よくある質問集(河川)

’01年度、NHKジュニアスペシャル#33「河川−水の循環」を視聴)

 

*黄河の大きさは日本にないものだと思った。

そうですね。土砂の供給だけなら、日本の川も規模の割にかなり多いのですが、黄河の場合は、黄土高原という供給源があることが重要で、それは過去250万年あまりのあいだに、西方の砂漠地域から風で運ばれてきた堆積物であるわけです。つまり、氷期に風で運ばれた黄土の蓄積があって、あれだけの砕屑物供給が実現していると考えていいのかもしれません。そうしてみると、やはり大陸ならではの現象ですね。

*川が土砂を運びそこに緑をつくる。川が土砂を運ばなくなったら緑ができなくなるだろう。

 そうかもしれませんが、土砂を運び去られる側でも、土壌浸食によって緑がなくなり、砂漠化するという問題を抱えた場所もありますね。

*ミネラルなどの成分を含んだ水は、人間がつくることが可能か?

 可能ですが、つくるのはけっこう面倒です。機能性飲料とか、スポーツドリンク、輸液などがそれにあたります。

*海水の塩分濃度は増加しているのではないか

 一方では、海水が干上がっているところもあり、海底の岩石との反応もあって、塩分が取り去られることもあり、それが河川による塩分の流入とつり合っているものと推定されています。

*ミネラルを含んだ岩石はなくならないのか。

例えば花崗岩に含まれるナトリウムやカルシウムは2%5%くらいですが、水に含まれるのは数十ppmですので、岩石に対して水では1000倍程度に薄められています。確かに岩石は風化で壊されていくのですが、世界的な平均をとって年間1000mmの降水量があるとして、その土地の岩石や土壌の1mm分を壊していく計算になります。このペースで風化が進行すれば、1000年で1mです。実際には、ミネラルを多く含むような地下水になるのは、降水のごく一部なので、岩石の風化もこれよりかなり少なくなり、多くの場所では、たぶん、さらにその1/100以下です。(アフリカで1億年に200mという浸食速度の推定があったと思います。)というわけで、岩石がなくなる心配はしなくていいでしょう。もうひとつは、風化で壊される岩石がある一方、マグマの固結や地層の堆積などで、新たにつくられる岩石もあるので、それがつり合っていればよろしい。

*荒川も土砂を運ぶのか?

 運んでいるから、荒川沿いの低地ができた(埋め立てられた)のではないでしょうか。土砂を運ぶのは、洪水の時ですから、ふだんの川で土砂が移動するのをみることはありません。

*東京湾も土砂で埋め立てられているのか?

 埋め立てられています。江戸時代の地図と比べるとよくわかります。日比谷も、中世までは入り江だったそうです。東京湾が狭くなっているのは、人間がゴミで埋め立てているからだけではありません。

*雪解け水が大量に地下に流れ込んで、地盤がゆるくなって崩れるということはないか?

 VTRで見せた富士山では、そういうことはないと思いますが、新潟など、豪雪地帯で地質が軟らかい、第三紀の地層でできているところでは、実際に地滑り災害があります。調べてみてください。

*地球の気候を変えてしまった人工物はあるか。

 二酸化炭素がもっとも有名ですが、フロンや、メタンも温室効果ガスであり、その影響も問題です。ただ、二酸化炭素以外は影響の評価が難しいようですね。

*水は腐るのか?

 水が「腐る」とはどういうことですか?

*ミネラルウォーターの銘柄はあまり関係ないことを知ってよかった

 それはよかったです。ミネラルが必要なら野菜を食べましょう。

*隅田川が氾濫したら、どのくらいの被害になるか?

わかりません。被害予測は行政の仕事なのですが、被害予測地図の作成は、特に観光地などでは、住民に抵抗があるといわれます。区役所に聞けば、過去の水害や予測の資料はあると思います。ところで、葛飾区郷土と天文の博物館には行ったことがありますか?

*ダムにも栄養がたまるのか

 富栄養化ということでしたら、あるようです。夏にアオコが繁殖してしまう場合があるようです。

*天然水に含まれる成分は、カルシウム、ミネラルの他にどんなものがあるのか?地方によって質・量の差があるのか?

 カルシウムイオンはミネラルと呼んでいる溶存成分の一部です。カルシウムイオン以外に、ナトリウム、マグネシウムなどのイオンが主要なものです。地方による差は大いにあります。自分でミネラルウォーターの成分表示を比較してみてください。

*黄河で土を流したら上流の方の山は崩れてしまうのでは?

 上流ではなく中流域ですが、VTRや写真で見たように、実際、崩れています。黄土高原の表土流出は、人間による影響も考えられますが、深刻なものになりつつあるようです。

*黄河下流の土質は、あれだけもろいと利用しにくいのではないか?

 利用とは、どのような利用を想定しているのですか? 農業生産には貢献していると思いますが。

*植物プランクトンの栄養は光合成ですか?

 栄養の定義が問題です。光合成による有機物生産は重要ですが、窒素やリンなどの肥料に含まれる成分、あるいはミネラルと呼ばれる無機塩類も供給されないと、植物プランクトンは増殖できません。

*地下水として流れる水によって、なぜ地中は削られないのか?

 物理的風化は進みにくいですが、化学的風化は進行する場合があります。鍾乳洞はどのようにしてできると思いますか?

*黄河の水の色があそこまで黄色いとは・・・

 そうですね。余談ですが、黄色の原因は、微量の鉄イオン(三価)に由来するようです。砂漠の砂が赤いのも同じです。鉄イオンは微量でも着色原因になります。赤と黄色の違いの原因は、鉄イオンの量の違いだったり、粘土鉱物に取り込まれた状態の違いによるなどのようです。

*黄河の水が澄むことはないのか?源流も濁っているのか?

 チベット高原の源流は、VTRで見たように、澄んでいます。下流域では、途中の河原にも黄河が運んでいく途中の黄土の堆積がありますので、澄むことはないでしょうね。

*ミネラルは岩石からとれるのかと思った

 もともとは岩石からです。岩石をつくる鉱物が分解されるときに、吐き出された金属イオンが水に運ばれます。

*アマゾンは長い

 長いのは確かですか、膨大な数の支流があって、規模の大きさには圧倒されますね。

*おいしい水を飲みたい

 水道水のことですか? 水道は自治体単位で整備しているので、地方の自治体では、わき水や地下水を滅菌して、そのまま水道管で給水しているところがあります。そういうところに住めるといいですね。

*ミネラルウォーターも実はすごいものだったのですね

 商品化されたミネラルウォーターがすごいのではなく、「水」がすごいのです。水道の水だって同じです。塩素殺菌されていないのがミネラルウォーターの取り柄。宣伝にだまされてはいけません。ところで、君は僕の講義を聞いていたのですか?

*アマゾンの川の量はすごいけど、あそこに住みたくない。わき水がきれいだった。

 増水で何ヶ月も水浸しになるとたいへんそうですね。北杜夫「輝ける蒼き空の下で」は読みましたか?

*人間がインコのように土を食べてミネラルを摂取できるか?

 原理的には可能ですが、雑食性の人間には食物から充分摂取できるので、ふつうは必要ないでしょう。

*水に土を加えておいたらミネラルウォーターになるか?

 ごくわずかには溶け出しますが、効率は悪そうですね。多くの岩石と接触し、反応することが重要ですし、実際に風化が起きるときは、土壌有機物の影響が大きいようですので。

*黄河が流れを変えるときには、どのように変わっていくのか?

 わかりません。ですが、流路を変えるのは、洪水の時だと思って間違いないでしょう。

*これからの日本の河川はどうなっていくのか

 僕にはわかりませんが、君たちがどうするか、という問題だと思います。どのような状況が望ましいと思いますか。そのためにはどうしたらいいのでしょう?

*日本が小さいと改めて実感した

 大陸に比べると小さいですね。でも、起伏と変化に富み、動植物や地質・地形などの自然は面白いところだと感じます。もっと、日本が面白いところだということを実感してもらいたいし、そのためにも、自分で大陸を見て感じて考えて欲しい気がします。