【使用上の注意】
@ 主みだしは、“《”と“》”でつつむ。
A 主みだしの直後“[”と“]”内は、主みだしの日ニッ本ポン語の東京の標準高低語勢をしめす。詳細は<K英語に使用されない発音記号(i)高低語勢記号について>をみよ。
B(1) 主みだしに対応する個々の英単語に、英国式発音の発音記号をつけた。また、英語以外の単語につけられた発音記号の詳細は、<K英語に使用されない発音記号(ii)その他の発音記号について>をみよ。
(2) 他欄で主みだし語に採用されている単語は、強語勢位置accent[¢ks§nt](以下「強勢位置」と略記)のみを、強勢をつけてよまれるべきラテン文字上に“´”をつけてしめした。その理由は、
1 一般に外国語習得でもっともむづかしい技術は、はなしている内容をききとることだ。この点、子音を曖昧に発音する傾向にある米国式発音にくらべて、英国式発音は子音をかなり明確に発音するので、ききとりはそう困難ではない。
2 世界の言語を語勢の形式でわけると、日ニッ本ポン語、中チュウ国ゴク語、瑞典語(スウェーデン)、羅甸(ラテン)語、古典希臘(ギリシア)語などの高低語勢(pitch[pit¸] áccent)と、英語、独逸(ドイツ)語、仏蘭西(フランス)語、現代希臘(ギリシア)語などの強弱語勢(stress[stres] áccent)に分類される。さて、英語をはじめとする強弱語勢言語圏で生活したことのあるものであれば、会話は強勢位置の疎通でなりたっているといっても過言ではないことがわかるだろう。また、ドイツ語やフランス語とことなり、英語は強勢位置が不規則なため、どんなに英語の音節の発音がよくても、強勢位置をまちがえて、通じないことはよく経験することだ。たとえば、われわれ日ニッ本ポン人が海外旅行にいったときfifteen[fiftí:n] dollars[米d½l«z]のつもりでかった製品にその3倍以上のfifty[fífti] dóllars請求されておどろくことがある。これは、強弱語勢で意味を判別する習慣がないためにおこる喜劇だ。この例からも、会話中での強弱語勢の位置がいかに大切かわかる。強勢位置さえ正確ならば、母音や子音の発音がでたらめであっても通じる≠ニさえいえるほどだ。この強勢位置の判別ができないことが、英語がききとれない原因であることがおおい。そのような理由で、発音記号を付加しないばあいでも、強勢記号“´”は、かならず指示することにした。
C 主みだしの直後に記載した億単位の数字は、現在を基準として何年まえであるかをしめしている。さらに、その直後の数字は、地球が46億年まえに形成されたという学説にもとづき、その46億年前を元旦、現在をその翌年の元旦としたときに、何月何日にあたるかの換算値をしめした。
D 記号“|”と記号“|”内の半角文字記号“/”は、「または」を意味する。つまり、|A/B/C|は、「A、B、Cのどれでもよい」という意味。
E 記号“(”と記号“)”内の単語や文章は“省略可"をしめすばあいがある。
F 記号“⇒”は“⇒で指定された項目をみよ”という意味。このとき、記号“<”と記号“>”でかこまれた項目は、他欄で主みだしとしてあげてある項目をしめす。
G 記号“¨”は、知っていると役にたつこともある語学的な注意。
H 記号“語源”にはじまる語源についての解説項目では、
(1) 記号“E”は、語源欄であげた単語に関連する現代の英単語をしめす。
(2) 半角記号“「”と半角記号“」”でかこまれている単語は、その記号の直前にある単語の意味をあらわす英単語や日本語。
(3) 記号“←”は、“A←B”とあれば、Bが変化してAになったという意味。ただし、言語学では“←”ではなく、“<”という記号をよくつかう。
I 日本語表記の基本である漢字は中国に発祥し、朝鮮半島をとおして日本につたえられ、それによってわれわれは文明と文化をまなんだ。そのように中国と朝鮮がわれわれ日本人の師であることもわすれて、わが祖国日本が朝鮮半島と中国大陸を侵略したことを反省している日ニッ本ポン人はすくない。しかしわたしは、忘恩のアホではないから、この日本の野蛮な侵略行為をつねにわすれないように、引用文および固有名詞などをのぞいて、日本人の恣意的考案である漢字の訓よみは使用しない。しかし、これを読者に強制する気はまったくない。
J ロシア文字とギリシア文字は、換字表によってラテン文字に翻字して記す。さらに、学名を掲示するとき以外では、古典ギリシア語とラテン語の2言語の長母音は慣用にしたがい、母音上にヨコ線をつけてしめした。つまり[G]は、発音記号を使用すれば[o:]になる。また、古典ギリシア語およびラテン語は、つづりをローマ字式によめばよいので、発音記号をつけない。
ギリシア文字のローマ文字への換字表
ロシア文字(キリル文字)のローマ文字への換字表
K 英語ではまれな発音記号についての解説
(1) 高低語勢記号について
この事典で、中国語北京官話および古典ギリシア語への発音記号の母音上につけられた記号は、語勢の高低をあらわす記号で強弱語勢記号ではない。そこで各国語別に説明するが、“中国語”という表記は日本語であって、中国語では“中国語”を“漢語[xàn'jÓ]”といい、さらに標準日本語に相当する標準中国語は“北京官話[bÏid¾Dn kuInxuá]”ということは知っておいてよいことだ。
1 日ニッ本ポン語。説明を明確にするため、あえてここでは訓よみを採用し、その意味の相違をしめす。「箸」は[ハシ]、「橋」は[ハシ]と記す。すなわちカタカナの位置にしたがって発音の際に音程を適当に上下すれば、それが関東地方の標準日本語発音になる。
2 ラテン語。語末から3音節以上にさかのぼらない。短音節をB、長音節をL、長短任意の音節をX、任意の語末音節をF、高語勢になる音節を で着色すれば、2音節単語のときXF。さらに、3音節以上の単語のばあいは、…XLF、または …XBF1(F1が子音を1個だけもつとき)、または …XBF2(F2が子音を2個以上もつとき)、以上の3例になる。例外はこの事典に影響がないので省略する。
3 北京官話。本書ではWade式表記法をとらない。しかし、本書で採用した中国語への発音記号は、煩瑣をさけるためにもちいた記号であって、本来の意味での発音記号ではない。また4種の高低語勢の表記は、高語勢の陰平は「Z」、低高結合語勢の陽平は「u」、低語勢の上声は「y」、高低結合語勢の去声は「v」を相当母音上に付加する。この例にしたがえば、学校≠正確に音写すると[8yé8ìao]だが、本書では[¸jé¸ìao]と表記する。
4 古典ギリシア語:「u」は高語勢、「v」は低語勢、「w」は高低結合語勢。
さて以上によると、大変こまることに、3の中国語北京官話と4の古典ギリシア語は表記法が逆になる。[ハシ]は、北京官話式では[hθÐ]、または[hà¸Ð]。古典ギリシア語式では[há¸ì]と記載し、[ハシ]は、北京官話式では[hθD]または[há¸D]、古典ギリシア語式では[hà¸í]とそれぞれ[a]につけられる語勢記号を逆に記載することになる!。 だがまさか中国語北京官話と古典ギリシア語を混同するような超天才はいないだろうから慣用にしたがっておく。
(2) その他の発音記号について
[?]:フランス語の母音上で使用する。その母音を発音するとき、いきを鼻腔内にだして、かぜをひいたときのようなおとにかえる記号。
[U]:ドイツ語で使用する。くちびるをおもいっきりつきだして発音された[u]。
[ø]:ドイツ語で使用する。くちびるをおもいっきりつきだして発音された[e]。
[Y]:ドイツ語とフランス語で使用する。くちびるをおもいっきりつきだして、日ニッ本ポン語の「ユ」を発音する。
[ j ]:ロシア語の子音軟音化をしめす。日ニッ本ポン語の拗音節の子音の発音。ただしこの記号はこの辞典で採用した記号で、発音記号ではない。
[x]:ドイツ語で使用する咽喉気音。日ニッ本ポン語では、「アッハッハ」と爆笑したときの、最後の「ハ」のおとにちかい。
[ç]:ドイツ語で使用する咽喉気音。日ニッ本ポン語では、「イッヒッヒ」と爆笑したときの、最後の「ヒ」のおとにちかい。
[R]:口蓋垂振音。日ニッ本ポン語にはない。ドイツ語とフランス語で使用する。ノドチンコをふるわせて「ガラガラ」とうがいするおとにちかい。本事典でだけ採用した斜字体[R]は、ほとんどノドチンコが振動しない[R]で、英語[§]とほとんどちがわないおとになる。
[h]:ギリシア文字のラテン文字翻字中の[h]は、普通の[h]音よりもつよく発音された咽喉気音をあらわす。つまり、古典ギリシア語のtheは、セキこんで発音された「テ」にちかいおと。θのよみ[thwJta]を、ラテン文字に転写するとき、thetaまたはthJtaと表記するのは、この理由だ。
[3]:フランス語で使用する。幼児は、よくネコをニャンコ≠ニいうが、このニャ≠ニナ≠フ中間のおと。
[']:子音とそのつぎの位置にくる母音をつなげない記号。日本語を例にとると、[¸i┌nin]は死人[シニン]、[¸i┌n'in]は心因[シンイン]。ただしこれは、本書で採用した記号で、発音記号ではない*1。
*1発音記号中にもちいられている記号┌ ≠ヘ、この記号以降の音程をあげて発音することをしめす記号で、日本語音声学ではよくもちいられる。たとえば、Kの4項の[ハシ]は、北京官話式では[hθD]≠ニいう項を、この記号をもちいて表現すれば、[ハシ]は、北京官話式では[ha┌¸i]≠ニかける。