かつて日本を代表する鉱山であった、銅、亜鉛を主体とする足尾、別子、日立の各鉱山は、昭和50年代までにすべて閉山し、小坂や花岡といった有名な黒鉱鉱山も同じ運命をたどった。銅の場合は、鉱量枯渇という場合もあるが、品位は低いが露天掘りでコストが安く低価格の外国産の鉱石や製品が安く入ってくるために、競争力が低下したことが大きい。加えて近年の円高傾向は、その勢いをいっそう強めることになった。現在、非鉄金属の鉱山としては、亜鉛・鉛を主体とする岐阜の神岡鉱山が採掘を続けている。
日本の鉱床は、地震・火山に見られるように、日本のおかれているプレート収束域の非常に活動的な条件を反映して、複雑な地質の中にあることが多い。これは、鉱脈鉱床と直接関係がある温泉が、各地で湧き出していることからもわかるように、非常に鉱床の発達はよく、品位(鉱石の中の目的とする金属の含有率)も高いものが多いが、反面、地質構造が複雑で掘り出すのにコストがかかる。露天掘りに比べて坑道掘りは数倍のコストがかかるので、大陸の大規模な露天掘り鉱床がある場合には、コストの面で不利になる。
日本の産業構造が、高度成長時代から原材料輸入−製品輸出型の経済体制に完全に移行したことも、国内鉱業衰退の大きな要因かも知れない。また、1960年代からのエネルギー革命は、国内の炭田の衰亡の原因となった。
日本で産出する金属資源で、現在国際的に通用するのは、ほとんど唯一、金だけかもしれない。これは品位の高い(含有率の高い)鉱石がとれることで競争力を保っているからであろう。最近発見された鹿児島の菱刈鉱床は、やはり熱水性の鉱脈鉱床だが、脈の周囲の金の含有率の高さで有名である。また、特殊な鉱床としては、恐山の地表の温泉沈澱物から高濃度の金が検出されている。
鉄筋コンクリートは、鉄筋のまわりに、石灰石からつくるセメントと、骨材としての砂を混ぜて固めたものである。工業用の鉄の材料はほとんど先カンブリア代の、シアノバクテリアのはたらきで間接的につくられたと考えられるし、石灰岩はほとんどが過去の礁成生物の遺骸の集まったものである。近代都市をコンクリート・ジャングルと呼ぶことがはやったこともあるが、化石燃料の消費を含めて、まさに都市は過去の生物の遺産に支えられているのである。
太陽放射のエネルギーが、水や生物という媒体を通じて、地表を改変していく。過去45億年の地球表層の歴史は、このような物質循環が支配してきたと言ってもいいだろう。これに地球内部エネルギーの放出過程としての固体地球テクトニクス(プレート運動や火山活動)が加わり、また生物活動の蓄積があって、現在の酸素の多い大気がつくられ、酸化的な海水や地表条件ができ、オゾン層がつくられ、生物の陸上進出を可能にして、今日の生物界や人類の繁栄がある。
地球表層における、この非常に複雑で微妙な物質循環のシステムは、地球が火星や金星のような他の地球型惑星とまったく異なる、最大の特徴であると言えるかも知れない。