地学・地学(1) 専門基礎科目 受講案内 2006
2006.4.11 萩谷 宏
*地学とは
地学 …広い意味では、earth and planetary sciences(地球惑星科学)
狭い意味では、geology …geo(大地の)+logy(logic=論理)
この講義では、わたしたちをとりまく世界(地球・宇宙・生命)のなりたち・歴史と、現在の地球で生起する、地震や火山、地殻変動、あるいは大気・海洋系の熱輸送など、各種の地学現象を扱う。
さまざまな現象や事物のなりたちを知り、そこから自然界のさまざまなロジック、法則性を読みとることが、地学を学ぶ意義である。
我々の都市環境の周囲には、大気や水、地形や地質、生態系といった自然環境があり、さらにその外側には生命を支える太陽があり、月や金星、火星といった太陽系の天体があり、夜空には無数の恒星や銀河が浮かぶ。
文明生活を支える地下資源は、過去の地球のマグマ活動、そして生物のはたらきで蓄積されてきたものである。鉄鉱石は20億年以上前の生物活動の産物であり、石油は1億年前のプランクトンの死骸である。我々が呼吸する大気中の酸素でさえ、3億年前のシダ植物の大森林の遺産といってよい。
都市文明や都市環境の正しい位置づけには、外側からの視点として、都市を囲む自然環境の成り立ちを、時間的・空間的にきちんと知る必要があるのではないだろうか。
A)すぐ役に立つ地学 …(実用の地学) 予測、対策、産業活動
地震予知、火山噴火予知、災害予測、地球環境保全、地下資源開発、土壌・水質・大気汚染防止、砂漠化防止、燃料資源探査、建造物の選定、地盤強度・・・
B)すぐには役に立たない地学 …(教養の地学)
地球の歴史、地球の起源、マグマ生成のメカニズム、化石化のプロセス、鉱物の分類、結晶系、岩石の分類、大陸衝突と造山運動、古生物の知識・・・
…地球システムのなりたちを知らずして正しい対応は不可能。基礎があってこそ建造物が成り立つ。基本的な知識が、将来の応用のために重要。
*講義の進め方(基本パターン)
・イントロとしてのVTRクリップ(5〜10分)
・VTRの内容に関する補足説明、
・板書による講義。標本類の回覧。要点のまとめ
・VTR2(5〜10分)
・VTR補足解説。
・質問の時間。次回予告。出席カード記入時間。
基本的なマナーを守ること。(遅刻しない。携帯電話の電源オフ。etc.)
質問は歓迎する。手を挙げて時間中に質問し、講義の質向上に貢献した場合は成績評価に加える。
(講義内容の間違いを発見した場合などは、その場で指摘してくれるとありがたい。)
*出席カード(各回課題)
毎回配布する出席カードには、各回の講義内容要約や課題回答を記入し、質問や感想を記入するスペースを用意する。課題の記述内容を4点満点で採点し成績に加える。学籍番号・氏名を自筆で記入すること。代筆・代返は依頼者・実行者双方の成績を0点とする。
*ノートの作り方
背綴じのノートを推奨。ルーズリーフは、バラバラになりやすいので勧めない。
各回の配布プリントに、講義の大枠と要点、参考文献を記入してある。それとは別に、ノートに板書を写し、講師の話した内容を項目ごとにメモしながら、見やすいノートをつくることを勧める。
*学習を深めるために
指定図書として、前半の講義内容に関連して、「生命と地球の進化アトラスI,II,III」を図書館にそろえているので参考にされたい。また、講談社ブルーバックス「新しい高校地学の教科書」を追加予定。
各回の講義の際に関連する分野の参考書を紹介するので、興味を持った内容については、それらを手がかりに自分で学習を進め、レポートとしてまとめることを勧める。
地学では現場の観察が重要である。夏休み中に「フィジー諸島共和国における自然体験実習」、後期に「身近な火山学ゼミナール」を実施する。また宮ヶ瀬ダム見学会、博物館見学、いわき市での化石採集を休日に計画している。詳細は後日案内を配布する。
*成績評価
期末試験成績50%と各回の講義で提出する課題を50%として評価する。ただし、欠席分はレポートである程度(原則として10%まで)埋め合わせることができる。レポートは学期末にそれまでの提出分を一括して評価する。(必ずしも提出数に比例して得点は増えない。質を評価する。)
課題点の状況はwebに随時集計結果を表示・公開する。試験成績も採点が済み次第公開する。採点集計ミスがないか自分の成績をチェックすること。試験答案はJABEE認定のため返却できないが、希望者には採点済み答案のコピーを手渡す。
*レポートの書き方
テーマ:講義に関係した内容で、自分が興味を持ったものであれば、どの分野で書いても良い。
(講義の際に紹介する参考書も、テーマ選定のヒントになるだろう。)
@調べる
テーマを設定し、それについて調べる。単行本や論文など、文献を読む。
インターネット利用も可だが、できるだけ出版されたものを。必ず複数の情報源にあたること。
自分で実地調査したり、データを分析する作業を高く評価する。単なる受け売りは評価しない。
二次情報は、誰かによって加工された情報であることを考えると、自分の目で確かめた、
一次情報の重要性がわかる。
A考える
複数の資料を調べると、情報の不一致に出くわすことがある。その原因を自分で判断しなくてはいけない。学問は日々進展しているので、いつ、誰が書いた情報か、ということが、その情報の価値を評価する上で大事になる。自分の頭で考えることが大事。オリジナルの考察を評価する。きちんと考えてレポートを書くなら、データとは別にその判断材料を再度探し集めることになる。
Bまとめる
資料から引用した情報と、自分の調べたこと、考えたことを区別して記述し、まとめる。
引用文献、参考文献を明示すること。引用の明示は自分の責任範囲を限定することである。
本の内容の引き写し、既存のwebサイト、他者のレポートの丸ごとコピーがあった場合、成績評価の対象としない。オリジナルの記述であることを諸君自身が証明できなければ得点にならない。そのために、引用文献の明示や、引用箇所の明確な処理が必要である。
レポートは講義時間前後に講師に手渡すことを基本とする。レポートの電子メールによる送付は構わないが、サーバー不調などによる不達の可能性を承知のこと。また、3MB以上のファイルサイズのメールは受け取ることができない。
webサイト 講義記録、補足情報、発展学習のために。成績評価も随時アップされる。
http://www.chemie.org/geo/
担当教員連絡先:萩谷 宏 hiroshi.hagiya@nifty.ne.jp 070-6115-9888
1号館604内線2418 地球科学・学生研究室
6号館1階化学研究室/生命・地球科学研究室 内線2413
火曜午後をオフィスアワーとして設定しているが、質問はいつでも対応する。ただし他大学、放送局などに出張不在のことがあるので、訪問は電子メールで事前に連絡してほしい。
補足事項
都市基盤工学科(火曜1限)の萩谷クラス・大島クラスについて
・いずれのクラスを受講しても構わないが、履修申告の際に、選択したクラスのコード番号を記入すること。期末試験は原則として受講したクラスの試験問題を受験すること。(共通問題を出題するか検討中。)
・大島先生は火山学の専門家であり、火山や防災に興味のある学生には大島クラスの受講を勧める。萩谷クラスは地球史をベースに、比較的やさしい内容を扱う。
大学での学びについて
・講義を受けて、それだけで全部を理解するのは不可能である。大学での勉強は、自分で調べたり、勉強することが前提であり、講義はそのための手がかりやきっかけを提供するのが役目である。
みずから学ぶ姿勢という点で、レポートの作成を奨励している。建築学科の地学(2)では、期末試験を行わず、期末レポートで成績の50%を評価する。前期の地学(都市基盤)・地学(1)(建築)では、期末試験は行うが、レポートの成績を最大10%加点するほか、欠席分の埋め合わせとして、自学自習のレポートを評価する。
毎回の講義で、参考書を紹介しているので、学期末までに各人が紹介された参考書のうち2,3冊は読み通していることが望ましい。また、複数の資料をあたることで、興味を持ったテーマについてレポートを作成できるはずである。
紙の上だけの勉強ではなく、現場に出て、実物をさわっての学びも重要である。博物館の見学や、野外での地形や地質の観察のようなレポートも歓迎する。
社会に出たときに必要になる勉強は、目の前の課題に対して、自分で資料を探し、データを調べ、自分でその課題についてまとめる(レポートを書く)ことがほとんどである。誰も講義などしてくれないし、また学校に出向いて講義を受けている時間もない。レポートを書くことは、将来、諸君が実際に直面するであろう、そのような課題解決の訓練でもある。
大学では、知識を身につけ、知恵をもつ人間が評価される。本を買うのに金をけちるな。辞書を引くことをおっくうがるな。すべて諸君が格好良い、一人前の社会人になるために役立つことだ。