固溶体 solid solution


 ほとんどの造岩鉱物は、固溶体と呼ばれる性質を持っています。

 鉱物は、その種類によって決まった原子配列のパターンをもっています。これを結晶構造ともいいますが、 その原子配置が決まると、どのような元素がそこに入ることができるか、というのがほぼ決まってしまいます。

 例えば、かんらん石の仲間には、Mg2SiO4というMg-かんらん石(forsterite)がありますが、 SiO44-を単位とする珪酸のネットワークが構造をつくり、そのすき間にMg2+のイオンがはさまるかたちになっています。 かんらん石の結晶構造(neso-silicate)では、Mg2+のイオンは非常にうまく入ることができて、Mg-かんらん石ができます。

 しかし、このすき間はMgにのみ、適合するというわけではありません。Fe2+のイオンも、非常にうまく入る性質があります。 これはイオン半径と価数がMg2+と似ているためです。そこで、実際には天然に純粋なMgかんらん石はみられず、 かならず若干のFe2+イオンをMg2+イオンの代わりに取り込んでいます。

 このとき、結晶構造そのものは、それほど変化していません。しかし、構成している成分が異なるわけですから、 Feのイオンの割合が増加するにつれて、かんらん石の結晶は密度が大きくなり、融点が下がり、緑色が濃くなります。 この場合は条件によって任意のFe-Mgの割合を実現することができて、上記の性質もそれぞれFe-Mgの割合に対応した値を示します。

 このような関係をもつ鉱物を、固溶体とよびます。

 固溶体の重要性は、以下のようなことが言えるでしょう。

1)地球上の岩石・特に深成岩は、複雑な化学組成を持ちながら、そのほとんどがわずか数種類の鉱物で構成されている。これは、 鉱物の中に不純物として微量元素が含まれること、そしてその延長として、岩石を構成する鉱物の大部分が、 固溶体の性質を持つ鉱物であるから、実現できることである。

2)固溶体の化学組成がわかれば、その物理的性質や、形成条件を逆に求めることができる。例えば地質温度計と呼ばれる、 同じ元素の組み合わせを含む複数の鉱物で、その元素分配を調べることで、両者が共存できる温度条件を読みとることができる。 つまり、マグマ(あるいは岩石)の中で結晶が成長した温度がわかる。 場合によっては鉱物が結晶化しつつある状態の圧力(=深さ)や、水の影響などが推定できる場合もある。


石からわかること

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1999.4.29/5.4 H.Hagiya