課題解答例 2009

−正解はひとつではありません。これ以外にも正解はありえます。あくまでも参考のために。

 

*宇宙を調べることは、地球や太陽系を知る上でどのようなメリットがあるのか、簡潔に説明してください。

 太陽系や地球は宇宙の一部であるので、宇宙(他の天体)を調べることは太陽系や地球の普遍性や特殊性を判断する上で役に立つし、さまざまな成長段階の天体を観測することで、太陽系や地球の歴史を理解し、未来を予測することができる。

 

*惑星上に生命が誕生し進化する条件はどのようなものか、簡潔にまとめてください。

 惑星の材料がどこでもほぼ同じであり、形成過程も同一であると仮定する。恒星からの距離が、表面で液体の水を維持できる程度であり、大気や水を表面に保持できる充分な重力が生じるだけの質量を惑星が持っていることが必要である。また、恒星の寿命が生命の進化に必要なだけの長さを持っている必要があるので、恒星のサイズは太陽と同じくらいが望ましい。

 

*月を調べることは地球に住む我々にとってどんな価値があるのか、簡潔に説明してください。

月は地球に最も近い天体であり、地球の起源や初期進化についての情報を与えてくれる存在である。また、月面探査の技術は、将来の惑星探査や、深宇宙探査の基礎となるであろう。人類は、有人月面探査に挑戦することで、宇宙の暗闇の中に浮かぶ地球という惑星を初めて客観的に外から眺めることになった。それが「宇宙船地球号」の認識を生み出したといえる。

 

*殻や骨格を持つ生物の出現は、生物界や地球表層にどのような変化をもたらしたのか、簡潔にまとめてください。

 (生物界)硬組織を持つことで生物種の多様性が増加し、食う食われる関係の生存競争を激化させ、進化を加速したと考えられる。生物礁が出現し、生態系は多様性を増した。(地球表層)生物がリン酸カルシウムや炭酸カルシウムを大量に消費することとなり、これらの成分が海洋から除去され、あるいは偏在するようになった。生物礁が大量に形成されたことで、大気中の二酸化炭素濃度が低下し、オルドヴィス−シルル紀の氷期を引き起こした可能性がある。

 

*陸上植物の出現と繁栄は地表環境や生態系にどのような変化をもたらしたのか、簡潔にまとめてください。

 分解されにくい身体を持つ陸上植物が広範囲に広がり、湿地に埋没し石炭となることで、大気中の酸素濃度の急速な増加をもたらした。森林は陸上生態系の基礎となり、脊椎動物の上陸に必要な条件を整えた。

 

*本日の講義内容(DVD「恐竜再生」含む)の要点を簡潔に(3行程度の文章で)まとめてください。(箇条書き不可)

 恐竜は大量絶滅後の三畳紀に出現した爬虫類の1グループであり、直立し二足歩行が可能な敏捷な骨格をもつことで繁栄した。ジュラ紀には竜脚類や大型肉食恐竜が進化・発展し、白亜紀にかけて様々な種類の恐竜が現れ、翼竜や首長竜、魚竜などとともに海陸空の生態系を支配した。しかし中生代末には多くのグループが衰退し、ユカタン半島に落下した小惑星の衝突により引き起こされた大量絶滅にとどめを刺された。

*「生物の進化は、隕石衝突による大量絶滅など、偶然に支配されている」という考えは正しいか。

 隕石衝突のタイミングはランダムに起きると考えてもよいが、そのような環境激変に対して生き残れるかどうかは偶然ではなく、その時点で生き残る必然性を持った体制や生活様式をもった生物のみが生き残っている。その点で、進化は偶然に支配されているとは言い切れない。

(そもそも、進化には理由がある、と考えることで進化生物学は発展してきたわけで、すべて偶然だとしてしまったら、「聖書に書いてあることを信じなさい」という時代に逆戻りになりそうな気がします。これは極論だとしても。科学の原点に関わることです。)

*地球に火山活動がまったくなくなったと仮定すると、現在の地球とくらべてどのような変化が予想されるか。

 火山ガスを通じて放出される二酸化炭素の供給がなくなり、長期的には表面が寒冷化する。また、火山活動以外の方法で地球内部の熱を放出するために、プレートの移動速度が速くなり、地下の温度勾配(地温勾配)が上昇するだろう。火山島がなくなり、珊瑚礁の発達がおさえられる。

*(地震)本日の講義内容の要点を簡潔に(3行程度の文章で)まとめてください

 地震は固体地球がマントル対流(プレート運動)を起こして、冷えた表面部分が動いている以上、不可避のものである。地球表層の動きによって、プレート境界では様々な現象が起こり、エネルギーや資源を人類にもたらしている。日本列島が成立し、東京のような大都市が平野部に生まれたのも、複数のプレートの境界で押し合いが生じていることが重要な原因であり、地震を引き起こすプレートの動きは、一方で人類にとって恩恵ももたらしている。

*鉱物は人間の生活にどのように関わっているか。自由に考察せよ。

 人間の体内にある骨や歯は鉱物であり、生命活動の維持に大きく関わっている。鉱物は金属資源や非金属資源として、大量に利用されているほか、水晶発振子やレーザー光源などのように、それ自体の性質を利用した電子部品も数多くつくられている。コンクリートや鉄、ガラスなどの原料もすべて天然の鉱物であり、都市そのものが鉱物からつくられているとも言いうる。

*都市ができることによって、その地域の水循環にはどのような変化が起きると考えられるか、説明してください。

 降水−地下水−河川水−海洋−蒸発といった、自然の水循環に対して、局地的に水循環のバイパスをつくることになる。都市の水の多くは上流部でのダムから取水し、産業活動や生活に利用された後、最終的に自然河川に放流されることになり、自然の水循環に汚染や水量変化など、大きな影響を与えることになる。どんなに水処理をうまくしたとしても、もとの自然の水循環システムと同じ清浄さを保つことはできないし、都市の規模によっては自然の浄化作用を超えて汚染の拡大を引き起こす。

*都市あるいは文明を維持するための自然の条件とは何か。簡潔にまとめてください。

 食料生産の維持、そのための土壌や気候条件など、農耕を行うための諸条件が整っていること。例えば、温暖な気候やある程度の降水量が維持される必要がある。燃料の供給も重要である。土壌の保全などの役割を考えると、森林の重要性は無視できない。水源も森林によって涵養される。また、それぞれの都市の発達要因によるが、例えば交通の要衝として発達した都市の場合、街道や水運を支える地形や河川が生命線となるように、都市の存在理由となる条件を満たしつづけられるかどうか、という問題がある。(例:エフェソスの海岸線埋め立てによる衰亡)