語源Meso←古典ギリシア語mésos｢middle｣←印欧祖語medhyos｢middle｣Emédia, médiate(◆強勢位置), Emediéval, Emédium(◆強勢位置・◆発音), Emiddleなど「中間」の意味の科学用語に汎用される。語源zoic⇒＜古生代[_コ^セ_イダイ]＞語源era⇒＜代[^ダ_イ]＞

1840年(仁孝天皇／徳川家慶／天保11年)Phílipsが、PalaeozóicとCaenozóicの中間の時代としてつぎのように提唱した。〝Correspónding terms (as Palaeozóic, Mesozóic, Caenozóic etc.) may be made, nor will these nécessarily(◆強勢位置) requíre change upón évery discóvery.〟　日_ニッ本^ポン語へは、明治16年(1883年)に富士谷孝雄が「中生紀」と訳して導入したのがはじまりらしい。

化石中生代の化石といえば、恐龍・ammonite・Inoceramus・Trigoniaがあげられるが、なんといっても、中生代は〝恐龍(dínosaur)の時代〟として知られている。さて、恐龍のすべての種類が巨大なのではなく、ハト大の種類もいた。さらに‘恐龍とはなんぞや’という問題にたいして、正確に定義した学説は現在もないから、dínosaurが俗称であって、学術用語にはなりえないということは、一般的になりつつある。だから恐龍の分類なんて、さらにむづかしい問題だ。現在一般的な分類法は骨盤の形態に注目して、現生鳥類に類似した骨盤をもつ鳥盤目と、現生爬虫類に類似した骨盤をもつ龍盤目に、2大分類する方法だ。また歯列や顎骨の形態から、鳥盤目はすべてが草食爬虫類であり、龍盤目は草食爬虫類と肉食爬虫類であることが推定できるという点は重要であるから記憶しておいてよい。詳細は、著名な古生物学者の濱田隆士博士が監修し、ボクが執筆主幹として天才的活躍をした世界文化社発行の『恐龍と絶滅した生き物たち』を参照（⇒古生物学名辞事典＜Homo tensaii YASUOI＞）。

語源Trias｛ラテン語tri｢three｣←ラテン語trJs、または古典ギリシア語tria｢three｣Etreble, Etréfoil, Etríad, Etríangle(◆強勢位置), Etribe, Etrícycleなど「三」の意味を付加する非常に重要な接頭辞｝＋｛sic｢形容詞語尾｣｝語源périod⇒＜紀[^キ]＞

カナダ極北部海成層やアルプス・ヒマラヤにみられるアルプス相の海成層が、国際対比につかわれる模式地。しかし名称の由来は、この時代の典型的地層が、上層から下層へ順に、それぞれドイツ語で、Keuper^*1・Muschelkalk^*2・Buntsandstein^*3と3層にわけてよばれたために、von Alberti[f¤n alb²Rti]が1834年(仁孝天皇／徳川家齊／天保５年)に、ラテン語をかりてTriasと命名した。このドイツ語から日_ニッ本^ポン語へ、原田豊吉^*4が、明治21年(1888年)に「三畳紀」と訳した。

　三畳紀には、大陸全部がまとまって|pangáea/pangéa|[pænd¾í:§]^*5とよばれ、現代の北米・欧州・アジア・南米・アフリカ・インド・南極・豪州のすべてをふくむ広大な超大陸を形成した。海洋地域からかなりはなれている亜細亜大陸内陸地域には、海洋域で形成された水蒸気がうまく補給されないため、非常に乾燥したGobi沙漠が形成された（⇒古生物学名辞事典＜dinosaur＞）。この現代の例からも|pangáea/pangéa|の内部に広大な沙漠があったことは容易に想像できよう。そのような乾燥気候をきらって、陸地づたいに全世界に放散した生命が、さらにその土地の気候風土にあわせて進化し、多様な生命世界が出現したことだろう。特筆すべきは、この広大な沙漠が、乾燥地域の移動に適すようなからだの構造をもった生命の出現をうながした点だ。現代人は、自分の体力がおよばない環境条件に接したとき、その環境に自身を適応させないで、そのかわり人類に適合するように自然を改造してしまった。そして、そのつけが環境破壊というかたちで、いま人類をおそう。

化石中生代は、恐龍の時代だとはいっても、三畳紀の恐龍をスラスラいえる恐龍オタクは、あまりいないだろう。はじめて上陸した生命は、試作品の域をでないものであったから、どうみてもダサい格好なので、人気がでないのだろう。さてこの時代には、のちに陸上の支配者となる恐龍の祖先である槽歯類が爬虫類から進化した。またその進化と平行して、再度水中にもどった爬虫類は、魚龍とよばれ、この流線型のIchthyosaurusは、つぎのジュラ紀に大繁栄した。少々これをいうにはためらいもあるが、あえて、魚龍は“およぐ恐龍”といってもよいだろう。

ジュラ紀の地層は、スイス連邦のフランス語常用地区と、フランス共和国の自然国境をなす山脈によく発達する。そのため、その山脈のフランス語名Jurassique[¾YRasík]をかりて、Brongniart^*1が、1829年^*2に命名した。これを明治21年(1888年)に原田豊吉が「侏羅」と音訳し、さらにそれが中国語に逆輸入され、侏羅紀[t¸Flíd¾ì]とよばれている。この時代に、|pangáea/pangéa|(⇒＜三畳紀の脚注＞)が東西に分裂をはじめ、そこが大西洋になった。また、大陸部には、ジュラ紀よりふるい地層が存在するのに反し、海洋底には、ジュラ紀よりもふるい地層が発見されていないという事実は、わすれてはいけない大変な事実だ。この事実を合理的に説明するために、ジュラ紀よりふるい海洋底は、mantle[m¢ntl]中に沈入(subduction[s§bd¶k¸§n])したと解釈する説、すなわちplate tectonics [pleit tekt¦niks](⇒古生物学名辞事典＜Graptolitida＞)が必要となったことはおぼえていてよいことだ。他人の嘲笑や侮辱をものともせず、Wegener [vé:g§n§R]が提出した大陸|漂移/移動|説が荒唐無稽な珍説ではないことを、やっと現代になって、科学者が是認したのだ。

化石ジュラ紀の恐龍をもしあげたら何ページ必要だろうか見当がつかないから、そんな無謀なことはしない。だが、恐龍ではないが、以前より評価がさがったとはいっても、やはりどうしてもあげておかなければならないジュラ紀の化石といえば、Archaeopteryx(始祖鳥)だ！。

この語源は、terra crJta｢ふるいでこしわけた土砂｣に由来する。ラテン語crJta^*1｢|白亜/石灰岩|｣は、CrJta島という島名に由来するという説はあやまりだ。その理由は、〝CrJta島土〟はterra CrJticaまたはterra CrJtJnsisと記すのだから、形容詞形のcrJticaまたはcrJtJnsisとなっていなければならないからだ。CrJta島と混同してしまった原因は、ギリシア神話でなだかいCrJta島北部にあるMílos島の北東にKímolos島という小島があり、そこで産する白亜が非常に有名だったからだろう。

　「白亜質の」の意味の普通名詞としては17世紀からつかわれているが、地質時代名および系統名にそれを準用したのは、ÉnglandやFrance[フランス語fRã®s]にひろがる白亜層を、d'Omalius d'Halloy^*2が、1822(仁孝天皇・徳川家斉・文政5)年にcrétacé[kRetasé]と命名したことによる。

　日_ニッ本^ポン語への訳者は不明だが、明治16年(1883年)の富士谷孝雄著『地学要略』には白堊紀と記され、明治17年(1894年)小藤文次郎は「白堊系」をつかった。この日_ニッ本^ポン語が中国語北京官話に逆輸入され、中国でも白堊紀[páijàd¾ì]とよばれている。

化石もし「この時代の化石をあげてみよ」といわれたら、ボクは、むねをはってNipponitesをあげる。TyrannosaurusやTriceratopsなど、この時代の恐龍とくらべると、これは大変ちいさく地味だが、紅簾石片岩^*3とならんで、とにかく、日本特産の地学資料としては、ピカイチだからだ^*1。

　さて中生代白亜紀の日本産の爬虫類として、よく知られているのが、フタバスズキリュウだ。この海棲爬虫類は、鈴木直[^タ_ダシ] 氏が平[^タ_イラ]工業高校2年生であったとき、祖母のいえのちかくをながれる大久(おおひさ)川河岸の露岩で発見したものだ。この化石の例だけでなく、学術上重要な日_ニッ本^ポンの化石は、こどもが発見することがおおい。だからキミたちも将来学名に自分の姓がつく化石を発見できる可能性はおおいにあるんだ！。

　もしこの化石が河岸でどのような状態で露出していたかをみたけりゃ、いわき市湯本にある石炭化石館にいけばよい。さまざまな化石の展示を目前にして、呆然とし、きっと「ああ、本当にきてよかった」と感動するだろう。

　さらにこの時代の生物として、恐龍ほどハデではないが、わすれてはならない注目すべき生物は、重力の束縛をふりきって、おおぞらを飛翔した翼龍たちだ。実は、いまのべた石炭化石館の収蔵庫には、この翼龍を代表するPteranodonが収蔵されていて、展示をまっているのだ。1994年5月にここを見学をした際、東京大学名誉教授・濱田先生以下20名は、いわき市教育委員会の重鎮・橋本先生の御尽力でこの収蔵庫をみせていただいた。足下には、ふみばもないほどクヂラやクビナガ龍の化石が、そして、頭上には、Pteranodonが！･･･　もう、全員がことばをうしなって、くちをアングリした貴重な体験だった。

　いわき市は、福島県全体(1,3781km²)の約9%をしめる面積(1229km²)をもつ日本で最大の市だ^*2。また東北地方ではあるが、温暖で、ほとんどゆきがふらない。ひらがな地名が正式市名となった最初の市としても有名だ。JR平(たいら)駅周辺の平という市街名は、おそらく市内が平坦なことから命名されたとおもわれるが、この由緒ある駅名も、〝国体開催をひかえて〟というわけのわからない理由で、平成6年11月〝JRいわき〟に改名された。

　いわき市内には、古生代、中生代、新生代、すべての地層があるだけでなく、化石を含有するのだからすごい。またさらに、阿武隈地方という〝偏見〟で考察すれば、先カンブリア時代とおもわれる変成岩類まであるという！。

　古生代の地層では、後期デヴォン紀層に腕足類と植物化石、石炭紀層に腕足類、三葉虫、二畳紀層に石灰岩層と頁岩層があり、後者は高倉山に分布する。特にこの高倉山は東北の三葉虫の発見地として著名で、いわき市教育委員会の管理区域になっている。

　新生代の地層では、日本の財政をささえた石炭を産出する古第三紀層がある。この地層に属す浅貝(あさがい)動物群からは、かいがあきるほど多産するだけでなく、瑪瑙化したTurritellaさえ容易に採集できる。さらに、ペンギン様鳥類も発見され、注目されている。また、中新世の地層からは、大量のクヂラ化石や象化石などが発見されている。

　また、いわき市アンモナイトセンターは、世界に類をみないアンモナイトの産状が見学できる貴重な施設だ。常磐線大久駅より徒歩で3時間以上かかり、また、あさ2本、ひる1本、夕がた2本しかない循環バスも、残念なことにちかい将来廃止となるので、自家用車でいくしかないだろう。

^*4万延1(1860)年～明治27(1894)年。結核のため早世したが、日本古生物学の泰斗である横山又次郎(⇒新生代第三紀暁新世)と同年にうまれている。1874年ドイツに留学し、1883年に帰国後、東京大学に奉職。Fossa magna説に反対した。

^*1Théodore Adolphe Brongniart[bRÞ3áR]。1801(光格天皇・徳川家斉・享和1)年～1876(三条実美太政大臣・明治9)年。フランス共和国の古生物学者。主として古生代の植物化石を研究し、封印木の内部構造をあきらかにした。

^*3日本以外でもとれるが、日本特産といえる非常に華麗な鮮紅色の変成岩。明治20年（1887年）に小藤文次郎が、世界ではじめてこの岩石を報告した。小藤の採集地点は、埼玉県秩父市の名勝長瀞の〝ラインくだり〟乗船場がある親鼻橋橋脚付近の露頭で、以後世界的に有名になった。しかし、世界でもめづらしいこの紅簾石片岩の大露頭も、むかしは橋梁脚の支台としてつかわれていた。現在、その橋脚は移動され、この付近の紅簾石片岩は特別天然記念物として地域指定され、採集はできない。また、この露頭は、増水期に形成された巨大な甌穴[_オ^ウケツ]があり、人間ひとりがかくれることができるぐらい充分おおきい。

^*1この化石がみたければ、文京区本郷の東京大学総合資料館見学にいこう。ここにはNipponitesだけではなく、人文科学と自然科学の両分野にまたがる興味ぶかい種々の展示品がある。それがなんと入場料無料というのだからうれしい。

^*1この白亜紀層からは、いまも化石が発見されている。したがって、いまのところ歯牙など部分的な発見しかされていないいわき市には、福井県につづく恐龍の完全標本の発見さえ期待されている。発見者はキミかも知れないよ！。