10/9の講義の要旨(学生の簡潔なまとめの例)

*惑星の構成物質が同じであっても、大気などの要素によって、その後の惑星環境が大きく異なってくる。

→構成物質が「もともと」同じであっても、惑星のサイズや位置によって、「大気などの惑星環境が大きく異なってくる」のではないですか?

*火星は岩石が丸く、レキ岩があって水があったとされる。しかし、太陽から遠く、気温変化が激しかった。逆に金星は太陽から地殻非常に高温だった。素材が同じでも、サイズや距離が異なったため、地球に生物は住んだが、火星・金星にはすまなかったと考えられる。

→火星には、表面に水があった時代に、単純な生物がいたのではないか、という期待を持つ研究者が多いです。

*同じ太陽系の惑星でも、太陽からの距離や、その惑星の質量などの違いで、生命が誕生したり、できなかったりする。

→生命が誕生するために重要な条件は何か、ひとこと加えて欲しい気がします。

*地球の大気と金星・火星の大気の比較

 他の惑星の大気を比較することによって、地球が太陽からほどよい位置に存在することがわかる。

→なるほど。そういう視点もありますね。「ほどよい」というのは地球の生物にとって、ですね。

*地球型惑星の比較

 火星や金星は太陽までの距離や惑星の大きさによって地球のように生物が存在する環境にならなかった。

→そういうことなのですが、火星は水があった時代に生物が存在した可能性はあります。(前述)

*地球型惑星の運命を決めたのは、サイズと太陽からの距離だった。金星はその近さのため、H2Oを水蒸気としてもつことにより高温で過酷な星となり、火星は遠いためH2OCO2も凍ってしまった。

 月を知ることは、地球を知ることである。

→ほぼOKなのですが、金星のH2Oが紫外線で分解されたこと、また、月を知ると地球の何を知ることができるのか、書いて欲しい気がします。

*月は昔の地球で、月を調べることによって昔の地球を知ることができる。

→後半の要約としてはいいのですが、なぜ、月を調べると昔の地球がわかるのか、惑星のサイズによる火山活動の継続期間や、大気・水の有無について触れて欲しい気がします。

*今の惑星のすがたをつくった大きな原因は、太陽からの距離と、惑星自体の大きさである。キョリが近いか遠いかで、水の有無にかかわる。惑星の大きさは、大気を保持できるかどうかにかかわる。地球はちょうど良かった。

→このままでも減点はできないのですが、「惑星のすがた」とは具体的に何を指していますか?

*惑星は太陽からの距離とその質量の大きさによって異なった環境の惑星が誕生する。

→木星型惑星や氷惑星も含めて考えると、非常に重要なことですね。もう少し書いて欲しい。

 

出席カードに書き込まれた、質問と意見(要約)に対する回答(10/9火曜2限)

(惑星科学、火星探査、アポロ計画の月探査)

*火星探査の際、安山岩らしきものの成分にチタン酸化物があった。アメリカが惑星探査を行う理由には地球外の資源を得ることではないか、と思った。現在、地球における希少資源には、いつも戦争の影があるらしい。

 戦争において、利権のひとつとしての地下資源をめぐる争いの側面は、19世紀以降無視できません。ボーア戦争もそうですし、太平洋戦争も石油の問題がありましたね。湾岸戦争もそうですね。チタンは火星では少なく、むしろ月の玄武岩にチタンの多いものがあります。

*火星に人類がいつか行けるのだろうけど、それはあまりにも大変なのだなあと思った。

 行くまでの準備に、まだかなり時間がかかるでしょう。

*火星でたった75cmの高低差で温度差が激しいのにはビックリした。

*調査を行うべき対象が月にはいっぱいあるように思うが、当時は17号までの計画実行で満足だったのか?

 科学者はみな、もっと継続したかったといえるでしょう。ひとつには予算の問題。特に、到達することが第一の目標だったので、科学探査に一般国民の興味・関心が薄かったこと。それにベトナム戦争ですね。もう一つは、ひとつのプロジェクトでできることは、人間的な疲労からくる限界もあると思います。

*ロシアの宇宙船はどうすれば回収できるのですか?

 いまの技術では、まず無理ですね。どうすれば可能か考えてみてください。

*月に太陽が当たっているとき、大気がないから、相当な直射光をうけるはず。船外活動は日が沈んでいるときに行っていたのか?

 よい質問です。日が当たらないと船外活動は危なくてできません。日が高すぎても、100度を超える高温になってしまいます。ちょうど、太陽が低い位置に来る時と場所に着陸し、船外活動をしていたのだと思います。(月の自転周期は28日)

*火星には水があったといっているがどれくらい前にあったのですか?

 クレーターの頻度から、30-40億年前と推定されています。

*火星に微生物は見つかったのですか?見つかっていないのならなぜですか?

 見つかっていません。見つかることには理由がありますが、見つからないことには理由はありません。ただ、まだ見つかっていないだけです。有人探査をしても見つかるかどうかはわからない。

*男のロマンを感じました。特にハンマーを投げた時泣けました。地質学者の命ともいえるハンマーを宇宙に置いていったことは…とても感動しました。

 ハンマーを投げたのは、たぶん、やれるだけのことをやったという充実感からだと思います。たしかに地質学者はハンマーを大事にしますが、一方では消耗品だと思っている部分もあります。よく壊しますし。

*ローバーをつくった人はすごいと思った。

*火星までの距離の想像がつかない

*行ったことが重要だ。自分の目で地球を見おろすことはすばらしいこと。そのセリフに強く共感した。(同様1通)

*私も月に行きたい。まだ月は何でできているのか、わからないのでしょうか?(同様1通)

 地下については、まだまだよくわかっていません。また、表面も、探査していない場所がたくさんあって、これから調べればどんな新しい発見があるかわかりません。

*火星について最新の情報を知りたい。

 NASAJPLのホームページを読むのがおすすめです。

*アポロ計画がうちきられたのはさまざまな理由があると思いますが、今でも月には未知なことや何か可能性みたいなものはありますか。

 最近でも、月の地下に水があるのではないかという無人探査機クレメンタインのデータが報告され、反響がありました。まだまだ、わからないことだらけです。

*月は月面というけれど火星は地面なんですか?

 はい、それは面白いところに気づきましたね。火星は火面とはいいませんが、地質学ではなく火質学という言葉はたまに使われます。月は月質学ですね。

*プリント中の“大気のはぎ取りの進行”に関して詳しく教えてください。

 惑星に磁場がないと、太陽風を受け止めるバリアがなくて、上層の大気をつくる分子やイオンに太陽風が当たって、少しずつ惑星の外に吹き飛ばしてしまい、大気が薄くなるという効果です。

*月へはもう行かないんですか?

 たぶん行くでしょう。僕が生きている間に行くかどうか、それが僕にとっては重要。

*月と地球の関係、謎は解けたのでしょうか?

 ジャイアント・インパクト説も有力ですが、完全にわかったわけではない。謎だらけです。

*どうして宇宙には酸素がないとわかったのか。どうやって調べたのか。

 酸素はともかく、地上でも高度の高いところに行くと気圧が下がるのがわかりますね。地球に重力があること、大気を構成する分子に質量があることから、推定はできませんか。調べたのは、成層圏までは気球を使い、それ以上はロケットを使って観測したはずです。

*オレンジという色だけでいろいろな推測ができるところに興味を持った。

 色というのは、可視光という電磁波による反射や吸収のパターンを見ているわけで、物質の状態や性質を読みとるのに重要な情報を持っているのですね。だから、肉眼で見る作業というのは、とても大事な観測手段です。

*アポロ計画によってわかったことは多々あると思いますが、それが地球に対しても応用された、新しい発見などはあるのですか。

 いろいろあるのですが、ひとつは微量のサンプルで年代測定が正確にできる技術が開発されて、それが地球の岩石の測定に応用されたため、1970年代以降、地球史が非常に詳しくわかってきました。

*月で生物は生活できませんか?

 どういう生物なら生活できるでしょうか。

*やっぱり月に行きたいと思いました。(同様2通)

*先生も月へ行きたいですか?

 行きたいです。小惑星でも火星でもいいけれど。

*宇宙飛行士だけでなく、さまざまな人々の力でそれは成立するということがすばらしいと思った。

 そうなんです。ものすごい数の人々の努力で、それが実現したわけですね。このシリーズの他の回では、着陸船をつくった人の物語や、宇宙飛行士の妻たちの物語なども紹介されています。

*金星、火星の軌道を地球と同じにすることは可能ですか?

 原理的には可能。実際的には現在は不可能。

*なぜ、太陽系は回り続けるのか?

 宇宙空間には摩擦がほとんどないからです。物理で、外力が働かない場合、物体は静止または等速直線運動を続けると説明するわけですね。それと似ています。

*月面を歩いている人はスキップをしているように歩いているのはなぜか?

 月の表面での重力が地球の1/6と小さいからです。

*前回見たときにアポロに乗れなかった地質学者の人がアポロに乗れて、本当によかった。

 そうですね。地質学者であるシュミットが17号に乗るには、いろいろな圧力や運動などがあって、裏では大変だったようです。もともと17号に乗る予定だったパイロットの一人が降ろされて実現したわけです。

*いつか宇宙に行き、宇宙でのくらしのための家をつくりたい。

*無重力で住む家を設計したい。

 できあがったらぜひ僕を呼んでください。

*過去に戻れるタイムマシーンって可能なんでしょうか…。

 僕も欲しいのですが、原理的には不可能です。

*エジソンのひきょうな一面を知った。

 僕はよく知らないので、何か本を探してみようと思っています。ちなみに、メリエスの「月世界旅行」は早稲田あたりのミニシアターで見られるそうです。

*ケネディの演説で、「宇宙を制する」とか「我々は勝利する」というセリフがあったが、月や宇宙に行くことが「制する」とか「勝利」とかには結びつかないと思う。アメリカのテロに対する報復の考え方が分かった気がする。

 直接結びつくかどうか、ちょっと考えますね。西欧では、自然と人間を対立関係にとらえて、征服する、という意識が非常に強いですから。日本人のメンタリティーとはずいぶん違う。

*月に簡単に行くことが今後できるようになるのですか?

 いずれにせよ、簡単ではないでしょう。

*地球以外の惑星、例えば月とかに人類がすむことはできないか?人工的に大気をつくれないか?

 重力が低い条件で、大気をどうやって保持しますか?

*月にのってできる足あとはすぐ消えちゃうんですか?

*月に書いた文字はなぜ消えないのか?(同様1通)

 月の表面の足跡や文字は、どうやったら消えますか? 風は? 水は?

*フラーの宇宙船地球号という言葉を思い出さずにはいられなかった。

 …フラーの著作を教えてください。

*宇宙での作業などを考えた技術というものは、そのひとつひとつがよくできていると思った。

 最初はいろいろ不都合が出て、実際の作業結果からフィードバックして、後半ではけっこう改良を加えているようです。

*授業の最後に見た映画が面白かったのですが、どこで手に入れたのですか?

 2000年1月にNHK-BS2で放送された際に、NHK局内で録画しました。自宅にBSはないもので。その後、ポニーキャニオンからDVDが発売されていて、僕も持っていますが、こちらは字幕もセリフも、日本語の翻訳のレベルが低くて、おすすめできません。

*惑星にも岩石でできているものやガスでできているもの、氷でできているものなどいくつかの種類があることに驚きました。

*月面着陸のすごさを知りました。ほんとに数多くの人の力が集まっているのだなと思いました。不可能を見たという言葉が印象に残りました。

*地球と同じように生物が育つ環境にある星は発見されているのですか?

 発見されていません。

*地球と同じような環境でないと生物は育たないのですか?

 地球と同じような生物は育たないでしょう。

*映画は面白かったです。(同様2通)

*なぜ、惑星は球みたいな形に落ち着くのですか?(同様1通)

*惑星ってきれいな球の形をしているんですか?

 球というのは、(重力の)中心から(点)対称の形ですね。その表面で見た場合、もし、周囲よりも出っ張りがあれば、その部分の地下には余計に圧力がかかり、つぶれていきます。あるいは、隕石衝突や風化・浸食、地震などのきっかけがあれば、高いところのものは低いところに落ちていき、埋めていくでしょう。そうやって、球の形に近づいていくと考えられます。

*生命が存在し得ない惑星の存在意義は何かあるのですか?

 惑星・地球にとっては、君という人間の存在意義が何かあるでしょうか?

 それは別にして、生命が存在できる条件について知る、あるいは惑星一般の形成・進化の歴史を明らかにする材料になることはたしかです。

*火星人はいるのでしょうか(同様1通)

 火星「人」ですか? まだいません。火星生物はわかりませんが。

*昔見たTVで、火星の自転周期は25時間で、人間の体内時計も25時間だから、人間は、本当は火星で生まれたという話があった。

 これは大嘘ですね。体内時計は23時間という説もあります。こういうウソにだまされない知恵と知識を得ることが、科学を学ぶ意義ではないでしょうか。

*夏休み中に、前のビデオの再放送を見ました。とても面白い番組なので、またいつか放送しないかと思いました。

 視聴料を取っているNHKは視聴者の声を放送に反映させる義務があるので、編成局やwebの窓口で、再放送の要望を送ると、それが多い場合にはまた再放送される可能性はあります。投書なり、メールなり、運動しましょう。

*月が地球のタイムカプセルという話が素敵だなあと思った。

*人間はちっぽけな存在であるにもかかわらず、希望を持てばどんなことでもできるということを証明した月への到達は改めてすごいことだと感じた。

*アポロ17号の月面での地質調査で何があったのかなどがわかるなんてすごいと思った。

 実際には、地球に帰ってから何年もかけて研究し、それでわかったことも多いのです。

*まだ月にはもっと発見するようなことがたくさんあると思うけど、やっぱり世の中お金なんだなと思いました。

 まあ、それはそうなんだけど、お金だけでも動かないと思います。人が動かなければ。

*テレビで地球に衝突した隕石のために、砕けた地球の破片が月になったという説を見ましたが、本当にそうでしょうか。

 ジャイアントインパクト説という、月の起源に関して、現在有力な説です。前期の講義で扱いました。自分で調べてレポートにしてはいかがですか?

*火星には大量の水があったらしいが、その水はどこから来たのでしょうか?火星には雨が降るのですか?

 惑星の材料にもともと水は多く含まれていました。それは隕石などの情報からもわかります。問題は、その水がどのように保持されたか、あるいは失われたか、です。火星に雨は降りません。ずっと昔は降ったかも知れません。地表に大量の水が流れたあとらしきものがあります。

*太陽と月が地球から見てほぼ同じ大きさであることには、そうでなければならない理由があるのでしょうか?

 月と地球の距離は、少しずつ遠ざかっていて、昔はもっと近かったことが推定できます。ですから、これは偶然です。遠い将来、皆既日食はなくなり、金環食だけになります。

*地球以外のところに人間が移住する可能性はどのくらいあるか?

 いつまでに移住する可能性ですか?

*マーズパスファインダーの機能ってロボコンと違いがない気がする…。

 そうなんですが、ロボコンと違って故障が許されないので、非常に厳しい仕事です。部品の段階でも、ものすごく精選しています。

*これだけ夢と希望を楽しげに語るアメリカ節で、今は地球のちっちゃな殺し合いを正当化している。アポロ計画で月に行ったときも、今も地球も月も太陽も変わらずそこにあるのに。

 たしかに問題も多い国ですが、我々はどうつきあうか、そして我々自身は自分の国をどのようにすべきか、議論すべきことは多そうですね。

*火星探査機ランダーの機能に感動した。岩石より機械の方に興味を持った。

 けっこうです。ぜひもっと詳しく調べてみてください。

*プリントが詳しすぎてテストでどこを覚えてよいかわかりません。

 無理に覚えなくてけっこうです。受験勉強ではないのですから。面白いところを自分で勉強してください。

*21世紀このまま進歩し続けていいのか疑問がないわけではない。

 進歩の定義にもよりますね。我々はどんな進歩を目指すべきか、ということでは。退歩も進歩の一形態ですので。

*人類が火星で生活することは可能か。

 今は、不可能。

*無機質のものが生命体になることはないのですか?

 無機質というのは違うけれど、かつて一度、無生物から生物が生じたことはたしかです。たぶん一度きり。

*火星の石は温度差で丸くなったのではないか。

 その可能性はあります。

*宇宙船中の酸素ってどうなっているの?

 ぜひ本などで調べてレポートにしてください。僕は詳しくは知らない。

*月には酸素の問題以外にどんな危険があるのか?

 大気がほとんどなく、真空に近いこと。温度差、宇宙線・エックス線などの放射線、紫外線、水などの物資の限界、精神的ストレス、低重力による機能不全、などなど。

*どの授業を取るか決めていなくて前回は他の授業に出ていたのだが、その欠席分は成績に影響しますか?

 出席点で3点減点される可能性があります。ただし、レポートや出席カードの記述でカバーできます。