出席カードに書き込まれた、質問と意見(要約)に対する回答(6/12火曜1限・土木)

*日本とギリシャの地震は同じか

 ギリシャではヨーロッパとアフリカのプレートの押し合いによる、地殻内の活断層による地震があります。プレートの変形による浅いところでの地震という点で、日本の内陸の活断層地震と似ています。しかし、ギリシャは日本と違って、明確なプレートの沈み込みがなく、深発地震面がありません。

*講義をしているのか、小話をしているのかわかりません

 すみません。まじめな態度で講義いたします。火山学にしても、岩石学にしても、学問は生身の人間がつくるということを伝えたいのですが、うまくいきませんね。

*耐熱服を着ていたらマグマに当たっても平気か? 何度までOKか?

 小さなしぶきなら大丈夫でしょうが、大きなものではけがをするでしょう。温度はわかりません。マグマのしぶきが接触した場合と、接近してマグマからの輻射熱を浴びている場合とで、条件が異なると思います。

*ふつうの服でマグマに近寄ったらどうなるか

 どこまで近寄るかにもよりますが、近寄りすぎれば輻射熱でこんがり焼けます。炭火焼きを想像してください。

*日本(関東)では、あんなにあからさまな地震はないだろう。

 ごめんなさい。何を指して「あからさま」なのかが、わかりません。

*ビデオはわかりやすいが、何を勉強したらいいのかわからない

*試験のための問題集のようなものが欲しい。

 大学で学ぶことは、中学、高校とは違います。点数をとることよりも、現在と、将来の自分にとって意味のあることを学ぶことが大切です。1回の講義を聞いただけで、その内容を全部、深く理解するのは不可能です。各回で紹介している参考書を自分で読んだり、考えたりすることで、理解が深まり、知識が身につきます。その導入部分を僕は提供しているつもりです。大学というところは、自分で努力し学ばなければ何も身につかないのです(と僕は思います)。

 ビデオの内容は、地球人の常識として理解しておいて欲しいことです。とりあえずそれだけでも理解してもらえれば、合格だと思っています。あとは自分の興味に応じて、講義で紹介したものの中から、なにかひとつ調べてみることをすすめます。

*リソスフェア=プレートと考えてしまってよいのか?

 その通りです。

*実際にマグマを見てみたい

 ハワイ島に行けば、実際に流れている溶岩流の近くで見学することができると思います。ただし、充分に気をつけて。

*ビデオを見ながら書くのは暗くて無理。

 これ、気づかなくてすみません。巻き戻して一時停止しながら補足解説を加えるときに、教室の後ろの電灯をつけるようにしましょう。

*富士山は噴火するか。噴火したら東京はどうなるか。(同様4通)

 富士山はかなり大きい火山ですので、噴火する際には、マグマが上昇するにつれて火山性の地震や微動が頻発し、かなりの予兆があって、それから噴火すると思います。現在のところ、そのような噴火にすぐつながるような現象はなく、当分は噴火しないと思います。噴火の被害は、これまでの例では降灰と溶岩流が予想されますが、山体崩壊や岩屑流(岩なだれ)、泥流も注意が必要です。→授業

*マグマのエネルギーはどこからくるのか。そのエネルギーは使い切らないのか。

 マグマのエネルギ−は、地球内部の熱です。その熱は、おもに地球形成時の余熱と、岩石中の放射性物質の壊変に伴う崩壊熱です。地球は保温性がいいので、まだ充分に内部が高温の状態を保っていて、マグマを地表に供給することができます。逆にいえば、冷え切らない程度に、ちびちびと、マグマを出してきたのが地球のうまいしくみです。

*なぜ太平洋の周りに火山が多いのか?

 太平洋プレートは、地球上最大のプレートですが、周囲を沈み込み帯で取り囲まれています。約2億年前のパンゲア−ゴンドワナ大陸の分裂以後、アフリカ大陸を中心に、各大陸をのせたプレートがそれぞれ分裂して間隔が広がっているわけですが、地球の表面積はほぼ一定ですので、その分、どこかが縮小される必要があります。現在、その縮小分を太平洋プレートが担っていると考えてよいようです。その結果、1億年ほどで太平洋プレートは消滅し、そこにふたたび大陸が集合して超大陸が形成されると予想されます。

*ハワイ諸島は今後どれくらいまで大きくなると予想されているか。

 ハワイ諸島では、マグマが地表に供給されることで、島ができ、その面積が拡大していますが、一方で噴火をやめた火山島では、波や雨風による浸食で、少しずつ島は削られ、小さくなっていきます。そうしてみると、ハワイ諸島の海上に突き出た部分の面積は、ホットスポットのマグマの供給が変わらなければ、ほぼ一定であると予想されます。

*(火山島に)人間が住むためには、どのくらいの年月がかかるか。

 これは難しい質問ですね。地形や降水量などにもよるので一概に言えませんが、ものすごくおおざっぱに言って、噴火が停止して100年程度あれば、植生ができて、農業や牧畜が可能になるのではないかと思います。

*マグマを利用して何かリサイクルはできないか。

 伊豆諸島などでは、火山灰や熔岩を材料にして、ガラスや建築用のブロックを作っている例があります。

*ポキートはオスかメスか。

 シリーズ後半の番組の最初には紹介があるのですが、「性別:不明」「年齢:なし」という設定になっていると思います。なお、声を担当しているのは、ベテランの女性声優です。

*板書するときとしないときがあるが、板書した内容は重要か?

 重要です。たぶん。

*睡魔に負けてしまった。

 せっかく朝早くから起きて出席したのですから、負けないように頑張ってください。

*また映画を見たい

 時間的にもう一度見せるのは厳しいです。見せるのであれば、候補としてはアポロ17号の話があるのですが、ちょっと趣旨がずれるかな、と悩んでいます。

*最初の頃に見たトム・ハンクスのVTRの名前を知りたい。

 「人類、月に立つ」(第10回)です。ビデオが発売されているようです。

 

出席カードに書き込まれた、質問と意見(要約)に対する回答(6/12火曜2限・建築)

*ホットスポットでできたハワイ諸島からのびた海山列の先端はどこか?

 カムチャッカ半島とアリューシャン列島の会合点付近です。

*ヨーロッパで地震はあるか

 プレート境界に近い、バルカン半島やギリシャ、トルコなどでは地震があります。それ以外の地域でも、まれに内陸の地震が起きることがあります。

*地震や火山噴火の際の、メディアの説明の仕方が悪い

 新聞記者や、放送記者など、メディアに関わる人にもっと地学の基礎知識を普及する必要があると思っています。もちろん、そういう人の中には、よく勉強していて、専門家も顔負けの知識をもっている人もいるのですが、まだまだ少数です。

*海嶺軸がよくわからない

 わからないというのは、イメージがつかめないということですか? アフリカ大地溝帯の映像をみて、これが海底にあると考えると、ほぼスケールもかたちも同じようなものであるようです。

*プレートと一緒に水分が沈み込む機構がわからない

 →授業で

*アセノスフェアは流動する固体なのか?

 そうです。

*大地の力ってすごい

 僕もそう思います。

*大陸は本当に移動しているのか?それを人間が生きている中で感じることはできるか?

 移動していることは、GPSなどで確認されています。人間が生きている、せいぜい100年の時間スケールでは、年間最大10cmの移動は、100年でも10mにしかなりませんので、実感するのは難しいと思います。

*大陸は何億年後かあとにはまたつながるのか?

 いまの太平洋は縮小し、そこで各大陸が集合して、衝突・合体し、大山脈ができるとともに、かつてのパンゲアのような超大陸ができると予想されています。およそ1億年くらい先のことですが。

*海洋底拡大の発見の理由が面白い(同様3通)

 軍事技術に関係したことは、本にもここまでくわしくは紹介されていないと思います。いろいろ、省略したこともあるのですが、興味があれば参考書を読んでみてください。

VTRが「生命〜40億年はるかな旅」と似通っている。

 授業で使用している、「NHKジュニアスペシャル」は、これまでに放送されたNHKスペシャルなどの大型企画番組の、再構成でVTR部分をつくっています。地球史の授業では「生命 〜40億年はるかな旅」から再構成した回(#8#15)を主につかっています。ですから、見覚えのある映像が出ているはずです。しかし、ナレーションコメントは全部書き直してあり、よりやさしく、かつ、最新の情報を加えて、学問的に正確なものに仕上げているつもりです。

*宇宙は広がっている、というのがわからない。研究している人はいないのか?

 膨張宇宙の問題は、多くの天文学者や理論物理学者が関心をもっているところです。研究している人はいますが、非常に難しい問題です。膨張宇宙の問題は授業で取り上げるのは無理なので、とりあえず、初回に紹介した参考書をご覧ください。

*大学で初めて地学を勉強するので、内容が難しく感じて理解しきれない。

 一度に、100%理解しようというのは無理だと思います。VTRの内容を理解してもらえれば、とりあえず合格レベルだと思います。きちんと理解するためには、毎回紹介している参考書などを読むことを勧めます。自分で勉強することで、講義であえて紹介しなかった部分なども見えてきて、100%以上の理解ができるようになると思います。予習してくるのも効果的です。

*この講義はいつも暑いか寒いかのどちらかなので冷房の調整をしてほしい。(同様1通)

 すみませんでした。できれば学生のみなさんで、冷暖房の調節をしてくださるとありがたいです。僕は講義のことで毎回頭がいっぱいで、気づかないことが多く、さらに暑い寒いの基準がずれているらしいので。

*もう少しゆっくり話して欲しい(同様1通)

 すみません。今後気をつけます。遠慮なく「聞き取れないのでもう一回説明してください」と声をかけてください。

*地球の歴史の中で、人類はちっぽけな存在だから、火山で死者が出てもいったいなぜ悲しむのか、と考えてしまう。

 そうですね。新聞で何人死んだと報道されても、実感がないですね。でも、例えば肉親が火山災害で死ぬことがあれば、やはり冷静ではいられないのではないでしょうか。

*災害に関わる、プレートの具体的な状況を知るには、どのような資料を見ればいいのか?

 現在のデータというよりも、過去の歴史地震の震源や規模のデータを見た方がいいと思うのですが、何が適当なのかは僕もよくわかりません。よい本がないか探し、検討してみます。

*マントルとマグマの違いがよくわからない。成分は同じで、形態が違うということか?

 マントルの岩石が、ある温度以上になって、その一部が融けて(部分融解して)できたものがマグマです。マグマとマントルでは、成分が異なります。マグマには、マントルの岩石中に含まれていた融けやすい成分が、より多く、濃縮して入っている、いわばエキスのようなものです。マグマは浮上して冷え固まり、地殻をつくっていくわけですが、マグマの冷えてできた。地殻とマントルの化学組成が異なることも、その結果です。

*鎌倉の地盤は固いか?津波は来るか?どのような被害があるか?

 鎌倉の地盤は、第三紀中新世から鮮新世の、火山噴出物を主とする海底の堆積物の地層でできていて、丈夫です。また、活断層があるのは三浦半島のもっと先であり、鎌倉付近は地質構造も変化がなく、ゆるやかです。そういう点で、地盤は固く、地震による被害は軟弱地盤と比較して大きくないと予想されます。ただし、海岸沿いは津波の被害を受ける危険があるので、注意が必要です。

*グラフの意味がいまいちわからない(同様3通)

 必要があれば、補足解説をします。

*大陸はこれからもっと分裂するのか?

 します。アフリカ東部などは、次の1000万年で分裂するでしょう。一方で大陸は集合もしますが。

*マグマがたまったら木は生えるが、火山灰に生えないのはなぜ?

 青木ヶ原樹海のことですか? 火山灰の上にも生えています。むしろ、岩石の風化を待つ必要がない分、早く植生が回復します。関東ローム層と呼ばれる赤土や、その上の黒土も、火山灰からできています。

*マントルの流れは地球を一周しているのか?時速何キロでまわっているのか?

 一周というのではなく、いくつかに分かれた対流をつくっていると考えるべきでしょう。時速ですか。年間10cm365日で割って、さらに24時間で割ってください。海嶺直下では、もう少し速いマントル(アセノスフェア)の流れがあるようですけれど。

*地震の大きさは、プレートの厚さに関係あるのか?

 すばらしい。その通りです。プレートの表面が割れるタイプの地震(正断層型)は、プレートが古くて冷えて、厚みが大きいと地震の規模も大きくなります。また、冷えて厚いプレートは地震波を伝えやすいので、その点でも影響があります。

*磁気はなぜ存在するのか?

 電磁気学の話でしたら、そちらの教科書を見てください。地球になぜ磁場があるのかは、ダイナモ説といって、金属鉄の液体でできた外核が対流する際に、電流が流れ、電磁石をつくるからだ、という解釈が一般的です。

*パホエホエ溶岩はいいにくい。でもツボにはまる言葉だ。

 そうですね。カナカ語は習うと面白いかもしれません。火山学の実習で、正しい発音を習ったことが懐かしいです。

*富士山の噴火ではどこまでが危険なのか?(同様1通)

 噴火の形式によって異なります。泥流、山体崩壊では山ろく全域で注意が必要です。溶岩流はそれほど怖くない。降灰も広範囲に影響しますが、農業被害が中心でしょう。

*ホットスポットはどこにでもできる可能性があるのか?

 原理的にはあります。ですが、だれもホットスポットができたところを見ていなくて、よくわからないのです。

*火砕流からの逃げ方は教わったが、実際に来たらパニクってしまいそうだ。

 そもそも、火砕流が起きている、あるいは起きそうな火山には、決して近づかないことです。

*海嶺の位置は変わらないのか?変わったことはないのか?

 変わります。極端な例では、海嶺そのものが沈み込んでしまう場合もあります。北米西岸で現在起こっています。イエローストーンの地熱地帯はそれと関係があります。ホットスポットに関係した話では、プレートの移動方向を決めるのは、むしろ、沈み込み帯です。

*海嶺も噴火をするのか?水中で噴火するとどうなるのか?

 枕状熔岩が見られますので、噴火していたのでしょう。噴火の現場は観察されていません。海嶺の場合、水深が深いので、地下のマグマだまりと同じくらいの水圧がかかっていて、マグマ中の火山ガスがあまり発泡しません。ですから爆発的ではありません。VTRで見た、枕状熔岩の形成のイメージです。

*ホワイトホールは存在するのか?

 どういうものをホワイトホールと定義していますか。極端な例では、ビッグバンこそホワイトホールだという考えもあります。

*火山が噴火したらどこまで危険なのか?

 どういう火山の噴火の場合を聞いていますか?

*マグマを何か他のことに有効利用できないのか?

 マグマのままでは、安全に取り出すのが困難です。マグマの冷えたものは、建築材として我々は有効利用しています。

*海面ぎりぎりのところに火山があると、火柱が立つのか?

 マグマ水蒸気爆発という、かなり激しい噴火を起こします。これについては、調べてみてください。

*大陸は1万年くらい経ったらどうなるのだろう。日本はあるのだろうか?

 1万年前の大陸はどうでしたか。1万年後は現在と1万年前の延長線上で考えられるのでは?

*海底の山が沈み込むと地表に山ができるのだろうか?

 そういう例だと考えられるものがあります。

*ハワイに実際に行ってみたくなった

 ぜひ行ってみてください。人生観が少し変わるかもしれません。ハワイ島を回ることを勧めます。