出席カードに書き込まれた、質問と意見(要約)に対する回答(10/23火曜2限)
(宝石はなぜ美しい…鉱物の科学)
#回覧標本に関する感想
*いろんな石が回ってきて、やっぱ特徴って違うんだなーと思った。
そうですね。硬さや色、割れ方、結晶の形や延び方など、いろいろ分類の基準はあるのですが、まず違いを感じてもらえたらいいなと思います。石によって表情の違いがあるような気はしませんでしたか?
*今日の講義で回していた原石は総額いくらぐらいなんですか? 何が一番高いのですか?
戦前の標本もあって、歴史的な価値を考えると値段はつかないのですが。同じものをそろえると、十数万円くらいのところかな。何が一番高いのかはわかりません。「何でも鑑定団」は僕は嫌いです。もっとも、あの番組は値段を付けたあと、お金では計れない価値がある、ということを鑑定人がよく言っていますけれど。
*授業中にいろいろな石が回ってきて、それにふれたりできたので楽しかった。豆腐をダメにした話は笑えました。しかし一人暮らしをしている自分としてはもったいない気がしました。
もったいないです。やはり冷蔵庫は買うしかないか。岩石標本は基本的に腐らないのが良いところ。
*サンプルを見たり、さわる事ができたので良かった。やはり実体験は良いと思う。
野外に出かけられないので、できるだけ実物を持ち込もうと思っています。
*標本として取ってくる石の大きさは様々ですが、どのような理由にもとづいて大きさが決まるのですか。
標本も大きい方が単価が高くなるので、なるべく大きく取りたいはずなのですが、ハンマーなどで割り取る関係上、大きさは割れたときの大きさで普通は決まるんじゃないかな。だから、大きく採れるかどうかで決まる場合が多いと思います。あとは壊れずに運べるかどうか、あるいは重さの限界があると思います。
*まわってきた石がきれいだった。
あの一部は旧制一高の教育標本で、戦前のものです。
*ダイヤの原石は意外にきれいじゃなかった。
僕に財力があれば、きれいな原石を用意できるのですが。
*標本のラベルは、石とそれがどこにあったかなどをつなぐ最後のカギで重要であることがわかりました。
はい。これは岩石や鉱物に限らず、昆虫でも植物でも、自然史関係の標本にはすべてあてはまることですね。
*ダイヤモンドの原石を初めて見ました。標本を見るのが楽しかったです。エメラルドの原石は色がきれいでした。
*宝石の原石はきれいではないんですね。
人によって感想は様々ですね。加工品に比べたら、たしかにきれいとは言えないかも知れませんが、原石は原石で、それなりの美しさや味わいがあるんですよ。
*原石の、色の濁っている部分など、宝石にならない部分は、何かに利用されているのですか?
種類にもよりますが、ルビーなどは粉末にして合成する材料にしたり、加工品として再利用する場合があるようです。あとは工業用、標本用などの用途があると思います。
*宝石にふれられてうれしかった。さすが宝石だけあって、原石(加工前)も輝きが違うと思った。角度を変えるだけできらきら光ったり、色が変わったりして、感動した。欲しくなった。ダイヤモンドが宝石向きの理由がよくわかった。
喜んでもらえて良かったです。自力で採集するのは、いまはなかなか難しいのですが、購入することはできます。
*エメラルドとオパールの岩石がきれいだった。意外に輝いていたので驚いた。
*百聞は一見に如かずですね。
*標本、きれいでした。考えてみると身のまわり結晶構造のものが多いなあと思いました。
逆に、無機物よりの僕から見ると、身の回りには明確な結晶構造を持たないものが多いなあ、と感心してしまうのですが、ヘソマガリかなあ。
#宝石に関する感想・質問
*宝石がマグマと密接な関係だとは知らなかった。あまり宝石に興味がなかったが、今日の授業のような角度から宝石を見ると、とてもおもしろいです。きっと、まだ、発見されていない鉱物もたくさんありますよね?
発見されていない鉱物は、たぶんたくさんあると思いますよ。でも、見つけるのはかなりたいへんだな。
*宝石の原石が思っていたよりもきれいでなはなくてがっかりした。ダイヤモンドはダイヤモンドで形を整えると聞いたが、他の石も同じ石同士で磨くのですか?
いえ、他の宝石はダイヤモンドの粉で磨きます。ダイヤモンド以外に、合成品の炭化珪素(カーボランダム)や、コランダム(ルビー、サファイヤと同じ鉱物)の粉を使う場合があります。
*ダイヤ以外のものは日本では何がとれますか?
*日本でとれる宝石にはどのようなものがありますか?
宝石として生産、加工しているわけではないのですが、ヒスイ、それからトパーズが比較的多いでしょうか。エメラルドというほど緑の濃いものはなくて、アクアマリンならあると言えるかな。ガーネットもそこそこ。水晶も山梨あたりでは加工品としていたのですが、いまは輸入品中心で地元で採れるものはわずかだと思います。
*よく言葉で使うダイヤの原石の意味を深く知りました。
*原石は意外と低価格で手に入るみたいですけど、加工するのがたいへんとおっしゃっていたんですが、加工するのに費用または労力はどの程度かかるのですか?
そうですね。原産地で加工している場合は、かなり工賃も安いらしいです。労力について詳しくは知りません。
*一番とれにくい宝石は何ですか?
これは難しい質問ですね。希少性という点で、よく挙げられるのはアレキサンドライトです。原石は金緑石というベリリウムを含む鉱物なのですが、その産地がウラルなどごくわずかの場所に限られています。
*ダイヤみたくひかるように他の石もみがけますか?
ダイヤが輝くのは屈折率の大きさが効いているので、それほど屈折率の大きくない(かつ、プリズムのような効果=分散の少ない)鉱物では、いくら磨いてもきらきら光らず、ガラス玉のような印象を与えてしまう可能性があります。
*ガラスが鉱物でないとは思わなかった。
「クリスタルガラス」なんて紛らわしい名前もありますね。ガラスも、非常にゆっくり冷やせば結晶ができるのです。もっとも、そうすると強度が低くなるようですが。
*宝石にはほかの石にないオーラみたいなものを感じる。
そうかな。うーん、僕は石に関しては博愛主義なので…。
*宝石にもいろいろなできかたがあるんだと思った。
そうですね。同じ鉱物でも場所によって、できかたが違う場合があります。
*鉱物というものが、地学という分野から入り、そして宝石という姿にかわると、それがファッションの分野へとつながっていくのをあらためて感じた。奥が深い。一瞬、地味な鉱物が、よく見るとすごい美しいのに気付いた。
見る目をもつと、いろんなものが見えてきて、楽しいですね。
*宝石が高価な理由がわかりました。
*宝石の値段の違いの秘密がやっとわかりました。浅いところで簡単にできるか、深いところでできるもののちがいなんですね。
いや、もちろんそれだけではないのですが、そういう部分はありますね。でも値段の問題は難しいのです。
*みがき方によって他の石もダイヤのように高級になりますか? ごつごつの石(原石)が、あんなにきれいになるんですね。どんなみがき方で?
磨いてきれいになる鉱物というのは、屈折率の高さや透明度、プリズムとしての性質(光学的分散といいます)など、いくつかの条件があると思います。どんな石でもきれいになるとは言えないかも知れません。
*安い宝石はいくらくらいから?
うーん、これは答えにくい。原産地ではかなり安く売っている場合もあるし、一概には言えません。数百円くらいから、というのではダメかなあ。
*宝石というのは人々の心をひきつけますね。美しさと希少性というのを満たしているからですかね?
うーん、それは僕にはわからない。一般に女性が好むというのはどうしてなのかな。心理学などの別のテーマになりそうですね。
*宝石について、同じ種類の石なのに、色が濃かったり、薄かったりしているのはどうしてですか?色によって値段が違うと聞いたことがあるので…
色によって値段は大きく変わるようです。
*VTRで宝石の話をするといったときに、さくらの目がきらっと光ったのが印象的でした。
好きなのでしょうね。雑誌のインタビューで、この番組の収録後に宝石店に駆け込んだ話をしていましたが。
*トレジャーハンターの話は面白かった。宝石の話は興味が持てた。
#ダイヤモンド
*ダイヤモンドが高温で燃えると石墨になることにおどろいた。ダイヤモンドより硬い鉱物は本当にないんですか?発見されていないだけでその可能性があるということは?
ダイヤモンドから石墨へは、結晶構造が変化するのであって、マグマ中では燃えるわけではないのですが。燃えるというのは、通常は酸素と結びつく(その過程で熱が発生する)ことですから。
*ダイヤモンドより硬い物はないのか?(同様一通)
天然には見つかっていないです。今のところ。可能性はゼロではないけれど、困難でしょうね。
*ダイヤモンドより構造が密な物質があれば、それはダイヤモンドより硬いのですか? そういうのは存在しえないのでしょうか?
構造が密というか、結合の強さが問題なのですが、そういうものは存在する可能性はあります。まだ越えていないと思いますが、炭化ホウ素の結晶などで試されていなかったかな。炭化珪素はダイヤモンドの次に硬い物質で、研磨剤用に量産されています。
*ダイヤモンドは地球上で一番硬いんですよね?一番じゃなくともかなり硬いわけなのに、ダイヤでつくられたナイフとかってないですよね?
ナイフにするのは加工の問題があるんじゃないかな。でも、将来的にはコーティングにダイヤモンドを蒸着するということが可能になると思います。
*ダイヤも宝石にできないやつは安く手に入るって聞いたんですけど…
そうですね。比較的安く手にはいるようです。
*ダイヤモンドはなぜ溶けないのですか?
溶けるというのはマグマに、ですか? まあ、溶ける前に地上に運ばれたからですが、ダイヤモンドの結晶構造が強いので、マグマの中でも分解が進みにくい、ということもあるでしょう。
*物質の中で一番硬いダイヤモンドは、どのようにカットするのですか?
次回、今回忘れたVTRを持参するので、見てください。
*ダイヤはダイヤでみがくときいたような気がしますが、なんかもったいないような気がします。
*今日の講義を聞いてダイヤモンドの希少価値っていうのがよくわかりました。
まあ、できかたやできる条件を考えると、地上にあるのがそもそも異常なことだ、という気がしますね。
*石を採集している先生ですが、実際ダイヤモンドの指輪を買う気になりますか?結婚指輪など…
*ダイヤモンドは日本で採れることはほぼないけれど、ダイヤモンドがとれる地域(国)は、経済的にまだ発展途上のところが多い。そういう意味からすると、バランスがとれているのかもしれない。まあ日本の場合、地下資源がとぼしいから、経済をがんばらないとダメだったからということもあるけど。
どうかなあ。たしかにダイヤモンドの産出する地域は偏っていて、それが国際政治にも影響を及ぼしてきたように思えます。でも、最近はロシア、ブラジル、オーストラリア、カナダ、中国などでの産出もあるからなあ。日本は加工品貿易でしょう。銀行は加工品輸出で稼いだお金を運用して膨らんだという印象がありますが。
*何でダイヤモンドはデビアス社のシェアが大きいんでしょうか? 大きすぎて、シェアしてない。ぜんぜん。
ダイヤモンド・シンジケートの歴史は調べると面白そうですね。ずっと、自分たちの利益を守り続けるべく、マーケットを支配してきたわけですが、最近は、中国・ロシアなどのデビアス社の支配を受けない国の生産が増加し、支配体制が崩れているらしいです。
*世界で一番大きいダイヤモンドは、どのくらいの大きさなのでしょうか?
南アフリカで採れたカリナンと名付けられたものが、1400カラット(270g)あまりで世界一だったと記憶します。3100カラットあまりで世界一です。牧場で発見されたのですが、発見者は最初、誰かがいたずらでガラスの塊を埋めたのだと思ったそうです。いくつかに分割して磨かれ、イギリス女王の王冠などに使われているそうです。
*マグマからダイヤモンドができることに驚いた。
たぶん、そうなのですが、注意して欲しいのは、噴出するマグマに運ばれてくるのであって、そのマグマの中で成長した結晶ではないと思います。噴出のずっと前にできた結晶です。ものによっては32億年前とか11億年前という古いものも知られています。(噴出が1.5億年前)
*ダイヤモンドにいろいろな色があるのは知らなかった。
色の原因には、微量の不純物が効いているようです。
*ダイヤモンドに色々な色があるのにびっくりした。今日見たダイヤモンドは全然光ってなくてビックリした。
*ダイヤモンドのブリリアントカットは、生産性、デザイン、機能のバランスがよく、非常によいデザインだということに感動した。
そうですね。そう思います。
*ダイヤモンドはどうやったら、店に出てるようなダイヤモンドになるんですか?
VTRで。
*ダイヤモンド鉱山から、違う宝石が出たりもするのでしょうか。
あまりそこで採取しているとは聞きませんが、ガーネットの一種はダイヤモンドと一緒に出たと思います。
*ダイヤを買うときに、本物を見極めるポイントがあったら教えてください。
これは僕にはわからないです。傷や不純物が混じっていれば、判断できますが、そういうものは宝石用にはあまり向かないし。専門家でないと、鑑定書が頼りかなあ。
*工業ダイヤモンドはなぜ透明でないのか?
天然のダイヤモンドはきれいなものはそれほど多くなく、透明で宝石になるようなもの以外を工業用に回すからです。また、人工ダイヤモンドは宝石になるようなものはありません。透明度の高い無色のものをつくるには、成長が遅いことが一般に都合が良く、たぶん、それには非常に手間と時間がかかるので、採算がとれないから宝石用はつくらないということだと思います。
#鉱物一般
*鉱物はそれぞれ化学組成を持ち、Mg2SiO4など組み合わせは様々である。この組み合わせが少しでも違えば別の物質ができただろうし、また今ある鉱物は存在しなかったかもしれない。そう思うと自然がつくる偶然というのは、とてつもなく無数の可能性から生まれるのだなと思った。
そうですね。そういう見方からすると、岩石や鉱物も、生き物と似ていますね。ちょっと親近感がわきませんか?
*代表的な鉱山(鉱物?)の化学式は覚えるべきでしょうか。
覚えてくれた方がありがたいけれど、無理して式で覚えなくてもいいです。たとえば、かんらん石が、珪素や、マグネシウム、鉄、酸素でできている、くらいの理解があればありがたいです。
*鉄とマグネシウムの割合の違うかんらん石は、1つの同じ鉱物と数えられるのですか。
はい。例えば、ひとつのかんらん石の結晶でも、内側から外側に向かって、鉄とマグネシウムの割合が連続的に変化しながら成長している場合があって、これを別の鉱物に分類するのは困難です。ですから、授業の内容とは若干矛盾しますが、じつは結晶構造が鉱物を決める非常に大きな要素で、化学組成はかなり融通が利くものだと思っていいのではないでしょうか。
*鉱物の奥深さを感じた。
*色々な観点から鉱物は成り立っているのだと感じた。
*人間の皮膚は鉱物でないのならば、どうやって構成されているのですか。
タンパク質や多糖類などの高分子で表皮細胞などの細胞膜ができているわけですが、結晶構造を持っているというような、そういう規則性ではなく、より複雑で入り組んだ構造だと思います。
*前にテレビで見たんですけれど、原宿に食べられる石が売っているのを見ました。
種類は何でしょう? ちなみに、石とは思わないでしょうが、氷砂糖はショ糖の大きな結晶ですので、鉱物であると考えることができます。
*固溶体があるのに驚いた。
固溶体は、たぶん、地球型惑星ではものすごく重要な仕組みです。
#ガラス
*車のフロントガラスは何で細かく割れるのか?
もともと張力のかかった状態で整形してあって、一ヶ所でもひびが入るとバランスが崩れて、一気にひびが入る仕組みなのだそうです。それ以上詳しくは知りません。調べてみては?
#地球の熱
*地球は丸いのに、なぜ日本の地下は特に熱いのですか? 火山があるほど熱いのなら、平坦な土地の地下はそんなに熱くないのですか?
地下の温度分布は、けっこうムラがあるようです。それは、熱の輸送がマグマやプレートの動きに伴っていて、熱伝導による均一さを乱している身体と思います。
*マグマはいろいろな働きをするんですね。
マグマは重要ですよ。僕たちの生活に非常に深く結びついています。
*マグマと鉱物の関わりがよくわかりました。
#宇宙
*先生が、宇宙で調べるものは地球上とあまりかわらないとおっしゃっているのを聞いた時、地球と宇宙のつながりをあらめて感じました。
そうなんです。地球型惑星は材料の組成がほぼ共通ですから、多くの岩石で同じような鉱物の組み合わせができます。ですから、地球の鉱物や岩石を調べることは、惑星科学の上でも意味があります。いや、こういう感想を持ってもらえるとうれしいな。
#講義内容その他
*前期のいい復習になりました。
すみません。固溶体のレポートを書いた人には物足りなかったかも知れません。まあ、そういうことで。
*前期と同じことをやったのですが、やはり鉱物については難しいですね。
難しいのはどういうところでしょうか。結晶構造などがイメージしにくいところでしょうか。図を増やしたら、わかりやすくなりますかね。
*あつかった。(同様一通)
*すごく部屋が暑く、息苦しいです。気持ち悪くなります。
すみませんでした。「質問がありますか」と言ったときなど、遠慮なく声をかけてください。
*今日は授業の進み方が早くて黒板に書いてあることが読みとれきれませんでした。
*黒板をもう少しまとめて(わかりやすく)書いていただけるとたいへんうれしいです。
ごめんなさい。気をつけます。
*今日の講義は難しい。
*原子記号が出てくると頭がこんがらかる。
*蒸し暑くて集中できなかったせいか、今日の講義は難しかった。(元素記号が多く挙げられたからかも)
前期の経験から、これでもなるべく化学式や反応式を書かないですませたのですが、元素記号アレルギーってあるのかなあ。最低限は使わないと僕も話がしにくいので、少しだけ我慢してもらえないだろうか。
*僕はロッククライミングが好きですが、まだ人工のピナクルしか登ったことがありませんので、天然の岩を登りたいです。
気をつけて登ってください。たぶん、天然の岩を登るときは、岩石の種類と性質についても知識が必要になるのではないかな。
*ペグマタイトをもう少しゆっくり説明して欲しかったです。
*眠くなってペグマタイトの話がよくわからなかった。石…鉱物をみてて話を聞きそびれた。
ペグマタイトについては、できるだけ補足します。標本が用意できなくて、少し先になるかも知れませんが。
#講義以外
*錬金術みたいなのは可能なのですか?例えば石を金やダイヤモンドに変えることは可能か?
原子炉で中性子照射したり、核分裂などの過程で原子核が変化することで、異なる元素がつくられることはあります。でも、様々なものができてしまい、同じ種類の原子にそろえるのはほとんど不可能ですから、錬金術というのは今の技術では少し無理かも知れません。ウラン238に原子炉で中性子照射して、プルトニウム239ができて、それを再利用する例がありますが、これが現代で唯一、錬金術に近いかも知れません。
*なぜウランができるか? 水素はヘリウムへ変化し、鉄や鉛のような重い元素になってはまた軽い元素に分解するサイクルがあると聞いた。ではウランのように重い元素はどう生まれたのか。
前期の講義で扱ったのですが、超新星爆発の際の核反応で合成されます。軽い元素に分解するのは、鉄より軽い元素では吸熱反応になるので進行しません。超新星爆発をキーワードにして、本で調べてみてはいかがですか?
*インドの古いお寺に有名な数世紀の間「さびない鉄柱」があるらしいです。建築の世界ではマニアの中で語られている謎です。なぜさびない鉄が存在するのかいまだにわかっていません。日本でも奈良時代以前に発見された鉄の埋葬物はさびないらしい。
日本でも奈良時代以前に…というのは嘘ですね。古墳時代の鉄剣がぼろぼろにさびてしまってわからなかった銀の象嵌が、エックス線を使って確認できたという研究を知っていますので。こういう話は、実際に自分で確かめましたか。いくらでも怪しいデマ情報は世の中にあって、自分で実物を見るか、他の立場から資料やデータを探して検証するという態度が大切です。信じるだけなら科学はいらない。
それで、鉄の性質ですが、不純物を極限まで減らした鉄は、非常にさびにくく、我々の知っている鉄とは性質がずいぶん違うそうです。ひとくちに鉄と言っても、結晶や不純物、組織によって、ずいぶんいろいろ性質に違いが出るらしいですね。
#中村コメント(プリント)について
*そうそう中村さんは少し、理屈っぽいのではないでしょうか? 私は先生の学生への答え方はいいと思うので。
そうですね。たぶん、教育の専門家である中村さんは、教え方、あるいは生徒/学生への答え方に、非常にこだわりがあり、ずっと研究されているのだと思います。僕のこだわりは、地学の内容そのものに対してであるので、そこに視点のずれがあるのかな、などと考えていますが、視点の違う指摘は非常にありがたいことだと思います。僕も、ツボにはまるとものすごく理屈っぽいですよ。たぶん、惑星探査はツボにはまってしまったのだなあ。反省します。
*先生と中村敏弘さんのやりとりを興味深く読ませていただきました。毎回、生徒の感想や質問に対してコメントをつけて返してくれるので、他の人の質問とその答がまた自分のためになったりして、とても意味があります。そのコメントの書き方も難しいんですね。正直、大学の先生でここまでしてくれる先生はいないです。一方的に受けるだけの授業はすごくつまらないから、自分にとってこの地学の授業はやりがいがあります。
コメントの書き方も、教え方そのものも、難しいですね。僕にはまだよくわかりません。試行錯誤していくしかないと思っています。中村さんにいろいろ指摘していただけるのも、ありがたいことだと思っています。教える側に回ってしまうと、学生時代と違ってなかなか指導してもらえるチャンスはないのですよ。どんどん独りよがりになってしまう危険が大きくなります。授業は講義者と受講者の両方でつくっていくものですから、これからもよろしく。
*プリントを読んで分かりましたが、先生は、4時間しか寝ていないんですね。それに毎回、学生たちのどんな質問にも答える先生はすごいと思います。準備に多くの時間を費やす、先生は、どの先生よりもやる気があるように思えました。
いくら徹夜しようが、準備に時間をかけようが、肝心の授業の内容に反映できなければ、いいわけにしかなりません。厳しく批判していただいてけっこうです。でも、僕が準備している以上、諸君もそれなりの真剣さで予習・復習・レポートなどで学習を進めてくれるとうれしいな。
授業の準備に時間を割くのは、自分のためになるからなのです。教えるということは、自分にとって良い勉強になります。来年度は、これほど時間を割くことはないと思います。そのぶん、僕が堕落しなければいいのですが。
講義内容要約(例)
*鉱物とは決まった化学組成と配列をもち、そうでないものは鉱物ではない。ただし固溶体や、ダイヤモンド−石墨のような配列や、組成の連続変化もある。宝石のような特殊な鉱物には、熱水やマグマによる濃集システムが働いている。
配列というのは、原子の規則的な並び方のことですので、できれば結晶構造と言って欲しいです。宝石には、熱水やマグマの濃集システムは重要ですが、硬さという点で、変成鉱物の場合にも言及しました。
*鉱物とは、均質性を持った原子集団の最小単位で、特定の化学組成をもち、特定の結晶構造を持つものである。固溶体とは、固体だが溶液のように成分を変えることのできる石のことである。マグマとは、珪酸と様々なイオンの混ざった溶液である。
そうですね。ほぼそのように説明しましたが、もちろん例外はあるわけで、例外の方も整理しておいてください。