出席カードに書き込まれた質問(6/18火曜12限)

2002前期第9回(大地をつくるマグマ…火山)

 

講義内容の要約例青字…加筆、赤字…訂正)

*プレートができる場所では海嶺となって火山活動している。また沈み込む場所には火山が多く分布している。しかし例外としてホットスポットと呼ばれるところに火山ができることがある。ハワイのキラウエア火山などがその一例である。(0017014)

*火山というのはマグマの地表への出口である。火山は、ふつうプレートの境界にできるが、ハワイの火山は、ホットスポットの上をプレートが移動することで火山がいくつもできた。ハワイのキラウエア火山は1983年から火山活動が始まり、現在も活動を続けている。(0116001)

*火山は決まった場所にしかできない。プレートが沈み込む場所と、海嶺(プレートの生まれるところ)。例外としてプレート内部にできることがあり、ホットスポットという。ハワイ島がそうである。(0116027)

*火山とは地表におけるマグマの出口である。マグマは密度が小さくなり浮いてくるものである。火山はプレート境界や内部にできる。プレート境界には海嶺やリフト帯と沈み込み帯がある。(0116057)

#火山のできる場所がプレート境界やプレートの内部、というと表面全部をさしてしまうのですが、まあプレート内部でも特別な場所では、ということですね。

*地球の中心は高熱で、地表でマグマが固まったプレートのすき間から、もしくはすき間をつくってマグマが噴き出すところが火山である。(0116135)

#マグマが固まってプレートの最上部(地殻)をつくるわけですが、マグマと関係ないマントルの他の部分も、温度が低い、地表に近いところはプレートとして動きます。すき間から/すき間をつくって、というあたりの表現は独創的で本質をついていていいですね。

 

 

主な質問と回答

*地球からマグマがなくなることはあるのですか?

#おそらくあと数十億年、なくなることはないと思います。

*写真集のようなところを生で見ることはできますか?

#ハワイ島のキラウエア火山なら、ある程度の距離で熔岩流を観察することはできると思います。

*プレートの動きの向きが変化する要因は何があるのでしょう?

#新たな沈み込みの開始や、海嶺の沈み込み、大陸衝突などによる沈み込みの停止がもっともありうる要因です。プレートの動きは、基本的に沈み込みが駆動していますので。

*地下にあるマグマの放射性物質は、人に害はないのですか?

#特に多いわけではないので、害はないと言っていいと思います。人体に含まれる炭素にも、ある割合で放射性炭素が含まれているくらいですから。身体にガイガーカウンターを当てると、多少反応があります。また、宇宙からの放射線も、わずかですが大気を突き抜けて地表に届いています。要するに、放射線はどこにいってもあるのが普通で、少なければ気にする必要はなく、多すぎる場合(自然放射線の数倍以上)に注意する必要がある、ということです。

*ハワイ諸島で、島が完成する周期はあるのか?

#わかりませんが、現在のハワイ島、マウイ島、オアフ島などの島の形成年代から逆算すると、100万年間隔くらいでしょうか。でも、一つの島ができあがるのに100万年以上かかっていますし、特に周期性はないかも知れません。

*ハワイ島は何千年のあとになると、プレートとともに移動して最後はプレートの下にもぐっていくのか?

#そうかもしれませんし、下の方は沈み込んでいき、島の上の方は沈み込まれる側の大陸地殻に挟み込まれる、という可能性もあります。

*普通の地面を掘り下げていった場合、マグマを掘り出すことは可能ですか?

#原理的には、圧力低下で融点が下がるのでマグマが生じることは可能ですが、50km程度は掘る必要があり、そこまで掘る技術がありません。人間の掘ったもっとも深い穴で、せいぜい10kmです。

*火山の莫大なエネルギーを利用することはできないか

#火山そのものはコントロールが難しく、当分無理でしょう。ただ、マグマに由来する地下の高温の部分は、地熱発電や温泉などで、既に利用されています。

*人間の力で火山を噴火させることができるのでしょうか?

#条件にもよりますが、まだ難しいと言うべきではないかな。

*熔岩の粘りけはどのくらいのものか?

#いろいろあります。

*マグマの粘性というのは何で決まるのですか?

#よい質問です。マグマの化学組成、温度、それに結晶の入り具合、揮発性物質(水蒸気や二酸化炭素などの火山ガス)の入り具合で決まります。

*死火山、休火山、活火山の違い

#かなり人為的な区分なので、現在はこれらの呼び名はあまり使わないようにしています。

*日本で噴火する可能性のある火山はどれくらいあるか?

90くらいだと思います。

*マグマだまりでゆっくり冷えたものと地表に出て急激に冷えたものが違うのはなぜか?

#授業で説明するつもりですが、結晶(鉱物)の大きさの違いの他、高温の段階でできる結晶と、ゆっくり冷えたときに初めて出現する鉱物との違いや、組織の違いができるからです。マグマは混合物であり、純物質ではない。融点も一定しないし、冷え固まると複数の鉱物が出現する。それがこのような違いを生み出す原因です。

*海水がマグマで蒸発したら塩とかはできちゃうのだろうか?

#はい。街に接近する熔岩流を、海水をホースでかけて冷やして、何とかくい止めようという試みが、アイスランドや日本で行われましたが、海水中の塩の結晶や、火山ガスと反応した塩化物の結晶などが熔岩の表面にできたそうです。

*マグマが流れていくと、先の方の温度はだんだん低くなっていくのだろうか?

#流れている限りは高温で、ハワイであれば1000度くらいあるはずです。熔岩流表面や側面、底面の冷えたところが、パイプになるというか、多孔質であるため断熱材の役割を果たし、ずっと先まで冷やさずにマグマを運ぶ働きをしています。

*噴火した瞬間の風は熱いのか?

#いや、高温の噴火したところが上昇流になり、そこに向かって風が吹き込むのだから、熱くならないはずです。実際、噴火に立ち会った人も熱い風が吹いたとはいっていません。熱雲や火砕流は別ですが。

*核・マントルがあるのは地球だけですか?

#地球型惑星で共通と考えられます。誰も割って中を見た人はいませんが、密度などから推定できます。

*熔岩に覆われた土地は何年くらいで豊かな土地になるのですか?

#降水量によりますが、

*ホットスポットは地球上にどのくらいあるのですか?

#数え方にもよりますが、100-300くらいあるようです。資料を探しているので、ちょっと待ってください。

*ホットスポットはどうやってつくられているのですか?

#どうやって、といわれても困るのですが、例えば鍋でお湯を沸かして、沸騰し始めるとき、鍋のある一点からまずぽこぽこと細かい泡が連続して出てくるようになりますね。ホットスポットというのは、そういう場所のことだと考えられます。どうやら根が深くて、核とマントルの境界あたりから上がって来るという推定もありますので。

*絶対に動かないプレートはないのですか?

#絶対に動かないプレートというのはないのですが、動きにくいプレートというのはあって、ここ2億年ですと、アフリカプレート、ついで南極プレートがあまり動いていないと思います。

*イエローストーンと火山とどういう関係があるのか?

#北米西部のイエローストーン国立公園は、立派な火山地帯ですが、そういう話ではないのですか?

*黒みかげというのは日本にも外国にもありますが、つぶの大きさが違うのはなぜですか?

#つぶの大きさは、同じマグマだまりが冷えた岩体でも、中心部と端の方ではずいぶん違います。場所による冷え方や、成分の違いによる結晶化の条件の違いです。

*地球の核が完全に冷えるとどうなりますか

#完全に冷えるというのはどのような状態を指しているのかわかりませんが、外核が冷えると固体になりますので、そういう状態を考えると、地磁気がほとんどなくなります。その結果、太陽風による大気のはぎとりが進行し、数億年で大気が薄くなってしまいます。

*マグマの成分は、どこで噴き出しているものでも同じなのですか?

#違います。同じ火山でも時期によって異なることが多く、その違いが何によるのか、地下のマントルの状態の違いか、マグマだまりの中での結晶化の進行の違いか、あるいはそれ以外の要因があるのか、非常に重要な研究のポイントになります。

*枕状熔岩はずっとこのままの形なのですか。崩れて砂になることはないのですか?

#海底の場合は基本的には堆積の場なので、他の土砂に埋められ保存されやすいのですが、地層に保存された枕状熔岩の地層を見ると、たしかに崩れた火山砕屑物になっている部分も多いです。

*地表に流れ出した熔岩はどのくらいの時間で冷えるのですか?

#熔岩流の形態(厚み)にもよりますが、数時間から数年くらいではないでしょうか。

*火山の噴火によるCO2はどのくらいありますか。温暖化に影響しますか?

#長期的には重要です。ある推定では年間23億トンの二酸化炭素が火山から供給されるとしています。これは生物間の炭素移動に比べると何桁も少ないのですが、数百万年を越えるスケールでは大きく効いてきます。火山噴火では、二酸化硫黄などの温室効果ガスも出ますし、一方で成層圏に火山灰を巻き上げると太陽光をさえぎり、寒冷化に向かうという効果もあって、なかなか評価が難しいです。

*溶岩と熔岩は違うのですか?

#文字の違いです。当用漢字に熔岩の「熔」の字がないので、溶岩と表記しているだけのことです。本当は、水に溶けることに「溶」の字を使い、融解には「熔」の字を使うべきだと思いますが。

*温泉の水はどう熱せられているのか。マグマに触れたら水蒸気爆発してしまう気がするが。

#地下で圧力がかかっていると、沸点が高くなり、200度とか300度の水ができます。マグマに直接水が触れるのではなく、その周囲の高温になった岩石に暖められて、温泉の水ができると考えていいと思います。また、火山が過去1000万年くらいの間に多くあったところは、地熱地帯として、その余熱が残っています。今火山がなくても、かつて火山活動があった、そういうところでも温泉は多いですね。

*山脈全体が噴火することはないのか

#ありません。なぜなら、噴火口が小さいから噴火できるのです。もし大きくマグマの上面が開いてしまったら、鍋のシチューのようにぼこぼこと火山ガスがわくだけで、噴火に至らず冷え固まってしまうでしょう。炭酸飲料の噴き出す場合と同じで、出口が狭いことが本質的に噴火には重要です。