流星群と彗星Q&A −その2
>|何らかの理由で軌道を変えて、太陽に落ち込むように接近する軌道を取るようになった
>
> どういう理由なのか、具体的には分かっていないんでしょうか?
> 太陽系の外側にいた彗星が、どうして太陽の近くまで落ち込んできてしまうのか。
たまたま、2天体が衝突したり接近して、公転の速度や方向が変わってしま うことがごく稀にあって、それが太陽の付近まで落ち込んでしまうような楕円 軌道を取るようになったものが、彗星として見えるのだ、と考えられています。
> ところで、太陽系の内側では氷やドライアイスは、太陽の「放射熱」で蒸発して
>しまって、岩石には含まれないのですか?
>
> それらの岩石が集まってできた惑星には、どうやって水分が含まれたのでしょうか?
地球の材料に最も近いと考えられている、炭素質コンドライトという種類の
隕石には、岩石中に、含水鉱物のかたちで大量の水が含まれています。その水
はかなり多く、重量で数%から20%近い水を含む隕石まであります。
こういう隕石というか、微惑星が集積するときに、衝突の衝撃や高熱により、
水や、その他のガス成分が蒸発し、初期惑星に濃密な大気の層をつくる、と考
えられているのです。
この説明でわかりますでしょうか。
>(にしても、太陽熱で蒸発した水蒸気は一体宇宙のどこでどうしてるの?(^^;))
これは、初期太陽系の話ですか?、それとも、現在の地表の話ですか??
現在の地表の話であれば、大気にも重さ(質量)があって重力が働くからだ、 ということなんですが。
>|あの砂つぶを手に入れることができれば、論争に終止符を打てるのに。
>
> ロケットで回収……って、できないんだろうかなぁ、やっぱ(^^;)
秒速30kmとか、70kmというのは、べらぼうな速度です。ライフルの弾の初速
が秒速1km以下ですから。うっかり当たると大爆発ですね。
でも、距離にして数百万kmという範囲に散らばっていますから、それほど頻
繁に当たるものでもないようですけれど。
> それから、太陽系の内側でも太陽から離れた所は相当低温なんじゃないかと思うん
>ですが、それでも氷などは蒸発して鉱物だけが集合して惑星ができるんですか?
ごめんなさい、太陽系の内側、外側というのは、おおよそ木星軌道(あるい は小惑星帯)より内側か、外側か、ということです。
木星より外側の惑星の衛星では、非常に氷の多いものがありますね。また、 冥王星なども氷惑星だろうと考えられています。おっしゃるとおりです。
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> 「含水鉱物」というものがあるんですか。フムフム
> H2O の形で鉱物の中に含まれているけれども、鉱物の「殻」に覆われているため
>蒸発しないということでしょうか?
−OH(水酸基)のかたちで、陰イオンをつくっていると考えていい場合と、
水分子がそのまま含まれる場合があります。
鉱物の化学組成というのは、陽イオンと陰イオンの電荷がつり合うように決
まっているのです。かんらん石(Mg2SiO4)であれば、+が1個のSi4+,2個の
Mg2+で合計+8、−はO2-が4個で合計−8、という具合に。
鉱物の中での水は、多くの場合、OH-のイオンのかたちで、酸素のマイナスの
電荷を置き換えていると考えていいでしょう。
含水鉱物というのは珍しいものではなくて、花崗岩(みかげ石)の中に見ら れる雲母や、角閃石といった鉱物も、その仲間です。
> それで、「地球の水の起源が彗星にもたらされた」という説は、初期太陽系で地球
>に衝突した彗星によって水が運ばれてきた、という意味とは違うのでしょうか。
そう考えて結構です。
彗星説の研究者は、主に地球史の最初の約10億年の間に降ってきた、という
ことを言っています。
最近たくさん降ってきて、地球の水が増え続けている、という研究者はいな
いようですね。白亜紀以降、海面は低下する傾向にあるという地質学の記録と
も一致しません。
>|>(にしても、太陽熱で蒸発した水蒸気は一体宇宙のどこでどうしてるの?(^^;))
>|
>|これは、初期太陽系の話ですか?、それとも、現在の地表の話ですか??
>
> 前者のほうですね。(^^;)
> 水蒸気の気体として宇宙空間に漂ったままでいるのかなぁ……なんて?
宇宙空間において、気体(水蒸気)の状態では、水分子はかなり不安定です。 たぶん太陽の紫外線で光分解を起こし、水素と酸素に分解され、飛んでいって しまいそうです。
金星には現在、地表はもちろん大気中にもほとんど水がありませんが、これ は大気上層で上記の光分解が起こり、水素は宇宙へ逃げ出し、酸素は地表や硫 黄などの酸化に消費されてしまった結果だと考えられています。
地球の表面に大量の水があるというのも、液体の水として海をつくったこと で、大気上層での光分解による水の消費を押さえることができた、ということ が重要なのかもしれません。
> ロケットにネットを付けて……とかは出来ないだろうと思ってましたが、速さの
>問題もあるんですね。
> で、「秒速30kmとか、70km」というのは、漂っている砂つぶの速度ですか?
そうです。砂つぶも公転しているわけですから。逆向きであれば、2倍です。 同じ方向であれば、かなり速度差が小さくなりますが、それでもなかなか0と いうわけにはいかないでしょうね。
> 地球軌道の近くにある物体なら、このくらいの速度で飛んでいるということでし
>ょうか?<「ケプラーの法則」?
そういうことです。ちょっと計算してみましょう。
地球の公転軌道が1周で約10億kmですから、1日で約300万km、1時間で12万
km、1分で2000km、1秒でざっと33kmと、こういう具合になります。
> ロケットの進路を砂つぶの進行方向に近づけて、お互いの相対速度を小さくして
>“回収”なんてことはできないでしょうかね、やっぱ(^_^;)
>(砂つぶの密度が薄いということは別にしたとして。)
できるといいんですけどね。でも、速度がばらついていると、秒速1kmの差で も、ライフルの弾より速いわけですから・・・。
僕の記憶ですけれど、ハレー彗星が接近したときに、欧州の探査機ジオット がハレー彗星の核に向かって接近したのですが、およそ500万kmのところ で連絡が途絶えました。このとき、ごく小さな砂つぶが命中したために、アン テナの向きが狂ったのだという発表でしたが。
掃除機みたいなもので吸い取ることができないかな、なんてあほなことも考 えますけれど、難しそうですね。
流星が光るときに、その光を分光計にかけて、特定の元素が出す波長の光を 調べて、元素構成や存在比を調べるようなことは広く行われているようです。
最後に、参考になりそうな本を2つ挙げておきます。
・理科年表読本・太陽系ガイドブック 寺門 和夫著 丸善 1997 \2000
・隕石 宇宙からの贈りもの 島 正子著 東京化学同人 科学のとびら29 1998 \1600
99/04/16 萩谷 宏(hiroshi.hagiya@nifty.ne.jp)
*niftyserve ftvw mes19 #3382 #3460 の萩谷の発言より引用。