武蔵工大・工学部 土木工学科、建築学科 専門基礎科目
10 河川と海洋 …地球の水環境を支えるもの
われわれをとりまく世界(第3回)
2001.6.19 地学#10 萩谷 宏
キーワード:水の循環、河川の三作用、溶存物質、物質循環
ミネラルウォーター2種類を用意。今日の講義の要点は、ミネラルウォーターの銘柄による成分の違いが何によるのか、秋のおいしいサンマが安く食べられるのはどうしてか、それがわかるようになることにある。ただし、ミネラルウォーターは水道水と、塩素殺菌の点をのぞけばほとんど同じものだと強調。
陸と海の違い
地殻の厚み、材質、アイソスタシー
海水の総量 地球の表面積5×108km2 海洋はその70%、平均水深3800m
上部マントルと大陸地殻、海洋地殻、海洋、大気を描いた模式断面の図を板書。それぞれに密度を記入。「地球は密度成層」であることを説明。海の底が抜けてしまわないか、水がしみこむとはどういうことか、と解説。リソスフェアとアセノスフェアの補足説明。30-60kmの厚みの花崗岩でできた大陸地殻があることで、マントルに浮いた状態の(…アイソスタシー)地殻が海面に顔を出し、陸地ができる。陸地があることが特殊なのだという説明。花崗岩がどうやってできるかという問題を含水鉱物で簡単に説明、前週の沈み込み帯マグマ生成プロセスとの関連。
河川
水の循環 蒸発、降水、地表の水が海へ戻るまでの過程…河川
蒸発量、降水量、海洋の塩分濃度
水の動きに伴う物質の動き
・水に溶ける物質 …ミネラルウォーターの成分表示 ミネラルとは?
・溶存物質の移動 陸上生態系を支えるもの。
・砕屑粒子の移動 浸食と運搬、堆積 …低地の埋め立て、陸域の拡大
NHKジュニアスペシャル#33「河川」のVTR1で、アマゾン川を例にして、水の循環と、溶存物質の移動の解説。スタジオ部分の実験で、ミネラルウォーターに含まれる溶存成分の銘柄(採取地)による比較、海水との比較。
途中のVTRで地下水、富士山麓の地質と柿田川湧水の紹介
VTR2で、黄河を例にして、表土の浸食、砕屑物の供給と平野の拡大など。黄河の砕屑物流量の多さ→参考図表
河川の役割の整理。岩石の風化、浸食と運搬、堆積のプロセスと平行して、溶存物質と砕屑粒子の移動。地表の平坦化。
(主に土木)河川管理の難しさ。天井川の例、上流の砂防ダムが河口域の海岸侵食を招いている例。ダムの土砂堆積による容量低下、計画年数をはるかに下回るダム寿命など。
海洋
・海洋での物質移動
・生態系のしくみ …植物プランクトンの生産量がすべての基本
秋のおいしいサンマが安く食べられるのはなぜか?
深層からの湧昇流のある場所がよい漁場となる。北海、ペルー沖、北太平洋…
NHKジュニアスペシャル#34「めぐる生命の輪」VTR2,3を使用。生態系のなりたち、植物プランクトン生産と、栄養塩類。窒素やリンなどの循環システム。湧昇流と漁業、深層水循環と漁場。イワシ、サンマなど、親潮系の水産物の豊富さの原因。黒潮の由来。
海岸
・陸と海の出会う場所 さまざまな景観
・地形の形成要因 …浸食と堆積
・砂浜が多い理由 砂の水流に対する移動特性…動きやすさ
VTR:
・NHKジュニアスペシャル #33「河川」
・同上 #34「めぐる生命の輪」
参考書:
・一般地質学I,II,III ホームズ著、河野他訳 東大出版会
・砂の科学 シーバー著 東京化学同人
・改訂 海の科学−海洋学入門
・大気・河川と海洋の化学 ホランド著 山形訳 産業図書
・水の科学 北野 康著 NHKブックス
講義データ
http://www.chemie.org/geo/
H.Hagiya (c)2001