2001年度地学

武蔵工大・工学部 建築学科 専門基礎科目 地学(2)


25 大地のめぐみ  …資源の利用と環境保全

 地球環境の保全を考える(第1回)

2001.12.18 地学#25 萩谷 宏


説明図集  …高速環境向きはこちら(図が大きい)…準備中

日立鉱山の歴史

*大正初期の日立鉱山の様子

採鉱を行っていた、日立市本山(宮田町)の日立鉱山の本体。

(左上)木製のやぐらは、エレベーター用。ここから坑内に入る。

(右下)鉱石はトロッコで運び出され、選鉱場で処理されたのち、製錬所に運ばれる。

日立鉱山拡張期の、大雄院製錬所と煙突の様子。

初期に使われた八角煙突、政府の調査会の指示でつくったが役に立たなかった阿房(阿呆)煙突、神峰山に延びる長さ2kmの百足煙突が同時に使われて、二酸化硫黄の拡散をはかっている。周囲の山々がはげ山になっているところに注意。


大正3年に建設中の大煙突の様子。高さ155mで、当時世界一の高さになるものだった。煙突の周囲にシュロ縄で木材を縛って組み上げた木製の足場をつくり、人力で材料を頂部まで運んで建設した。できかけの煙突の周囲をぐるぐると螺旋状に回りながら作業員がのぼり、セメントや砂を運んだ。高度が高くなるごとに作業員の賃金を上げる必要があり、また、縁起を担いだり、いやがって出勤しない作業員が増えて困ったという。人手がいるため、作業員には近隣の農家の嫁など、女性も多く臨時雇いで加わった。

右上の写真は大煙突の設計者・宮長平作

1951年当時の日本鉱業日立製錬所。大煙突が目立つ。神峰煙道(百足煙道)は、鉄筋を回収するために取り壊されて、残っていない。

1951年当時の日立鉱山。


1984年の大煙突

 講師が高校3年の頃の遠足で。

神峰山方面から見た大煙突。

基部から見上げた大煙突。上部の壁がかなり傷んでいるのがわかる。

大煙突の基部。コンクリート片が散乱しており、それを見ると煙突内側の腐食が目立つ。


大煙突の現状(折損後、写真は1999.5)

日立製錬所と、残った基部だけを使っている大煙突。

神峰山から眺めた製錬所と大煙突

神峰山山頂に取り付けられた、かつての大煙突の風景を記録するレリーフ板。

神峰山観測所の跡に取り付けられた説明板。日本で初めて、気象観測を行うと同時に、近隣に設置した有人観測所を電話網でつなぎ、風向きや煙の挙動応じて排煙量を調節し、被害を抑制した。

周辺の山々は緑に覆われている。煙害対策と同時に、周囲の山の緑化に取り組んだ成果でもある。大島桜、ヤシャブシなどが多く植えられた。


キーワード:消費型文明、成長の限界、硫化鉱物、製錬、煙害、気象観測

現代文明の抱える課題
 人口爆発、食料生産の限界、地下資源の枯渇、水質汚染、大気汚染、酸性雨、森林破壊
 土壌流出、伝染病、オゾン層の破壊、地球温暖化… /政治的な問題、生物学的な問題

鉱業と環境保全
 採鉱・製錬に伴う環境破壊
 水質汚染のしくみ
 煙害 …硫化鉱物の製錬:二酸化硫黄(亜硫酸ガス)の排出

日立鉱山での、明治末〜大正年間の取り組み

 鉱山開発の歴史(中世〜 明治年間に本格的開発1981閉山、日立製作所の起源)
 損害補償
 気象観測所網の設置
 煙害に強い作物・樹木の研究
 土地の買い上げ、離村、移住の進行
 煙突の工夫 高層気象観測
 大煙突の建設
 硫酸製造工場(第二次大戦後)、自溶炉(1972)

煙害対策成功の背景 …立地条件など
 企業の姿勢
 住民運動

*回覧標本
 硫化鉱物:黄銅鉱、黄鉄鉱、方鉛鉱
 石炭:常磐炭田の褐炭〜亜瀝青炭

画像ソース:
 日本鉱業1952、萩谷 宏(c)1984、中村敏弘(c)1999

VTR:
・「知 そして未来へ」(地球大紀行DVD#12特典映像 2002.5発売予定) ・「資源の原動力」(地球大紀行DVD#10特典映像 2002.5発売予定)

参考書:
・日立鉱山史
・大煙突の歴史


一覧へ

index

H.Hagiya (c)2001