出席カードに書き込まれた質問(6/4火曜1・2限)
2002前期第7回(氷期の気候変動)
講義内容の要約例(青字…加筆、赤字…訂正)
*地質時代とは、地層や岩石の新旧関係を、主にその時代に生きていた生物(化石)で区分したものである。アラスカなどでは一年中雪があり、何年も雪が堆積している。それが氷となり、氷河を形成する。そして氷床が形成される。(0117003)
#地質時代のまとめはなかなかいいですね。時代によって大きな氷床が形成されることなど、ちょっと触れてくれると、なおすばらしいと思います。
*氷期とは、地上に氷のかたまり(氷床)がある時代のことで、現代も南極、北極などに氷のかたまりがたくさんあるので、大きく見ると氷期なのだという。氷期といっても暖かい間氷期なのだという。(0217020)
#そういうことなのですが、地球史の中では氷床の発達する時代が何度か繰り返されています。それと、北極点付近は海ですので氷床はなく、あるのはグリーンランドとアラスカの一部くらいですので、注意が必要です。
*気候の変動と生命とは密接な関係がある。気候が安定しなければ農耕の発達はなかったかも知れない。現在の気温が5度違えば違った文明が発達していたであろう。(9931298)
#生物進化もそうですが、とりわけ文明は気候変動に影響を受けやすいと言えると思います。「違った文明」というのが何をイメージしているのか、ちょっと説明不足に思います。
*地球は恐竜の時代(中生代)を終えてから哺乳類の時代(新生代)に入り、氷期・間氷期を繰り返してきた。その中で、この1万年は安定した温暖な気候が続いているが、これはとてもめずらしいことである。現在、人為的な影響で温暖化がおこっているが、これが次の氷河期をひきおこしているのかもしれない。(0031151)
#よいまとめですが、新生代の中で、氷期・間氷期が繰り返しているのは、全体の5%、最近の300万年ほどの期間です。それまでは、中生代ほどではないにしろ、現在より温暖な気候だったと思われます。その点は誤解しないよう注意してください。
*化石生物の進化と絶滅を調べることにより、時代を区分けすることができる。2万年前、地球の1/3は氷河に覆われていた。その後何回か氷期が繰り返された。(0116080)
#氷期が繰り返されていたのはその前です。2万年前というのは現在から見て最後の氷期の最盛期です。もちろん、これが終わりという保証はなく、また氷期が来る可能性はありますが。
*氷床は1年ごとに層になっていて、それらを調べると、昔の気候が分かる。深層流はの存在によって、暖流が寒い地方に、寒流が暖かい地方に流れるしくみが安定して、気候が安定する。(0116102)
#深層流は、表面の海流のパターンを決めていて、それが地球全体の気候に影響を及ぼしているようだ、というのが最近の研究の進展で明らかになってきました。そのことにふれてくれるのはありがたいです。
質問(抜粋)
#よい質問です。降ったあと夏にも融けずにたまった分の雪が氷床をつくっていくわけですが、たまった分だけ、氷が横から流れ出していきます。それがたとえばメンデンホール氷河になっているのです。流れ出す分と雪が積もってたまる分が年間あたりで一致しているので、積み上がることなく、現在の姿を保っていると考えられます。
#人間の影響がなければ、氷期はまた繰り返すと思います。問題はその予測が難しいことです。まだ文明を持ってから、人類は氷期の始まりを経験していませんから。
*氷期になったらどのくらいの寒さになるのでしょうか?
#氷期の気温低下は地球平均で5度から最大10度と見積もられていますが、場所によって異なります。日本の場合は、周氷河地形といって、ツンドラに近い、今のカムチャッカ半島くらいの条件が北海道で、本州では主に針葉樹の森林になったようです。
*温暖化によって氷河は全て融けてしまうのか。
#温暖化の程度によります。全部融けるのは非常に大変なことで、難しいと思います。
*氷河が全部融けたら海面はどのくらい上昇するのか?
#海面上昇は60m分と見積もられています。また、水の熱膨張で水温が平均1度上がると海面が1m上昇するといわれています。
*氷の中に含まれる圧縮された空気によって、その時代の気候の様子を調べるといっていたが、どのような調べ方をするのか?
#氷の中の空気から、二酸化炭素濃度や、メタンなどの温室気体の濃度がわかります。また、氷そのものをつくる水の水素・酸素の同位体比が、蒸発の際に変化する関係で、ある程度温度を反映するしくみがあって、それをもとに気温を推定します。
*マンモスは何を食べていたのですか?
#胃の中を調べると、ツンドラ地帯のコケのような植物が多かったようです。
*なぜ、氷河はラブラドル高原を起点としていたのですか?
#よくわかりませんが、北大西洋からの水蒸気の供給が多く、かつ高緯度で寒かったことから、氷床ができやすい条件がそろっていたのだと思います。北米の氷床形成は、1回だけではなく、少なくとも3回、時期の異なる擦痕から識別されています。
*日本の景気は今年9月頃に回復するらしいですが、今度の氷期はいつ頃来るのですか?
#わかりません。僕は日本の景気より、僕の財布や心の間氷期がいつ来るかを知りたいです。
*日本にも迷子石はあるのでしょうか?
#山岳氷河のあった場所を別にして、日本は温暖で氷床に覆われなかったので、迷子石はないと思っていいです。
*海水が凍るとき、塩分が吐き出されるのはどうしてですか?
#海水が凍るというのは、混合物の中から純粋な水(氷)の結晶ができるということで、化学実験の再結晶法による分離と同じことです。結晶化する際に、水分子が規則的に配列していって、その際に塩分は結晶に入り込めないので吐き出されます。かき氷のように氷に味が付いているのは、氷の間にシロップをしみこませるからですね。
*海面が低下したとき、その地面はどのようになっていたのですか?砂漠ですか?
#よい質問です。その土地によっていろいろで、最初は砂地や岩場だったでしょうが、寒冷地以外ではすぐに(数十年で)植物に覆われ、草原や森林になったと思われます。
感想・意見など
*何万年も前のものが今も残っていることで、それを調べることで昔のことを知ることができるから、私たちはできる限りの力で今あるものを調べるべきだと思った。
#うれしいですね。それが地質学の存在意義の一つだと思います。
*時代を調べるためにとても長い氷の柱を掘っているのが驚きました。
#地層を調べるのにボーリングといって穴を掘って地層や岩石の柱を取り出しますが、それに比べると氷は柔らかいので、作業は比較的楽だろうと思います。ただ、柔らかい分、穴を掘ったところが放置するとどんどん圧力でつぶれてしまいそうですが。