩体として入って
いることが多く、衛星写真でも地形に現れる(風化されやすくてへこむ?)の
で探しやすいみたいですね。
元素 存在度(ppm)推定値
La 30
Ce 60
Pr 8.2
Nd 28
Pm -
Sm 6.0
Eu 1.2
Gd 5.4
Tb 0.8
Dy 4.8
Ho 1.2
Er 2.8
Tm 0.5
Yb 3.0
Lu 0.5