楯状地・卓状地

 2001.5.10


 楯状地、卓状地は、それぞれshield, platformの訳語だと考えていいと思いますが、 地質の分野では、shieldは、先カンブリア代の花崗岩や変成岩が露出する、 (大陸成長説からすれば)大陸地殻の核となる部分を指し、 platformは、そのような基盤を持ちながらも、 古生代以降の地層が表層を覆っている地域を指している、 ということだと思います。

 したがって、これらの用語は、本来、必ずしも地形による分類だとは思われません。

 日本語の教科書では、「世界の地形」(貝塚爽平編、東大出版会1997)のp10で、貝塚さんの同様の説明があります。

 このような理解は、欧米のいくつかの教科書のplatformの説明を読むと、 どうやらカナダ楯状地とその周辺を説明に用いている場合が多く、 あるいはそれらを模式地として設定された概念なのかもしれません。

 似たような使われ方をする単語に、地塊という単語があります。これはcratonの訳語ではないかと思いますが、 大陸分裂や移動の際に分割されたりせず、一連の地質構造を保持している、古い大陸地殻の領域を指します。 言い換えれば、変動帯(衝突型造山帯)や、海洋で区切られた、ひとつながりの古い大陸地殻の範囲です。

 たとえば、ロシア卓状地は、古生代の地層が覆っている点で、上記の分類のplatformに当てはまるように思います。 ほかに、楯状地の模式地としては、バルト楯状地などがあるようです。

 ただし、世界的にどこでもshieldやplatformが使われているかというと、そうでもなく、 古い地質という意味では、cratonの方が地形的意味が少ないので、 より使いやすく、地質の世界では広く使用されているように思います。


石のたましい

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