2003前期末試験の解答・採点のポイント

 2003.8.7-


解答のポイントを以下に述べる。

1.以下の項目の中から2つを選び、簡潔に説明せよ。

 a)太陽系の誕生

  約46億年前、星間雲を材料に誕生。原始惑星系円盤、微惑星の形成、微惑星の衝突合体成長など。

 b)ストロマトライト

  主にシアノバクテリアがつくった生痕化石。層になった岩、という意味。材料は石灰質の砂や泥。

 c)縞状鉄鉱層

  38億年〜20億年前頃に海底で形成された地層で、石英と鉄鉱物の互層からなる。世界の主な鉄鉱石はこのタイプの鉱床。

 d)最終氷期

  第四紀は氷期−間氷期サイクルが続いてきたが、その最後の氷期で、約12万年前から1万年前まで。もっとも寒冷化した1.9万年前には、北米、スカンジナビア半島などユーラシア北部に巨大な氷床が形成され、海面は130m程度低下した。

 e)マントル

  地球の層構造を大きく分けると、中心から核、マントル、地殻となる。マントルは岩石でできた層で2900kmの厚みがある。地殻はマントルの岩石が部分融解して生じたマグマが浮上して冷え固まることで基本的につくられている。

 f)月の斜長岩

  アポロ計画で採取された、月の起源を探る上で重要な岩石。月のマグマオーシャンの時代に、マグマ中で結晶化した斜長石が密度がマグマより小さいために浮上し、集積してできた。月の高地を主に構成している岩石。

2.地球大気中の酸素は、どのようにして現在の濃度に達したと考えられているか。地球の歴史の中で、酸素が増加したしくみを説明せよ。

  酸素はもともと原始大気中には含まれていなかった。二酸化炭素と窒素を中心とする大気であったが、海水中で生物がうまれ、酸素を放出するタイプの光合成をするシアノバクテリアの出現と繁栄により、海中の鉄分が酸化されて沈澱した。やがて酸素濃度の上昇とともに真核生物が生まれ、多細胞生物が出現し、約5億年前にはオゾン層が形成されて陸上植物が現れた。陸上への植物の進出と繁栄は、化石燃料の形成とともに酸素濃度の急速な上昇をもたらし、現在とほぼ同じ濃度の酸素が古生代後半には達成されていたと考えられる。

3.古生代、中生代、新生代という地質時代は、それぞれ生物進化や大陸移動の上でどのような特徴があるか、説明せよ。

  古生代:カンブリア紀の生物爆発。殻のある生物の出現。造礁生物の出現。脊椎動物(魚類)の出現と進化。両生類、爬虫類、陸上植物の出現。森林の形成。超大陸パンゲアの形成。

  中生代:爬虫類の繁栄。温暖な気候。アンモナイト類の繁栄。哺乳類の出現、鳥類の出現。被子植物の出現。ゴンドワナ大陸の分裂。

  新生代:哺乳類の適応放散。大陸移動の進行。有袋類の独自の進化。鳥類の繁栄。日本列島の大陸からの分離。ヒマラヤ、アンデスなどの大山脈の形成。

4.化石燃料のひとつについて、その形成のしくみを説明し、それをふまえて化石燃料の急速・大量消費によってどのような問題が起きるのか、簡潔に説明せよ。

  石炭:森林をつくる植物の湿地での埋没、堆積による温度圧力上昇とガスの散逸から炭素比率増加。石油:堆積盆地の形成とプランクトンの繁栄、死骸の堆積物への供給、堆積の進行による圧力と温度で熟成の進行。・・・。

  問題:地表の炭素循環サイクルを離れて地中に蓄積されていた炭素が、燃焼によって再び炭素循環サイクルに加えられ、流通量が増加する。石炭・石油は硫黄なども含み、大気汚染の原因になりうる。二酸化炭素増加による地球温暖化。資源の枯渇。

5.恐竜はどのような生物であったか、進化と絶滅について簡潔に説明せよ。

  脊椎動物の進化の歴史のなかで、陸上生活に適応した両生類がデボン紀に出現。さらに乾燥に耐える皮膚(うろこ)や殻のある卵などのしくみを備えた爬虫類が現れ、中生代三畳紀に恐竜が現れた。初期の恐竜は基本的には二足歩行の肉食性の動物だったが、適応放散の結果、植物食のものの中には、巨大化し4足歩行をするものなども現れ、一方で強力なあごと歯を持つ肉食恐竜も出現し、進化していった。白亜紀末に恐竜は絶滅するが、その直接的な原因として、直径10kmほどの隕石(小惑星)の衝突が考えられている。

6.鉱物はどのように生活の中で利用されているか、具体的な鉱物名を挙げ、使用例を説明せよ。

  ダイヤモンド…宝石、カッターの刃など。石英…水晶発振子、光ファイバー原料、ガラス原料、シリコン原料など。その他いろいろ。岩石や鉱石を鉱物と混同したものは4点減点。記述内容により加減。

7.地球上で火山が分布するところは限られている。その理由について、マグマ生成のメカニズムと関連づけて、簡潔に説明せよ。

  火山が分布するところ:プレートの拡大境界、プレートの収束境界(沈み込み帯)、ホットスポット。メカニズム:

8.火山噴火や地震の予知が難しい理由を簡潔に説明せよ。

  周期性の問題:再来間隔が長い。規則性を見いだすのが難しい。地下深くに原因があること:直接応力状態を測定できない。地下の構造が均一ではない。・・・など。

9.軟弱地盤のできる原因について簡潔に説明せよ。

  水によって運ばれた、新しい時代の未固結の地層が軟弱地盤の主な原因。地層をつくる砂や泥の粒子の間には間隙水があり、この間隙水の割合が多いと、地盤沈下や地震の際の液状化の原因になる。新しい地層は固結が進んでいないことのほか、地下水面が地表に近いことも軟弱地盤の理由になりうる。東京では東京湾に流れ込む河川の下流部の低地(下町)や、埋め立て地が問題になる。

10.地球上の多様な生態系を維持するために、水が果たしている役割について、水の性質をふまえて簡潔に説明せよ。

  生命は水を必要とすること。水は様々な物質を溶かし、運び、植物の光合成や動物の消化・吸収の際に役立つ。水は地球上を循環し、熱を運ぶことでマイルドな気候をつくり、多彩な生物種を維持することに貢献しているほか、不均一な降水量も、水の少ない砂漠などの環境でそこに適応した生物を生み出し、多様化につながっている。

11.安全で快適な都市をつくる上で、地球の歴史や地球システムについての知識は、どのように活かすことが出来るか。君の考えを述べよ。

  内容が間違っていなければOK。ただし誤字脱字、論旨不明確の場合など、減点対象。


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