レポートの評価とコメント

 

 評価基準として、レポートの内容はもちろんだが、データの出典や引用文献を明記していない場合、その他、レポートに関する注意事項の指示に従っていない場合は、1−2点減点している。

 力作が多かったが、参考書をそのまま写したようなものも若干見受けられた。しかし、レポートを書くための努力を配慮し、出席点とのバランスを考えて評価するようにした。

 

「地球の歴史」9917108 評価7

 力作です。努力を認めますが、2点、問題があります。第一に、引用文献が明記されていないこと。第二に、どのような文献を引用したのかわからないが、生物進化に断定的な記述が見られること。事実と推定との間には、大きな開きがあり、推定にしても、その根拠(地質学的証拠)が明示されなくてはいけません。

 最後に、これだけの努力をして、きみはどういう感想を持ったのか。何を得たのか、書いてくれるとうれしいですね。点数をとるためだけのレポートでは、もったいないです。

 

「無題」(生命の歴史)9917130 評価7

 書いたことを理解しながら要領よくまとめています。引用文献の明示がなされていないことが残念です。また、文献が少し古いようです。それらの点は別にして、よくまとめていると思います。

 

「造岩鉱物における固溶体に関して」0031033 評価9

 多くの文献を調べ、よく考えて書いています。固体拡散のイメージができていないようなのと、液体・固体の状態について、混乱があるようですが、固溶体組成から結晶温度が求められるのではないか、という考えに自力でたどり着いたのは評価できます。もう少し追求してみると面白いのではないでしょうか。

 

「地震学は何ができるか?」9917125 評価9

 非常によくできたレポートで、分かりやすく読みやすくまとめている。引用文献などの基本的な項目も押さえている。しかし、どのくらい自分で考えて書いたのか、単に抜き書きしてまとめたのか、これだけでは判断できない。努力に対しては評価するが、オリジナリティという点からも、自分で感じたこと、考えたことを付け加えて欲しい気がしました。

 

「地震の前兆現象について」9917142 評価7

 前兆現象とされるものについて、よく調べてまとめていますが、引用元が明記されていないのが残念です。また、本当に前兆なのか、単なる偶然八尾も追い込みではないのか、どのようにしたら判別できるのかを考えて欲しかった気がします。振り返り効果とでも言うべきか、大きな地震があったから、何か前兆現象が「あったに違いない」と考えて、思い出してみると、こんな異常があった、あんな異常があった、という事柄がたくさん出てくる。けれども、本当にそれが前兆と言えるのか、地震がなくても起こりうる、あるいはふだんも起きていることではないのか、という検討を加えて、冷静に判断しようというのが科学的態度ではないでしょうか。例えば僕には野良猫が姿を消すのが前兆だとはあまり思えない。ノイズの中から信号を拾うのが大事なことで、ノイズをいたずらに増やしても本当の前兆は見えてこないと思います。

 

「地学」9717008 評価7

 HPの記事を元にしたレポートだが、引用元を明記していないので減点。田野畑村の津波の記録は、もっとくわしく書いて欲しかった。

 石油の採取は、日本でも新潟県などで細々と行われています。油田の規模が小さく、採算がとれないのが実情です。日本海側でとれる石油は、日本海の形成に伴う、第三紀の堆積物、特に珪藻質泥岩が石油の起源になっているようです。

 

「地球の寒冷化について」9917144 評価7

 資料の引用元は新聞記事のようですが、何月何日の何新聞の記事であるのか、記載して欲しいです。温暖化が人類の責任で引き起こした問題だという指摘はその通りですが、ではどうしたらいいのか、何をすれば有効な対策になるのか、もう少しつっこんで考えてみてもいいのではないでしょうか。

 

「知られざる地球と生きている地球」0117028 評価7

 小出さんの本をもとに、よく調べていると思います。引用した地表の温度の歴史の表は、ちょっとおかしいです。例えば、43-40億年前に地表温度が700度あったとすると、その年代を持つジルコンや花崗岩をつくることができません。すでに44億年前に海洋が存在下可能性を考えると、地表温度は400度以下になっているはずです。もう少し、批判的態度で読んで欲しい気がします。

 

「士別の地質形成史」0016054 評価6

海台や中代など、誤字が目立ちましたのでこれから気をつけてください。引用文献の明示ができていないのが残念です。地域地質について調べるのは大事なことです。エスカレーターモデルをよく理解しているように思えます。

 幌加内地域の地質を研究していた友人と、学科の同級生で北海道のテクトニクスの研究者がいますので、内容については問い合わせておきます。

 

「太陽」0016011 評価7

 webで調べたレポートです。誕生後間もない地球に降り注いだ太陽エネルギーが、現在よりも25%小さかったというのは、たぶん間違いのないところだと思いますが、だからといって当時の地球が氷の世界であったと考えるのは、正しくないと思います。授業で扱ったように、初期地球の大気は二酸化炭素を主体にしたものでしたので、その温室効果が強くはたらき、表面の気温を現在とそれほど変わらないレベルに維持できていたと考えられています。氷河性堆積物の証拠も、27億年前、24-21億年前のものが見つかっているだけで、それよりも、「液体の」海の堆積物の方が38億年前からずっと、普通に見られます。

 よく調べて書いていますが、授業で扱った内容をふまえてよく考え、内容をわかって欲しかった気がします。

 

「宇宙建築」9816069 評価7

宇宙での構造物建築で、膜の構造が重要だというのはその通りですが、どのような機能を持つものとしての「膜」なのか、定義して欲しい気がします。また、発想そのものは面白いのですが、石をどのように膜に使うのか、そのメリットは何か、もう少し検討して欲しいです。例えば地上からの物資輸送のコストを考えると、その場にある物質を使えれば、その方が有利であることは否定できません。岩石を融解・急冷してガラスにしたら素材としてどうなのか、あるいは、構造物を半地下式にしたらどうなのか、など、検討の余地があるのではないでしょうか。

 

「地球の表面と内部・地殻の構成」0016032 評価5

 文献が明記されていないので、どこかの参考書の引き写しと取られても仕方がありません。図を描いてあるのはよいことだと思います。せめて、調べてどんな感想をもったか、書いて欲しい気がします。

 

「月」0016010 評価7

 引用・参考資料を明示して欲しかった。よく調べたと思いますが、どこかの文章の引き写しなのか、君自身のオリジナルなまとめなのか、わからなくなってしまいます。

 

「ヴェーゲナーの「大陸移動説」の見解」9816091 評価9

 独自の視点で、Wegenerの仕事を評価し、まとめたレポート。大学教育に関して「自身の専門分野で物事を考え、処理してしまう頭になりがち」というのは、鋭い指摘だと思います。が、何の専門分野もなしに、物事を考え、適切に処理することが可能か、というと、それも無理のような気がします。要するに、1)ある専門分野を基礎にして2)しかし必要以上に自分の専門にとらわれずに、物事を考え、処理する能力が必要だというべきなのではないでしょうか。

 より広い視野で、多くの側面から物事を考え、バランスよく判断する能力の大切さや、その具体例として、一見、明快な議論のなかに、大きな落とし穴がひそんでいることをわかってもらえたらいいな、と思っています。