元素存在度

宇宙・太陽系の元素存在度

*太陽系は宇宙を知る手がかり

 太陽系はおよそ46億年前、宇宙空間のガスやちりが集合して、太陽を中心にした原始惑星系円盤をつくり、そこで微惑星がつくられ、衝突合体しながら太陽系をつくるさまざまな天体が生まれたと考えられている。太陽系をつくったガスやちりは特殊なものではなく、宇宙空間にありふれたものであったとすれば、太陽系全体でどのような元素があるかを調べることで、宇宙にどの元素がどれくらいあるかを知る非常に重要な手がかりになる。

*太陽系全体の化学組成を知る

 太陽系の質量の99%以上が太陽に集中しているので、太陽の元素の存在度(元素の割合)を太陽の光(太陽大気の吸収スペクトルなど)から調べることがその手がかりとなる。しかし、もともと量の少ない元素は測りにくいので、太陽系の初期につくられ、その後ほとんど変化を受けていないと考えられる隕石の情報も利用される。(→隕石の種類)

 隕石の一種、炭素質コンドライト(CI)の組成は、水素やヘリウムなどをのぞいて太陽大気の元素存在度と非常によく一致することから、特に微量元素の存在度の推定に用いられ、また、地球の材料物質のモデル(全地球の元素存在度)としても参考にされる。

*太陽系の天体

 太陽系を構成する、地球を含めた惑星や小惑星などの天体は、太陽とともに、およそ46億年前、星間雲からほぼ同時につくられたと考えられている。しかし、それらの天体には、木星などのガス惑星、地球や火星のような岩石惑星、あるいは冥王星や彗星のような氷天体といった違いがある。その違いは、これらの天体のつくられるときに、太陽からの距離や惑星の重力の違いにより、元素の選り分けが進行したためにできたと考えられる。

 太陽系の材料となったガスやちりの成分(化学組成)は、もともとはほぼ共通であったと考えられ、それを知ることが、地球全体の化学組成や、地表からは知ることのできない、核や下部マントルの構成元素比を推定することにも役立つ。

*宇宙人は地球人と似ているか

 宇宙の元素存在度が太陽系のそれとあまり変わらないとすれば、他の恒星系で惑星を作る場合、C,H,N,Oといった元素が余って表層に大気・海洋として蓄積されることがグラフから想像される。そうすると、そこで誕生する生命も、炭素化合物を主とする生命体になりそうである。

(グラフの注)

 太陽系、そして地球には、天然に存在する元素はすべて含まれているが、その量は元素の種類によって異なる。H,Heは宇宙の最初に作られ、現在でもHは宇宙で最も多い元素である。恒星内部の核融合によってHe〜Feまでの元素がつくられ、恒星の終末と共に吐き出され、宇宙の中にこれらの元素が増加していく。特にC,N,Oは多くの恒星で作られるので、量が多い。Fe〜Uまでの元素は超新星爆発のエネルギーでつくられる元素であり、量が少ない。Pbがやや多いのは、太陽系形成後にUの放射壊変で増加した分が含まれているためである。

 −「理科年表ジュニア」第二版、丸善(2003)所収原稿を改変。


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 萩谷 宏 2003.3